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イギリスをレンタカーでドライブする(その3)

5.ドライブする

 走り出せば、日本と交通ルールが異なるわけでもなく、周囲の車を同じように走れば大抵は問題ない。ただ、注意事項もいくつかある。

 まずは道路の種類だ。
 日本であれば、少なくとも一般道と高速道路は明確に区別されている。意識せずに走っていて、気がついたら高速道路だった…などということはないだろうと思う。しかし、イギリスでは基本的に高速道路が無料なので、このような事態が起こりうる。
 イギリスの道路は大別して、M、A、Bの3種類がある。そして、この3種類のアルファベットのあとに1桁〜4桁の数字が付される。雑な説明を試みるならば、Mは日本でいうところの高速道路(従ってインターチェンジがある場合も多い)、Aは幹線道路(実質的に高速道路同様に自動車専用道路になっている場合も多い)、Bはその他の細道…というような区分になる。
 例えばM1〜M4はロンドンから放射状に地方に向かう高速道路。AはMには至らない幹線道路だが、例えばロンドンからA2を走って行くとやがてそれがM2に変わっていたりする。つまり同じ1本の道でも整備状況によってMになったり、Aになったりというようなことが時々ある。Bはこれよりも細い地方道路で、山道に入るとすれ違うのさえ一苦労…などという道もある。
 もし、ヒースローで車を借りたのであれば、利用することが多いのはロンドン郊外をぐるりと一周するM25だろう。東京でいえば外環(東京外かく環状道)のような高速道路だ。交通量も多くて、時々は渋滞もするが、このM25に入って、ロンドンから放射状に各地方に向かう高速道路(M)に向かえば良い。

 それと一般道路(A、B)で頻繁に出くわすのはラウンドアバウト、日本でいうところの「ロータリー」だ。英国に限らず、ヨーロッパではこれが非常に多い。イギリスの場合でも日本で見かけるような大交差点は(都心部では見かけるものの)殆ど無く、大抵はこのラウンドアバウトだと思って間違いはない。円形(楕円形のこともある)のぐるぐる回る道路に、各方向からの道路が取り付くような形態になっている。
 真っ直ぐ走っていくと、車が右回りでぐるぐると回っている環状の道に出くわす。ここではとにかく右から来る車が優先だ。右から来る車をさえぎってはならないので、必要があれば環状の道の入口で停止して待っても良い(ここで追突される日本人も多いそうなのでポンピングブレーキ等で後続車には注意喚起しておくこと)。
 右からの車の邪魔にならなくなった時点で環状の道路に入っていく。ここで自分が進みたい方向の道を見かけたら左にウインカーを出して環状の道路から出るのだが、タイミングが難しければ何周回っても良いので、安全なタイミングでロータリーを出ていくのが良い。
 大きなラウンドアバウトだと環状のロータリーそのものが2車線とか3車線になっていたりするが、内側に入ってしまうと出たいときに出られなくなるので、慣れるまでは一番外側の車線をゆっくり走るのがお勧めだ。
 慣れるとすんなりとロータリーに入り、すんなりとロータリーを出られるようになり、日本にはないこの仕組みの合理性に少し驚くことになる…かも知れない。
 なお、流石にMではラウンドアバウトにはお目に掛かれない。Mの場合には日本と同じようにインターチェンジやジャンクションが整備されている。

 次に高速道路を長距離走ることになると、気になるのは食事とトイレだろう。ただ、これも心配は要らない。日本よりはちょっと少ない気がするが、ちゃんとサービスエリアが用意されている。
 同じ高速道路でも地方に行くと些か貧弱になるが、都市部に近いサービスエリアとかであれば、カフェテリア形式のレストラン、コーヒーショップ、コンビニに土産物屋と一通りの設備は揃っている。勿論、ガソリンスタンドもあるので心配は要らない。但し、これも日本と変わらないのだが、レストランの料理にあまり期待してはならない。また、レストラン…というか、バーガーキングだったりすることもあるので、飽くまでも「空腹を満たすことはできる」くらいに考えておく方が賢明だろう。
 あと、注意したいのはサービスエリアで車中泊など長時間滞在する場合は駐車料金が必要となることがあること。この場合は、表示をよく見て、滞在時間に応じてチケットを買ってフロントグラスから見えるようにダッシュボードにおいて置く必要がある。

