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大乗仏教 如来蔵思想・唯識思想

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#阿頼耶識

【大乗仏教】唯識派 識の変化

【大乗仏教】唯識派 識の変化

唯識派の思想において、人間的実体(主観的存在)と想定されるものは、生じた瞬間に滅する「識」が次々に継起して形成する識の流れです。そして客観的存在と考えられるものも、「識」の内部にある「表象」に過ぎません。識が瞬間ごとに表象を持つものとして発生することが「識の変化」です。実際にあるのは「識の変化」であって、それを人は主観的存在(自己)あるいは客観的存在と想定しているに過ぎないということですね。「識の

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【大乗仏教】唯識派 四分説(三分説)

【大乗仏教】唯識派 四分説(三分説)

唯識思想における「識」の分類は、前回の記事で紹介した「識の三層」だけでなく、「識の四分説(三分説)」というものも存在します。

唯識派の学説を認識論的に考える際には、「識の三層」よりも「識の四分説・三分説」を用いた方が分かりやすいと思います。

自証分が見分と相分に分かれているため、自証分は「識の三層」の中で末那識単独ではなく阿頼耶識を加える方が妥当ではないかと筆者は考えます。今後、唯識思想を認識

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【大乗仏教】唯識派 三性説⑤

【大乗仏教】唯識派 三性説⑤

弥勒(マイトレーヤ)の三性説の説明が長くなってしまいましたが、今回は無著(アサンガ)の著書である『摂大乗論』における三性説を見ていきます。

・依他起性(雑染と清浄の二分)
阿頼耶識を種子とし、虚妄分別によって集められた表象(相分)です。阿頼耶識という種子から生じた十一種の表象が説かれますが、これらは阿頼耶識の種子から生じた六識の内部にある六根・六境・器世間といった相分と同義と考えられます。

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【大乗仏教】後期中観派の中核2

【大乗仏教】後期中観派の中核2

以下の前回の記事の続きになります。

ここで、形象とは唯識思想における主・客(主観・客観)を指します。即ち、主観=末那識+六識、客観=六識内の表象です。そして、照明と光り輝く心は同じものを示しており、阿頼耶識の中心(主客を照らす箇所)となります。阿頼耶識の表層には種子が保存されており、この種子から形象と次刹那の阿頼耶識の表層自体が生起します。

第一の段階では有部や経量部など、アビダルマ哲学の十八

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【大乗仏教】後期中観派の中核3

【大乗仏教】後期中観派の中核3

下の記事の続きになります。

後期中観派の中で、より中観派的な立ち位置のシャーンタラクシタらは一般理解の立場において、「外界の存在を否定し、心(内界)のみの存在を肯定」しました。即ち、唯識派の立場を一般理解の立場で認めたものの、最高の真実としてはその心(形象だけでなく照明)の実在性をも否定したのです。真如(真理)とは「心の照明をも超越した絶対的な空」としたのです。

しかし、後期中観派の中で、無形

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識の三層と照明・形象の関係

識の三層と照明・形象の関係

唯識思想において、識(心)の「阿頼耶識・末那識・六識」の三層表記はよく知られていると思いますが、識(心)を「照明や形象」で表す表記はあまり知られていない部分なので、簡単にまとめておきたいと思います。

【阿頼耶識】(照明+形象)○阿頼耶識の深層(照明)
阿頼耶識の中心部であり、如来蔵、空性、光り(浄く)輝く心、真如、仏性、自性清浄心、法身、法性、清浄法界など様々な異名があります。主観と客観、即ち末

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