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勉強カフェ誕生秘話:実は最初は「勉強カフェ」ではなく・・


1.会員制書斎空間からはじまった


千駄ヶ谷に「勉強カフェ」を創業したのは、リーマンショックがあった2008年---

面倒くさいのでそう言っていますが、

お店を作ったのは本当です。
ただ、正確には創業の際は「勉強カフェ」という名前ではなく・・・



実を言うと、創業した2008年当時、
この空間を一言で言い表すことができなかったんです。

有料自習室ではない。
図書館とも違う。
レンタルオフィスやシェアオフィスでもない。
(コワーキングスペースは当時はまだありませんでした)
ビジネスラウンジ?

それも違う。

じゃあなんだ?

本も読めて勉強もできて、たまには周りの人と話もできる。
強いて言えば、大人の書斎かな。

などと考えたのですがこれといった答えは出せず、
結果、名乗っていたのが

会員制書斎空間 BOOKMARKS TOKYO


穴があったら入りたい

「会員制書斎空間」

とっても怪しいですよね笑

でもそれに替わる言葉が、
どうしても自分の中で見つからなかったのです。

今は閉店した1号店の店内は、
大人の隠れ家を意識して作っていたことも相まって、
とても敷居が高い空間になっていました。

消火器を売りつけられるんじゃないかと思ってたと、言われたこともありました笑

閉店済みの1号店(左)と今の勉強カフェ(右)

そんなこんなで始まった勉強カフェの前身「会員制書斎空間 BOOKMARKS TOKYO」

結果、当然といえば当然なのですが・・
会員数が10名もいない月が続いていました。

なんとかしないと開店直後なのに、
早速借り入れた運転資金が枯渇して倒産してしまう。
生まれたばかりの子どももいるのに、
いきなり家族で路頭に迷ってしまう。

とはいえお店にいるのは僕一人だったので、
外に営業に行くこともできない。
朝から晩まで受付に立ちながらできることをやって、
なんとか風向きを変えなくてはならない。

ホームページも自力で作った。
駅前でビラも撒いた。
ポスティングもした。
異業種交流会に出かけていっては、チラシを配った。
みようみまねで、リスティング広告も打った。

売上が立たない原因はわかっていました。
とにかく恐ろしいくらいまったく知られていないということ。

このままいくと、あと数ヶ月でタイムアップ。
本当にまずい。


2."起業失敗あるある"をやらかす


当時、メイドカフェや猫カフェなど、
さまざまな◎◎カフェというものがテレビを賑わしていました。

思ったのが、

「ウチも◎◎カフェにしたらトレンドに乗れるかもしれない」

今では嘘のようですが創業直後の勉強カフェは、
今のような無料のセルフサービスではなく、
私が一杯ずつ有料で注文を受け、且つ私がサーブしていました。

しかもコーヒー・紅茶はもちろん、
オレンジジュースからウイスキーやカクテルまで、
無駄に豊富なラインナップ。

なので、ウチも「◯◯カフェ」を名乗れると考えたのです笑

そこで僕が考えたのが、
この場所を通じて何をお客様に提供したいか。

それを名前にしよう。

つまり、お店の名前に自分の想いを込めたのです。

いや、お店の名前は大事ですので、
そこに想いを込めること自体は間違っていないのかもしれないですが、
そこに偏ってはいけない。

この過ちは所謂「起業あるある」のひとつだったりするわけですが、
当時の僕は分かっていなかった。

そこで生まれたのが、

「progress cafe BOOKMARKS」

progressは、「前進する」という意味。

創業当時から
この場所をただの勉強場所とするのではなく、
学びや人との思いがけない出会いにより、
その方の成長に繋がる場所にしたいと思っていたので、

前に向かって進んでいく印象のあるprogressが
ピッタリだなと思ったわけです。

さて、こうして生まれたプログレスカフェ。

カフェ感がでたことで、
前の「会員制書斎空間」よりも敷居が下がって
これでお客様が増えることを期待したのです。

現存する唯一のProgress Cafe時代グッズ


・・・・・1ヶ月後・・・・・・

まったく状況は変わりませんでした。
世の中そんなに甘くないことをここでも思い知らされます。


3.大赤字の中の「20万円のブログコンサル」


話は変わって、当時はTwitterもFacebookもまだ普及前、
SNSといえばmixiの時代
そして、サイバーエージェントの「アメブロ」の人気がありました。

ブログは開業前から書いていたんです。
この事業を思いついた時に、
よくある「起業家日記」として書き始めました。
28歳のときです。

今となっては顔から火が出るくらい大変恥ずかしいですが、
こちらが開店の半年前に書いた最初の投稿です。
パワーポイントのソフトを買ったようです笑
https://ameblo.jp/microtrend/entry-10100005163.html


