給湯室でお局さんに挨拶するのを忘れて怒られた件
「ちょっと、桜井くん」
「・・・・はい」
「いや、はいじゃなくって」
「え?」
「なんもなし?」
「・・・・?」
「スーってなにも言わずにさ。『おつかれさまです』なり『失礼します』なり」
「ああ・・・おつかれさまです」
「『ああ』??え、なにその『ああ』って」
「・・・・・」
「わたしここに立ってたよね?見えてるよね?」
「はい・・・います」
「よかった、存在してるんだよね。じゃあ、なんで無視なの?」
「いや、無視とかそういうつもりはとくに」
「デフォルトなんだ、なにも言わないのが」
「いや、そういうわけでは・・・」
「え、なに、じゃあ、わたし以外だったら挨拶するってこと?」
「いやいや、しません」
「え、じゃあ、会社ですれ違う人にまったく挨拶しない文化圏にいる人ってことでいいの?」
「いや・・・そういう文化は」
「え?じゃあなんなの?気分悪い・・・月曜の朝から」
「すみません」
「うん、ちゃんと謝罪して・・・」
「私、桜井は給湯室で月曜の朝から就業時間が過ぎてもチンタラ時間を稼いでいるダメ社員浜口さんに対してなんの挨拶もせず、通り過ぎようとしたこと、そして、その浜口さんからのクレームに対して積年の不満を隠しつつ聞き、会社での立場もこれからの人生設計にも不満でもはや気の弱い社員に当たり散らすしかないんだろうな、と心の中で思ったことを謝罪します。申し訳ございませんでした」
「殺すよ?まじで・・・」