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臨時休業決断するまでの葛藤を残しておく

本日発表になった「緊急事態宣言」に基づき、発令対象地域における勉強カフェの全スタジオを4月9日から4月30日まで臨時休業することにしました。名古屋グローバルゲートスタジオを除く全店です。FC店を含む16店舗中の15店舗をクローズすることにしました。12年この事業してきましたが、まさかほぼ全店を長期間閉めるようなことが起こるとは思いませんでした。

勉強カフェは会員制を基本としており、売上の大半は月会費です。今回の決定を受け、利用規約に基づき、3月末までに頂いている4月分の月会費は全額返金させていただきます。ぶっちゃけ1,000万円以上が飛ぶことに・・

2つの葛藤

実はすでに先週末、先々週末も、自治体からの外出自粛要請を受けて、東京都内と神奈川県内の全店で臨時休業という判断をしてきました。この間、先が見えないなか、国や都から踏み込んだ指示や宣言がなかなか出ないことにモヤモヤしたりもしました。

勉強カフェや類似する自習室やコワーキングスペースのような空間が所謂「3密」に該当するかは、微妙なところというか個人の判断に寄ると思います。見る人が見ればそうだし、別の人が見ればそうじゃない。大箱じゃない施設では、狭い室内空間に複数の人がいる以上感染のリスクは無いわけではなく、一方で「密接」になりがちなイベントの開催を中止したうえで、できるかぎりの換気や消毒を行えば、不特定多数の人が訪れるカフェと比べるとそこまでリスクは高くないとも言えます。

そして、1日全店のべ500名近くの方が日々各店を利用されているという事実。「勉強カフェが閉まると本当に行き場所がなくなって困る」という声もたくさん頂きました。。すみません。。。正直な話、3月から厳しい数字を予想し備えていたのですが、蓋を開けてみるとテレワークの推進に伴い、3月は想定を超えてむしろ前年より入会が伸びたスタジオも多く、多くの方にご利用いただきました。こういった非常事態において求められているのを感じた1ヶ月でもありました。

だからこそ、非常に悩みました。実際に私も明日より在宅ワークになりますが、仮に息抜きに家以外で仕事しようとすると、これまで使ってきた大手コーヒーチェーン店は軒並み休業予定とのことなので、作業場所がありません。

「1日500名の方への継続したサービスの提供」

「1日500名の方+1日に勤務する数十人の現場スタッフの安全確保」

どっちを選んでも、もう一方にとってはネガティブになる。どちらも両立することはできない。


価値観の問題

僕みたいな、ひとりの中小企業の社長がやったところでたいした影響を与えられるものではないですし、一個人としては公共の気持ちはどちらかというと弱い人間だという自己評価です笑

ですが、企業は社会的責任を有するべきだという軸はあります。企業は社会のルール、枠組みの中でその会社ならではの事業を行い、提供価値にバリューを感じてくださる人が従業員や顧客となり、価値を提供することで収益を上げていく。社会の一員である以上、責任を有するものになります。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、私も当初はインフルエンザと大した変わらないだろう、リスクは高齢者に集中していて現役層には大きな影響はないだろうと過小評価していましたが、どうやらそれは違った。

欧州や米国を中心にあっという間に事態が急変したのは衝撃的すぎます。ウイルスと人類の戦いなんてSF映画のいちジャンルだと思っていたことが現実に起きている。

現に外出しないほうがいいのであれば、企業としても、できる範囲で極力それに応じた対応を促す行動を取るべきだと思いました。閉めてしまえば、店舗への移動も含めて、外出リスクを減らせます。

合理性でいくと開けたほうが・・

悩ましいのが、これまでの週末もきっと開けていたとしても、おそらく問題はなかったんですよね。勉強カフェを1日あけることで感染者が発生する確率は、0ではないですがとても低いはずです。(リアルでのイベントは中止しているので)対面で大声を出すような場所でもなく、感染者が発生してクラスター化する確率は低いでしょう。

だったら開けたほうが、売上もたつし、返金も発生しないし、クレームも起きない。座席の間隔を開けたり、ビジターや提携利用の利用制限を行うという手札もありました。

周りを見渡せば、図書館は閉まっていますが、自習室やコワーキングスペースといった施設の大半はこれまでの週末も開いていましたし、今回の緊急事態宣言を受けても営業を続けるところも多いはずです。明確な正解はなく、それぞれの事業者判断ですので、他社さんのことをどうこう言う立場でもないですし、それに対する感情もありません。