そして何の疑いもなく日記として書いていたのですが、
開業後にたまたまお店に来てくださった方の紹介で、
「ブログコンサル」を名乗る人にお会いしました。

思ったのは、

ブログコンサル!?
そんな職業があるのか?


その時はすでに、

「このままいったら間違いなく潰れる」

という状況で、

残り少なくなってきた運転資金を、
自分でやり方を学んだリスティング広告に投下し、
なんとか打開しなければ!と必死でした。

そんな時のブログコンサルの方との出会い。

そのブログコンサルの方曰く、
ビジネスブログとすることで、集客に使えると言います。

コンサルの内容を聞くと、
コンサル料とブログデザイン制作と撮影で20万円
加えて毎月のランニングの支払いもあった気がします。
決して安くない。

一方でリスティング広告は多少の効果はあったので、
どっちを選ぶかすごく悩んだのですが、
状況を抜本的に打開するためには、
アクションそのものを変えなくてはと考え、
ブログを選択することに。

なけなしの20万円を払いました。

これが最初の変化をもたらすことに・・


勉強カフェを名乗りだしてからのアメブロトップ画像。
一方でまだBOOKMARKS TOKYOとも名乗っていてなんだか定まっていません笑

タイトルも変え、デザインも刷新しました。

最初の1ヶ月はあまり変化を感じなかったのですが、
2ヶ月目に入り、これまでなかった変化が。

少しずつ投稿にコメントがつくようになり、
次に、ダイレクトメッセージが来るように。

そしてブログ経由で来店してくれる方が出てきました。
当時はアメブロを読んで来てくれる人は、
その当人の方もアメブロを書いているケースが多く、
室内の写真を沢山撮ってくださり、
皆さんブログの記事にして発信してくださったのです。

また、毎日発信を続けていたことで、
徐々にアメブロ界隈のブロガーのコミュニティにも
加わることが出来ました。

これにより、
まだ少しだけですが遠くに光が見えてきました。


4."勉強カフェ"突如爆誕


そんなある日のこと。

転機は急に訪れます。

ブログを見てきてくださった、あるお客様。

当時はいつも暇していたので、
僕は一人でもお客様が来てくれると嬉しくて嬉しくて、
ラウンジで2時間も3時間も話をしていました笑

色々雑談していた中で、
一つ質問を受けます。

「ヤマムラさん、ひとつ質問していいですか?」
「もちろんいいですよ!何ですか?」
「このお店の名前のprogressってどういう意味なんですか?私英語が苦手で・・」

何気ない質問のひとつだったのですが、

この時、僕の頭のなかに電流が走りました。

たくさんの情報やノイズが存在している現代。
そんな中で、意味が分からない言葉をお店の名前にして、
流行るはずがないじゃないか・・・。

ようやく過ちに気づいたのです。

その方が帰られたあと、
1号店のイベントルームのホワイトボードを使って、
すぐに「一人ブレスト」をしました。

この場所はいったいなんなんだ・・・

思えば、

「この場所を一言で言えない」

というのは、冒頭に書いたとおり、創業前から解決されていない課題でした。

その結果が、今。

幸運にも頂いた一つの質問から、
倒産寸前にもう一度向き合うことになりました。


もう考えつく限りのすべての単語を
ホワイトボードに書きなぐりました。

そこから簡単な言葉のみを残していきます。

最終的に残ったのが、

「勉強」

でした。

極限まで削ぎ落とした結果、
残った「勉強×カフェ」。

カフェは勉強する場所ではないという
一般的な認識があるなかで、

交わらないはずのその2つを掛け合わせると、
インパクトがあるのではないか。

少なくとも、
見たり聞いたりしたときに、
「え?」「なにそれ?」とはなるのではないか。

そして検索したところ、誰も使っていない。

「これだ!」

と思い、

その日のうちにしれっとホームページを更新。

「会員制書斎空間」は

「progress cafe」を経て、

第三形態「勉強カフェ」に生まれ変わりました。
(正確には、最初は「BOOKMARKSという勉強カフェ」であって、
これがまた次の失敗に繋がります・・)

