酒っ!酒、持ってこい!
おじいちゃんはお酒好きだった。
日本酒が大好きで、行きつけの酒屋に行って、一升瓶を毎回買ってきていた。それ以上に瓶ビール。よくわからないけれど、缶ビールよりも瓶ビールのほうがうんと美味しいらしい。子どものころの趣味は、その王冠を集めることだった。誰か親戚の人にもらったカンカンにそれを入れ、ことあるごとに王冠をうっとりと眺めていた。『楽しいか?それ』パカンとふたを開け、ひいふうみいよお、と数えていると後ろからおじいちゃんの声がふってきた。『おじいちゃん。今度エビスビールの王冠をちょうだい』エビスは高いんだよ・・愚痴りながらもおじいちゃんは次の日にくれた。
それを見て育ったお父さんも、酒豪ではないけどお酒が大好きだった。お父さんは缶ビール。350缶を。500缶は飲みきれないらしい。ある日、飲みきれなかったビールをキッチンで捨てた。そしてそれを見たおじいちゃんにド叱られたらしい。げんこつをおみまいされ、30歳を超えて初めて泣いたとぐちってた。それから350缶だけにしたと。月曜日は黒ラベル、火曜日はスーパードライ、水曜日はラガービール・・とルーティンで飲んでいる。
おばあちゃんやお母さんはそれを見てあきれているけど、暴れないし、暴言もはかないし、誰かに迷惑をかけていないからと黙認している
そんな家族を見て育ったあたしの生活にも、お酒が入りこんでいた。
おじいちゃんの好きなのは日本酒、お父さんはビール。あたしは洋酒。
ビールには嫌な思い出がある。子供のころの話し。プールから帰ってきて喉がカラカラだったあたしはテーブルの上にあった茶色い飲み物を口にした。うえええ、キッチンにダッシュして吐き出し何回もうがいした。それは泡がすっかり無くなったビールだったのだ。独特の臭さ、苦さ。それからは誰かがコップに入れた麦茶はにおいをかいでから飲むようになった。
「おい、もうやめとけ」お父さんは眉をひそめた。「ちゃんと数えてるっっっててて」いちにさん、お母さんは箱を取り上げ、カチャカチャと音を立てた。「あといくつ入っているの?いくつ食べたの?」キッチンのテーブルの上にティッシュを置いた。チョコを広げた。「バッカスを8粒も食べちゃったの?1日に2つまでって言ってあるじゃないの」「でもラミーもストロベリーブランデーは2つしか食べてないのよお」「お前、だいぶん酔ってんな。バカ、ほんとにやめとけ」
「酒っ!バッカスのチョコ、持ってこいっ」
✴️読んでいただいてありがとうございます。先日、生まれて初めてお酒を買いました。ジムビームです。買ってから横面見たら、ウイスキー、アルコール分40%と書いてありました。絶対に飲めません。飾りものに決定です。