俳句とエッセー⑥『 海 山 村 Ⅱ - 負けず嫌い 』 津田緋沙子
負 け ず 嫌 ひ
冬 凪 の 湾 に 女 の 声 の 増 へ
寒 月 や 影 も 私 も と ぼ と ぼ と
寒 月 や 土 黒 々 と 藍 の 甕
晩 照 や 立 ち 上 が り く る 冬 の 山
階 段 を 駆 け る 足 欲 し 冬 日 和
冬 凧 や 負 け ず 嫌 ひ の 次 男 坊
元 寇 の 海 見 は る か し 冬 の 凧
マ イ カ ー 顛 末 記
増え続ける高齢者の交通事故。さすがに私も二年位前からバス
や電車に乗る練習を始めた。待つということは難しく、 田舎の交
通事情は身に泌みた。
そんな中、秋の終わりについに私の車に寿命が来た。母の介護
を助けてくれたスバルのインプレッサ。十年も乗り続けたのは地
域事情と何より車が作ってくれた思い出のお陰である。
親しい整備工場で、もう車はやめると口にした私に社長は事も
無げに、あれ持っていけばと会社の代車の一台を指さした。そし
てあれよあれよという間に新しいマイカーはやってきた。何と私
のインプレッサのポールが形見のように取り付けられている!
少々のお手入れや交換、車検を済ませ、二十万円足らずの代金明
細の中に車両代八万円也と記されていたので、私はこの車に「ス
ズキパーマン」 と名づけた。
以来二ケ月、車利用は諌早、長崎に出かける場合と限定し、慎重に
運転している。料金所で普通車料金を出したり、 スーパーに乗って
行って駐車場に忘れて歩いて帰ってきたり、人に言えな話はある。
でも寒風、寒月の季節も笑いつつ、人の温もりを感じつつ凌いでゆ
くのだ。
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