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彼女だけは認めてくれた

    僕は自分のかん高い声が大嫌い。いくつもあるコンプレックスの一つ。一番気にしているコンプレックス。 だって人はしゃべらなければいけない。口をふさいで生きてはいけない。顔は整形できるけれど声はできない。

    思春期になると友人たちはどんどん声変わりをしていき、低い声になっていった。僕はほんの少し低くなっただけ。  声変わりを忘れちゃったんだ、そう笑って言いながら心の中では泣いていた。30歳を越えた今でさえ低くなってない。今さら低くなるとは思えない。だからきっと一生このまま。

『本当に声変わりしたの?』

   学校の同級生の彼女たち、成人して出会った女性たちは口々に言った。小馬鹿にして、こう言った人もいた。

『低い声って魅力的。そんな声で耳元で囁かれたら相手を好きになるかも。低い声じゃない人は好きにならない』

   けれど彼女はこう口にした。 彼女だけが認めてくれた。

『あなたの魅力でしょう、あたしはそう思う。あたしはその声が好き。甘えた口調も好き。あなた自身も好き』


✴️読んでいただいてありがとうございます。自分ではコンプレックスと思っていることを肯定してくれると、この人は人間ができてるなと思います。そんな人になりたいです。言葉は誰かを傷つけるためにあるんじゃない。人と話をするときは、それをいつも頭においてます😊😊