だったら、ウチも開け続ければいいのではないか。当然考えました。補償もたいしてでなさそうだし、、、

さらにはフランチャイズやアライアンスの加盟店の存在です。当社が僕の意思で直営店の臨時休業を決めるのは自分の責任ですることなのでそれでいい。一方で当社はFC本部でもあるのです。

国からの強制力を伴う、休業指示なら話は簡単です。有無を言わさずそれに従うだけだから。ところが蓋を開けてみれば日本の緊急事態宣言は、都市封鎖(ロックダウン)のようなものでは無く出勤もNGではない。店舗に対してはあくまで「休業の強い要請」です。

そんな中、各加盟店に本部が強制して一律で長期休業を命令することはできないし、当社が強制してそれにより、経営が傾くようなことはさせてはならない。各社勉強カフェ事業だけを営んでいるわけではないし、あくまで自主独立とはいえ、FC本部の判断に無理に従わせて極端な話倒産させてしまいましたは本末転倒。

そう考えていくと、臨時休業を選択することはリスクでもあるのです。

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身近な人を守る

で、どうすべきなのか。最終的に自分が辿り着いたところは、自分にできることは近い人を守ることだと。個人においては、一緒に住む家族。事業において身近な人は従業員のみんなです。とくに店舗ビジネスにおいては、現場に人がいないと事業が成り立ちません。

これは僕がサービス業出身で現場で店長をやってきたので身に沁みていますが、現場は本部が閉めると言わない限り、自分は店頭に立ち続けるしかないのです。テレワークや時差出勤なんかも無縁の世界。

こういう緊急事態のときはリスク評価が人それぞれです。勤務するリスクを心配する人もいれば、それよりも日々の生活の方が心配な人がいる。どちらか一方をとると決めて選ばれなかった方も補償するしかない。

カッコつけているとかそういうことではなく、いのちが大事な状況の中、僕にできるのは身近にいるスタッフの皆さんの安全確保くらいなので、中途半端に営業し続けるのではなくスパッと閉めて、身の安全をとることにしました。

先々週から二度に渡り閉めていたので、今回の緊急事態宣言の発令に伴う長期臨時休業は準備して決めることができました。ここ一ヶ月、僕は殆どコロナ対応に関連することしかしていません。自分が浮いていられる状態を作れていて本当に良かったと思います。

社長が通常業務への関与を減らし続けると、そのうち実は自分が要らないんじゃないかという気持ちになります。が、社長は暇でいなければいけない。普段は暇しているくらいじゃないと、こういう非常事態の際に後手に回ってしまうと今回実感しました。何年も前、プレジデントアカデミーさんのスクールに通っていた際、講師の方が仰っていた「社長は最終的には自分をクビにせよ」というのが心に残っていたのですが、まさにそのとおりだな、と。

今回、担当業務が他にもたくさんあるにも関わらず、何時間にも渡り僕と議論を重ねてコンティンジェンシープランやその他をまとめあげてくれたメンバーには本当に助かりました。会員さまからの問合せや残念がる声に答えてくれた本部メンバーや現場の皆さんにも感謝です。

そして、FC加盟店の各オーナーさんもどなたも緊急事態で厳しい状況の中、勉強カフェの臨時休業の実行に対して疑問の声を上げること無く、全店一律での休業に理解協力いただき、感謝しています。一連の決断のストレスで身体が苦しんだのは殆ど記憶にないくらい久々ですが、それを察知して温かく接してくれた妻にも本当に感謝しています。

なんだか引退するみたいになってきました笑

そして、せっかくご利用されようとしていた会員の皆さまには、本当にご不便をおかけして申し訳なく思っています。オフィスへの出勤が規制されたからこそテレワークを含めて勉強カフェを利用しようとしていた方も多くいると思います。特に、こういった不安定な時期にも関わらず、各店で最近入会された方、3月31 日に新規開店したばかりの柏マルイスタジオにご入会頂いた40名もの会員の皆さまには、特に申し訳ない気持ちでいっぱいです。自分たちの行動で感染拡大を抑止できることを祈りつつ、どうか皆さま再開までしばしお待ちください。

こんな時だからこそ勉強しよう

本当に難しい判断ですが、緊急事態宣言という現時点で最も重い発令が出た以上、自分たちにとって守るべきものを守ることを選択した次第です。休業期間が開けましたら、我々勉強カフェのスタッフと会員のみなさまとがまた元気に再開できるように。私たちも皆さんも可能な範囲で引きこもりましょう。(在宅で時間が増える方は、今までしようと思ってできなかった勉強をするいい機会ですよ!)でもやっぱり自宅じゃ勉強できないよと感じたころに、勉強カフェに戻ってきて頂けたら幸いです。