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俳句とエッセー②『 海 山 村 Ⅱ - 地主顔』 津田緋沙子


   地 主 顔


日 雷 押 し 黙 り ゐ る 峡 の 里

つ か の 間 を 泉 に 眠 る 杣 の 犬

泉 へと つ づ く 野 道 と け も の 道

山 羊 五 頭 地 主 顔 し て 夏 野 ゆ く

消 し ゴ ム の つ く る 友 情 夏 季 講 習

青 嵐 心 に 鍵 の か か る 音

退 院 の 朝 の そ ら 豆 ス ー プ か な


     雷


 諫早は雷の多い所である。地理的条件によるのだろうが、年中
ごろごろ鳴っている気がする。おまけに長崎市に住んでいた時よ
り格段に音が大きく、稲光りも強く感じる。ものぐさな私でもプ
ラグを引き抜かずにはいられない時がたびたびである。
 昨夏、隣町の森山図書館が落雷で火事になった。木をふんだん
に使い、広々とした自慢の図書館は消防や地元の人の奮闘で短時
間に消火できたものの五万冊もの本が煤や水を被った。現在、 一 
部開館しつつボランティアも参加して本の清掃中である。秋の全 
面開館をめざし、 工事中の建物には避雷ハネルなるものが取り付
けられるとか。自然の恵みと災害は裏表、人間の知恵に期待する
ばかりである。
 「雷の多い時は豊作」 「稲妻は実りの証」とは昔から言い伝え
られていることらしく、今でも農家のおじいさんのロから聞いた
りする。それならいいな、我慢せねばとも思うが、 いざ迅雷とな
ると、雷は稲の妻…などとロ マンに浸ってはいられなくなる。
さて今年はどうだろうか。日雷はお断り、落雷なしで多めに、
と虫の良いことを考えたくなる。



諫早市森山図書館の全景。木造建築の図書館としては全国屈指の規模を誇る。
諫早市森山図書館の佇まい①
諫早市森山図書館の佇まい②奥の建物の屋根を落雷が襲った。

4月20日、図書館の周辺の田んぼでは早場米の田植えの準備が完了していた。あっという間に夏が来そうな気がする。
図書館前の花のみち。4月は花の季節、図書館前の道は地域の人たちの努力で季節毎に花が絶えることがない。

図書館の前の道を南に行くと、橘湾岸に諫早市唐比湿地公園・唐比ハス園がある。約6000年前から形成された湿地(泥炭層)で6月下旬から約一か月美しいハスの花を楽しめる。特にお勧めは7月初旬の朝、昼には花を閉じてしまう。2haのハス園に12~13種類のハスと睡蓮が咲き競う。


ハスの古名は「はちす」、約1億年前から変わらず生息しているとも言われている。インダス文明では「聖なる花」である。


小さな命を思う。いつまでも守っていきたい自然である。


下記をクリックすれば『海山村Ⅱー風の道③』に続きます。

よろしければお読み下さい。


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