『イノセンツ』を観たことを透視する彼女
「昨日さ・・・」
「待って!・・・見える」
「え?」
「他人の痛みを自分のことと共感している姿が見える」
「なにを見てるの?」
「昨日の話をしようとしたでしょ?それを透視していい?」
「いいけど・・・」
「団地みたいなところで少年少女が遊んでる風景が見える。夏休みかな・・・」
「子ども?・・・俺ではない?」
「・・・その風景を勝也が見ているから・・・映画かな?」
「そう。昨日観た映画の話をしようとしてた」
「じゃあわたしが透視したのってその映画の内容か。よかった・・・」
「なんでよかったの?」
「結構残酷だったから」
「その映画にもそうやって超能力的なものを使う子どもたちが出てくるんだ」
「へえ~、『童夢』みたいな感じ」
「そうそう、まさに」
「その映画を観て勝也が感じたことをわたしは共有してるんだけど、わたしたちのことなのか、映画のことなのか、マトリョーシカみたいでややこしいね」
「なんの予備知識もなく行ったからすごいおもしろかった。『デカローグ』みたいな北欧の雰囲気もよくってさ」
「その映画の帰り道に大久保公園通った?」
「いきなりなに?」
「いや、なんか立ちんぼしている女の子たちの画が見えたから・・・」
「・・・まあ、たしかに自転車で通ったけど」
「・・・・・」
「え、なにもしてないよ、俺」
「・・・・・」
「・・・・・」