 ガソリンスタンドはほぼセルフ式となる。自分でポンプの前に横付けして、自分の車に合ったガソリンを入れれば良い。大抵の場合は、unleaded petrol(無鉛ガソリン)で良いはずだ。これは日本と同じだが、ガソリン車に軽油(黒いノズルであることが多い)を入れてはならないし、逆も然り。何でも、黒いノズルに Regularとか書いてあったりすることもあるとかで、とにかく unleadedという単語を頭に入れておくこと。因みにハイオクの場合は、これも日本と同じでsuperとか書いてあるので、そっちから給油すれば良い。
 ガソリン代の精算は、自分のポンプの番号(わかる場所に書いてあるはず)を覚えて建物の中に入り、レジでその番号をいえばいくらと言ってくれる。ガソリンスタンドはコンビニを兼ねていることも多いので、飲み物やお菓子、サンドイッチなどが手に入ることもある。最近は機械にクレジットカードを差し込んで,そのまま精算というスタンドもあるようだ。

 駐車場については、これも日本と同じだが、そこら中に路上駐車して良い…わけがない。割と地方でも公共駐車場が整備されていることが多いので、そこに駐める。特に注意したいのは有料駐車場になっていることが多いこと。ただ、有料駐車場でも日本のようにゲートがあるわけではなく、駐車場の片隅にチケットの自販機があって、そこで自主的に駐車券を買う仕組みになっていることが殆どであること。買った駐車券はフロントグラスから見えるようにダッシュボードに置いておく。
 チケットを買わずに駐車しっぱなしにすると何が起きるか…というのはやったことがないのでわからないが、タイヤにロックとか掛けられてしまうのだろうか。
 町によってはパークアンドライド(駐車場からバスに乗って街中へ移動する)を採用しているところもある。この場合、街中に車で入るよりも駐車場代がお安いことが多い。

 宿については、昔は行き当たりばったりで行った先でB&Bを探す…なんてこともした(それはそれで楽しい)が、今はExpediaとかで探してしまった方が早い。宿に入ったら、ナビに使っているスマホで翌日の晩の宿を探すくらいでも大抵何とかなる。勿論、観光案内所で探してもらう手もある。
 大抵安い部屋には理由があるので、そこそこの価格(2人1泊で1万円前後)で探せば、まぁ間違いはない。それでもゲストハウスだと、重いスーツケースを階段で3階まで持ち上げる…なんてこともあったりするのだが。
 夕食も今ならネットで評判の良い店を探すことができるし、勿論、ゲストハウスのオーナーに紹介してもらっても良い。行き当たりばったりで賑わっているパブに入ってみるのも楽しいものだ(コロナ禍の中だとちょっと勇気が必要だが)。

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6.返却する

 これは実に簡単だ。特にヒースローなどの大きな営業所では、Returnという表示に従って車を走らせていけば、最後に広い駐車場のような場所に案内される。そこで、端末をもって待つ係員に鍵を返して、傷などをざっとチェックしてもらい、伝票をもらえば(電子メールの場合もあったような)完了だ。あとは営業所に案内されるので、そこから送迎のバスに乗ればターミナルまで送り届けてくれる。
 ターミナルに着いたら帰国便のチェックインをして、ハンドルを握っていたために呑めなかったビールでも飲んで、ゆっくりと旅の思い出を振り返りながら帰国便を待とう。

7.参考書籍

 ちょっと古い本なのだけど、「ドライブすればイギリスの素顔が見える」(磐崎弘貞著、亜紀書房刊)をお勧めしておきたい。15年以上前に書かれた本だが、今もその内容は色あせていない。

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(完)

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