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え?まじ?なんで?

  子どものころ、大きな虫歯ができた。

  チョコだとかアメだとか、とにかく甘いものが大好きで、いつも何かを口にいれていた。あたしに惨事がおこったのは6歳の誕生日の夜。ケーキをおなかいっぱい食べて眠りについた。ずきんとした痛みで目が覚めた。泣きながら、母親の眠るベットルームに行くと、その穴に正露丸をつめられた。正露丸はくさいし、そんなことをしたって根本的に治るわけない。泣きながら朝をむかえて、クリニックへ行った。歯科医は泣いているあたしに、容赦なく虫歯をガンガンけずって、その日から甘いものを禁止した。

  世のなかには歯ブラシがたくさんある。ヘッドの多さは普通サイズとコンパクトサイズがある。口が小さいから奥歯まで磨けないからと、歯医者さんの勧めで後者を選んだ。最初は歯間ブラシを買った。ギザギザの針金のとこが歯肉にあたって、いたたたたたと血が出てやめた。次はデンタルフロス。昔読んだ、何だったかの少女コミックで同居人か友人かに主人公がそれの使い方を教えてもらっていた。なんだかそれがかっこよくて、東急ハンズで購入した。カッコよさなんかで買うんじゃなかった、と後悔。両方の指にフロスをぐるぐるまきつけて歯と歯の間にいれる。うごかして歯垢をとる。難しい。これが難しい。難しすぎる。痛さのあった歯間ブラシよりましか。それからワンタフトブラシ。これは歯医者さんの受付の横っちょに売っていた。歯ブラシの届かない奥歯とか歯が重なっているところを磨いた。デンタルリンスも使った。普通の歯ブラシよりも効率よく磨きたいからと電動歯ブラシも。振動が強くて何週間は右手が痛かった。ジェットウォッシャーも追加した。

 歯みがきの時間は最低でも10分かけるっていうけど、あたしはちがう。歯ブラシ、デンタルフロス、ワンタフトブラシ、デンタルリンス、電動歯ブラシ、ジェットウォッシャー。占めて30分。


  なのに「あ、むし歯、できてますね」大きく開いたら口のなかをのぞいた歯科医師は言った。え?まじ?なんで?あたし、あんなに歯をみがいたじゃん。あんなに時間をかけたじゃん。道具にだってお金をものすごくかけたじゃんか。ああ、いやだ。歯を磨くのはもうやめよう。「次の予約してくださいね」「はい・・」

  決めた。この先の人生はむし歯くんと一緒に生きていく。よろしくお願いします、虫歯くくんとその家族。


✴️読んでいただいてありがとう。ございます。歯みがきを多少わすれても、むし歯にななったことがありません。歯ならびはかなり悪いし、真っ白ではないのですが。EXITの兼近さんがうらやましい。歯を真っ白にしたいので、誰かにお金をください。丈夫な歯に産んでくれた母親に感謝。