ふわふわでやわらかで
赤ちゃんてのは、どうしてこんなにほっぺがぷにぷにで目がくりくりでふわふわでやわらかでむちむちで暖かくて日向のような匂いなんだろう。幸せを感じるような優しい匂い。かわいすぎるよ。
ミルクくさいし、よだれをダラダラ出すし、そのよだれで服はよごれるけど赤ちゃんの笑顔を見ているといやなことを忘れることができる。彼女とケンカしたこと、ラインの返事が遅くて怒られたこと、理不尽な理由で上司に怒られたこと、すんでの差で地下鉄に乗り遅れたこと、期待して食べた豚の角煮がおいしくなかったこと。。などなどなどなどたくさんのことを。
「赤ちゃんがそんなに欲しいんなら、することしなさいよ。穴ぼこに種を植えて、10ヶ月くらいしたら芽がでるんだから」姉貴の、世俗的な言いかたに眉をひそめた。「ものの言い方があんだろうが。下品すぎる。もう少しきれいな言い方をしろよ」「だって本当のことでしょうよ。それにどんな言い方をしたって同じ」品のないママだねえ。甥っ子を抱きしめた。赤ちゃん欲しいなあ。彼女は仕事が楽しいから結婚はまだしたくないって言うし、結婚しても子供はまだまだ先の話しとも言っている。自分のコじゃなくてもいいや。姉ちゃん、このコをくれないかな。しがみついてくる甥っ子に頬ずりをした。甥っ子はきゃっきゃっと笑った。やっぱり赤ちゃんほしいなあ。「言っとくけど、赤ちゃんってのは夜泣きしたり、いつとなく急に熱を出したり、2、3時間おきにミルクを飲ませたり、オムツ替えてもミルクあげても服を替えさせても泣きやまないこともあるし、泣いたら泣いたでいつまでもないてるし、前触れなく吐いたり、グズリがひどいときもあるし、むずかったり、自分の時間がなくなるし、睡眠不足になるし、体力消耗したり大変なんだからね。かわいいばっかりじゃないのよ」甥っ子を取りあげた。「あんた幸せね。夢ばっかり見て。」そういった途端に甥っ子は泣きはじめた。「泣きやませてよ。大変さに気がつくから」押しつけられた甥っ子を抱き寄せた。彼は大声で泣き続けた。背中をさすっても、あやしても、ベロベロバアをしても、ミルクを飲ませても泣きやまない。
はああ。当分は夢見がちのままでいいや。
❇️読んでいただいてありがとうございます。子供は難しい。赤ちゃんを見てもかわいいとは思わないし、話ができるようになるとどういう会話をすればいいのか困る。かといってもう少し経つとずる賢くなる。どうしたら子供が好きになるのか教えてください。