俳句とエッセー⑩『 海 山 村 Ⅱ - 黒葡萄 』 津田緋沙子
黒 葡 萄
鶏 頭 と 犬 と 眺 む る タ 焼 空
ソ リ ス ト の 喉 す べ り ゆ く 黒 葡 萄
葡 萄 売 る テ ン ト の 列 や 麓 ま で
竜 胆 や 媼 の 背 な の 寵 に 揺 れ
山 下 り る 子 ら 竜 胆 を 振 り な が ら
カ タ カ ナ の 電 報 遠 く 文 化 の 日
街 灯 の 早 も 灯 り し そ ぞ ろ 寒
拍 車
異常気象に拍車がかかってきている。目に見えて自然にも異変
が起こっている。
夏の初めうるさい程だった蝉の声がある時からぱたっと聞こえ
なくなった。早朝から元気な蝉の声といういつもの夏ではなかっ
た。聞けば度々の豪雨のせいだとか。地中で数年、やっと外へと
地表近くまで来た時の豪雨で溺れ死んだ可能性が高いという。無
惨としか言いようがない。
実りの秋の田んぼの様子も少々変だ。ジャンボタニシに幼苗を
やられ、あちこちにできた隙間を見れば、早朝から毎日網でタニ
シを掬っていたおじさん達を思い出し胸が痛む。
私も今年は草取りに追われた。萱やヒエが増えてすぐにのさば
るのだ。除草剤は使わないと決めているので遂に草払い機に挑戦
した。おっかなびっくりの虎刈り作業。 これも痛々しい。
胡椒屋さんは青唐辛子の味が変わったと首を傾げていた。昨日
初物で貰った青い露地みかんは少しスパスパだった。次には何が
くるか。急に秋めいてきた里の彼岸花を眺めながら少々怖い。(了)