新規事業担当者こそClubhouseに入り浸れ
2021年のスマートフォンアプリ業界は、(iPhoneユーザに限定された話だが)Clubhouseのムーブメントから始まりました。
「ゆるゆると雑談に参加できる部室的ラジオ」というUXは、コロナ禍でコミュニケーションに飢えていた僕らの心を鷲掴みにし、急激なムーブメントの盛り上がりとなりました。
一方で、録音禁止メモ禁止でアーカイブの残らない仕様から、FOMO(fear of missing out、取り残される不安・恐怖)が圧倒的に刺激された結果、他のSNSよりも圧倒的なスピードで疲弊する人たちが生まれました。2ヶ月足らずでその盛り上がりは収束を見せています。
4月にAndroid版がリリースされるという噂もあり、そのタイミングで再度の盛り上がりを見せるのではないかとも思われますが、この「音声 × 雑談」というUXが定着するか否かはみものです。
これが定着するか否かはさておき、こういったムーブメントは数年に一度しか訪れない熱狂的な盛り上がりです。
新規事業担当者はこのムーブメントを身をもって経験しておくべきです。なぜ盛り上がったのか、なぜ急速に盛り下がったのか、そして、この後どこに行こうとしているのか。
もちろん論理的に言葉で整理する試みは多くの方が行なっていますので、それを参考にされるのは良いことですが、それ以上に自分の肌感覚でこのワクワク感を感じること、そして自分の言葉としてそれを語ることは、経験値として得難いものであり、自身の新規事業に間違いなく活きてくるものです。
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そんななか、ボクはムーブメントの初期から毎晩ルームを立ち上げてきました。先日ついに60夜連続開催まで辿り着きました。
毎晩、"新規事業"を軸に、様々なテーマで新規事業に携わる皆さんとディスカッションをさせていただいています。
組織、チーム、人材、プロジェクトマネージメント、社内コミュニケーション、社長との関係性など、新規事業における幅広い領域での"壁"の存在と、その乗り越え方と時々愚痴が折り混ざるディスカッションは、日々学びを得ることができています。
昨今「バウンダリースパナー」の重要性が叫ばれています。
スタートアップ界隈では、起業家であることやスタートアップで働くことだけを軸に、様々な業界やマーケットで働く、様々な職種の人たちが、それぞれバウンダースパナーとして日夜コミュニケーションを取り続けています。
世の中からライバル企業と目されている企業でさえ、もちろんその側面はありつつ、同時にともに市場を盛り上げる仲間として情報交換をしているのです。
一方で、こと大企業となると、途端にうちにこもってしまう。
同業はもちろん異業種間ですら、情報交換をする機会が少なくなっています。(もちろんしている前提ですが、スタートアップと比べると圧倒的に少ないことは事実です)
もちろん、デスクに座っていても、圧倒的な情報量が得られる時代です。体系化された書籍、フロー情報としてのネットニュースやネットメディア、そして専門家の声が直接聞けるSNS。そこから得られる情報だけでも、学びは多分にあります。
しかしそこからは「ウェット」が抜けてしまっています。書籍にしろ記事にしろ、他者の口から出た言葉は少なからず一般化されたものとなり、少なくないバイアスがかかっています。
特に大手企業の新規事業は、スタートアップよりも複雑系です。スタートアップよりも様々な要因が絡み合い、乗り越えなければならない壁も複雑です。スタートアップのように真正面からぶつかれば、未来への扉が開かれるようなものでもありません。
その時に重要となってくるのは一般化された情報ではなく、他社/他者がどのような状況でどのような対応をしたかという「生の声」なのです。
それを知り、選択肢として自分の手元に並べれば並べられるほど、未来の扉を開くチャンスが増えていくのです。
それにはclubhouseは最適なプラットフォームといえます。
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新規事業を軸に語り合うことも良いでしょう。
それだけではなく多様な領域で多様に活躍する人たちの話を聞くことも有益です。
もちろんそれをただ聞き流すのではなく、自分の業界や自分の仕事にアナロジー的に当てはめた上で、自分だったどうするかを考える。自分の壁を乗り越えるヒントは、自分の知らなかった領域からこそ得られることもあるのです。
しかしその出会いはセレンディピティ的です。知らない領域からの情報から何が得られるかなど、偶発的以外の何者でもありません。
だからこそ「雑談」が重要なのです。
そして部室的に他の領域の専門的な話にぐいぐいと入っていくことができるclubhouseこそ、それに適したプラットフォームといえるのです。
そして何より、新規事業というのは現在の「当たり前」を否定して、未来の「当たり前」を創り上げることに他なりませんから、自分たちを客観的にみる視線を養うためにも、異業種の目を手にすることができる(少なくともそれに触れることができる)clubhouseは、宝の山なのです。
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