反転世界の君へ

「好きだよ」
「嫌い」
「僕は好きだよ」
「私は嫌いよ」
「僕は君のことが好き」
「私は私のことが嫌い」
「何度言っても分かってくれないね」
「一度言われれば分かるわよ」
「僕は君のことが好きなんだ」
「あなただって、あなたのこと嫌いでしょ？」
「あまり考えたことないな。僕は君のことばかりだから」
「自分のことじゃない」
「君は自分のことはよく分かっているのに、僕のことはちっとも分からないね」
「他人のことなんて知りようがないもの。ましてや私を好きだなんて言う人のこと」
「…やっぱり、さっきの言葉はなしで」
「何のこと？」
「君は君のことをよく分かっているって」
「そうよ。よく分かっているわ」
「全然分かってないよ。自分の魅力をひとつも分かってない」
「…気味の悪いこと言わないでよ。あなたには何が見えてるの？」
「何でも見えているよ？」
「何にも見えていないわよ」
「じゃあ僕に少しだけ時間をくれるかな」
「少しと言わずいくらでも。あなたの勘違いがなくなるなら」
「きっと君は驚くよ。君自身の魅力に気付いたとき、きっと世界はひっくり返る」

反転世界の君へ