最高裁判決が言い渡される、自動車メーカーの税務訴訟について①
1. はじめに―どんな事件か
本件は、日本の著名な自動車メーカーに対し、課税当局が、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)を適用して巨額の課税処分をしたという事件です。
自動車メーカーは、課税処分の取消しを求めて裁判所に提訴しました。
2. これまでの裁判の状況
一審の東京地裁では国(課税当局)が勝訴しましたが、二審の東京高裁では納税者が逆転勝訴しました。この逆転勝訴は、当時、主要な新聞媒体で大きく取り上げられました。
しかし、国は、高裁判決を不服として、最高裁に上告受理申立てをしました。これを受けて、最高裁は、国の上告を受理し、2024年6月13日(木)午後3時より、口頭弁論を実施することを決定しました。
3. 最高裁判決の見通し
最高裁が高裁の結論を維持するつもりなら、口頭弁論は必須ではありません。口頭弁論を実施せずに判決を言い渡すことが可能です(実施してもよいのですが、結論維持なら実施しないのが通常です。)。
他方、最高裁が高裁の結論を覆す(高裁判決を破棄する)判決を言い渡すためには、法律上、口頭弁論を実施しなければならないとされています。
したがって、最高裁が本件で口頭弁論を実施することにしたということは、高裁の結論が見直され、納税者が逆転敗訴する可能性があることを意味します。
4. 最高裁の傍聴について
前述のとおり、2024年6月13日(木)午後3時より、最高裁で本件の口頭弁論が実施されます。
一般の方の傍聴はもちろん可能ですので、ご関心のある方は、以下の最高裁のHPで傍聴について確認されたらいかがでしょうか。
ただし、判決がその日に言い渡されるわけではありませんので、ご注意ください。判決日は別途指定されます。
5. 終わりに
この記事のタイトルに「①」をつけているとおり、続きの記事(②)を予定しています。
続きの記事では、過去に私が執筆し、ジュリスト(※)の「租税判例速報」に掲載していただいた内容を一部加工して、事案の概要と高裁判決の内容をご紹介しようと思います。
※ 「ジュリスト」とは、有斐閣という出版社が発行している法律の専門誌です。「租税判例速報」は、租税法学者や実務家が税務に関する最新の裁判例を速報的に解説するもので、毎号掲載されていますので、ご関心のある方はご購読などされるのがよろしいのではないかと思います。
【追記】
続きの記事を公開しました。