店名を変えただけで大きな変化はなかったのですが、
このあと、名前の重要性を目の当たりにすることになります。


5.36回払いローンでセミナー受講

創業後いきなりの倒産危機に直面した僕は、
ブログの書き方を教えてもらい。
お店の名前も数度の試行錯誤の末
ようやく「勉強カフェ」に辿り着きます。

この時すでに開業から4ヶ月経過。
あと2ヶ月で創業融資借入の元本返済が始まります。
喫緊の課題は、とにかく一刻も早く売上を上げること。
そのためには、知名度を上げること、
そして数少ない見学者の方に高確度で入会してもらうことでした。

そのためにまず行ったのは、目標設定のセミナーの受講

それまで勉強といえば本を読むくらいで、勉強らしい勉強もせず、
あまり考えずに行き当たりばったりで生きてきていました。
その結果が倒産寸前。
その絶妙なタイミングで、何かと私のことを気にかけてくださった前職の上司がとある講座に誘ってくださり、興味を持ったのです。

しっかり自分に投資して勉強しなければ、
この厳しいビジネスの世界は生き残れない。

そして自分自身で目標設定のノウハウを学んで、
無料見学会で自分が講師として学んだことをアウトプットすることで、
見学会のコンテンツを高められるのではないかという
よこしまな考えもありました。

ほぼ雇い止めしていたアルバイトスタッフに出てもらい、
開業以来初めて3日間店を不在にし、
有名な某講座に参加しました。
3日で18万円。

もうお金がなかったので、
3日で終わるセミナーに対し、3年36回ローンを組んでの受講でした。

この目標設定セミナー付き無料見学会は大成功でした。
多くの方に喜んで頂き、
参加者の多くがご入会してくださり、とても手応えがありました。

たまたま同じ回の無料見学会に参加し、たまたま隣同士にお座りになったお二人とも入会されて、
その後結婚ということもありました。お元気にされてるといいな。

6.突破口は1枚のFAX

「勉強カフェ」という名称にして、2ヶ月経過。
ブログ効果でお客様の数は多少増えてきてはいたものの、
依然として売上高が家賃にすら届かないままでした。

SNSがまだ普及前、
ブログ以外にお店にいながら出来る営業方法、
それはプレスリリースのFAX送信でした。

広告は高すぎてできません。
それに対し、マスコミが取材してくれたら、無料で宣伝できる。

これは正直とても魅力的。

毎日のように、A4用紙1枚にプレスリリースをしたため、
テレビ、新聞、ラジオ、雑誌各社にFAXしまくっていました。

しかしこれもそんなに甘い世界ではなく。。

何ヶ月やっても効果は0。
まったくもって何の反応もありません。
本当に届いているのか?
疑心暗鬼の毎日でした。

送っても送っても反応がない。
・・正直諦めかけていたそのとき。

何かの本か記事に、

プレスリリースの99%は、営業になってしまっている。
だからメディアに読まれることはない。

とありました。

なるほど、確かに自分の書いたリリースもそうでした。
取材してもらいたい気持ちが強いために、
自社サービスの押し売りみたいになっていたのです。

長い冬を終え、桜の季節になっていました。
春といえば、新年度です。
気持ち新たに新生活を始める社会人も多いはず。

季節要因を絡め、新たなスタートを切る社会人が集まり出している
という切り口でプレスリリースを用意しました。
そして、もう一度諦めずに送信し続けました。

それから数週間たったある時。

ついに一本の電話が入ります。

読売新聞の記者さんからでした。
変わった自習室のひとつとして取材させて欲しい、と。

「ついに!!!来た!!!!!」

店内の写真も取ってくださり、
会員様にもインタビューの協力をいただきました。

掲載日当日。

全国紙の朝刊に写真付き。
宣伝効果にしたら数百万円はくだらない。

迎えた当日朝、
確かに新聞に初めて「勉強カフェ」が載っている。

自分が考え作り出した事業が、大手の新聞で紹介された。

ついに苦労した半年が報われる時が来た。

これで単月黒字化も見えるかもしれない。


不測の事態が迫っているともしらず、
テンションMAX、幸福のさなかにいました。

夜を迎えるまでは・・・。

7.知らなかったメディアのルール

念願だった大手マスコミによる取材、
読売新聞についに掲載されたその日。

おそらく二度と無いこのチャンスを最大限ものにするべく、
在籍していたアルバイト2人全員に夕方に来てもらい、
一人は電話番、一人は僕が対応したあとの入会の手続き
という鉄壁のフォーメーションを敷くことに。

そして、夜。

スタッフとシミュレーションを重ねながら、
仕事帰りのサラリーマンの方の続々の来店に備えます。

19時。

まだこれからかな。

20時。

来ない。。

21時。

来ない。。。。

22時。

・・・・・

結局誰も来ないどころか、問い合わせの電話すらならず。

あまり引きずらない性格の僕ですが、
期待値が上がっていた分、この日は相当なショックでした。

その日のそのあとのことは記憶にありません。
期待してきてくれたスタッフにも悪いことをしてしまいました。

なぜ?
なぜ誰も来ない?
なぜ問い合わせすら来ない?

すぐに答えに気づきました。

当時、お店の名前は「BOOKMARKS」のまま。

勉強カフェを思いついていたのに、どうして?

正確に言うと、
あまり良く考えずになんとなく、

「BOOKMARKS」という名前の
「勉強カフェ」を運営している、としていたのでした。。

よって新聞には、

お店の名前である「BOOKMARKS(東京・千駄ヶ谷)」と載ったのです。

東京・千駄ヶ谷の「BOOKMARKS TOKYO」

その名前もBOOKMARKという英単語なので、
Googleで検索しても肝心の勉強カフェのサイトが出てくることがなく、
折角の機会を逃してしまったのでした。


反省を踏まえ、速攻で、お店の名前を
「勉強カフェ」にしたものの、時既に遅し。

二度とない大チャンスを棒に振ってしまった。。。

失意の日々を過ごしていたのですが、
そこに、一本の電話がかかってきます。

NHKからでした。

読売新聞の記事を見て電話をしたとのこと。

リベンジできるチャンス到来がきた!!

しかも今度はテレビです。
店内の様子もバッチリ見てもらえます。

店内の撮影だけでなく、
会員さま同士を僕が紹介している絵や、
英語の勉強会の様子なども収録してもらいました。

お店の名前は「勉強カフェ」にした。

次は同じ過ちをしない。

今度こそ。

そう思って放映日を待ちました。

放映日。

かなりの尺で紹介いただきました。

「渋谷区にあるこちらの某会員制カフェ」として。

たくさんの会員さまが出演に協力してくれました

NHKは公共放送。
お店の名前は紹介してくれないことを、
その時初めて知りました。

知らないことばかりです。

こうして、
二度目のチャンスもやらかしてしまったのです。


最終的にはその後三度目の正直、
日本テレビの「ズームイン!!SUPER」にて

「今、お勉強カフェが女性に大人気!!」

という特集で、
他の普通の自習室とともに、
3つの「お勉強カフェ」のひとつとして紹介されました。

想定外の「お勉強カフェ」ではあったものの、
兎にも角にもこれを機に、
勉強カフェは離陸することが出来ました。


勉強カフェではなく、"お勉強カフェ"としてメディアデビュー

実は、読売新聞に掲載された、
0が1になったことで信用が生まれ、
僕の知らないところで事態は好転していたのでした。

その後2年くらいは取材が取材を呼ぶかたちで、
有難いことに、日経新聞やWBSをはじめ、
だいたいの媒体で紹介いただきました。

開業から6ヶ月。
幸運なことに、
本当にギリギリのところで、
なんとか離陸することができました。

あと1ヶ月メディア露出が遅れていたら、
創業資金の返済が出来ず頓挫していました。

運が良かったとしかいいようがないのですが、
要因をもうひとつだけあげるとすれば、
次から次へひたすら手を打ち続けたということでしょうか。
圧倒的にハズレの方が多かったのですが。

起業相談などもよく受けるのですが、
これまで書いてきたように、
僕のような創業の仕方は、
まったくもってオススメできるようなものではありません。
参考にはせずに反面教師としていただければ幸いです。


それ以降もドラマの連続ですが、それはまたおいおい。