「デザイナーがモンテネグロのサッカークラブ立ち上げに関わるまでの記録」【vol.1 はじまり 2016年】
はじめに
須藤博行です。東京都大田区出身。2023年現在デザイナー歴23年、そしてモンテネグロ FKアドリアというサッカークラブの設立から運営に携わり7年が経過しています。
子供達や若い人たちの可能性・未来を広げていく、FKアドリアのプロジェクトは、今後さらに広がり、世界と繋がり続けていく力はやがて大きな渦となっていく事でしょう。3年後にはFKアドリア設立 10周年を迎えるにあたり、これまで通りの“ 想いと行動力 ”を初心に持ちながらも、組織の経営面において様々な方からヒントと知識や見識をアドバイスを頂きながら(個人としても)組織としても成長していく必要があると考えています。そして、50年、100年と歴史あるクラブとして継続していくためには、若い方と一緒に取り組み、運営をいずれは引き継いでいく必要があると考えました。
そこでまず、(サッカー経験者ではあったが)指導者やサッカー業界ではなく”デザイナーであった自分が、なぜ?どのようにしてサッカークラブの立ち上げに関わったか” を書き記すことで、自身の整理や(家族への説明と)同時に、将来このプロジェクトに関わって頂ける方にクラブの創設の成り立ちを知っていただき、より多くの方にプロジェクトを共に進めていただくことが出来ればと考えております。
(✳︎FKアドリアの活動拠点の中心は、あくまでモンテネグロのクラブでの活動です。この記事は、日本からのクラブをサポートする活動の一つの視点として読んでいただければ幸いです。)
【vol.1 はじまり 2016年】
デザイン制作会社から26歳の時に独立。2006年から10年間フリーのデザイナーとして活動しました。(2007年〜2012年は合同会社IWH/Impressionwarehouseをお世話になった方々と共同設立・運営)
2016年友人(北ちゃんは親同士も幼馴染)と共に、新たにデザイン会社TWOINCを共同設立して現在も活動中。(https://twoinc.jp)
行政、スポーツブランド、医療系、教育機関、企業広告、アパレル、WEB、動画など、これまで様々なデザインツールを作らせていただきました。(デザインによってどのような印象を持っていただくか、またデザインによってどのようなメッセージを伝える事ができるか。この辺りが最も得意にする部分だと思っています)
さて、30代も後半に入りデザイナーとして、まもなく20年目を迎えるにあたり
【限られた残りの制作人生で何を残すべきか】
【何に命を使っていくべきか】
そして
【デザインでサッカー界に何か貢献できないか】
常に考え、周りにも公言していました。
「サッカーに関われる事があればなんでもやります」
するとある日、10数年来の友人カメラマン中島さんからの電話。
「地元鹿児島の小学校時代のサッカー仲間のタカフミという友達が、モンテネグロという国でサッカークラブを作るらしいです。エンブレムとか作る人が必要かもしれません。つなぎますか?」
「是非、宜しくお願いします」
デザインの力で、自分を育ててくれたサッカーに何か恩返しのようなものができるかもしれない。これは、何か自分の人生の集大成になるのではないか。
2016年11月、モンテネグロにいる大迫さんとLINE通話で初めての電話。
時差もありLINE通話の終了は、早朝。夜はすっかりと明けていたが、眠気はなくただ高揚感しかなかった。
【世界をつなぐ友好のサッカークラブ】
もし、エンブレムを作らせてもらえたら、
そのエンブレムは、後世に残るものになるのではないか。
そして、国を超える友好が世界中に広がる、世界をつなぐ象徴になるのではないか。
若い頃 デザインで生計を立て生きていく決意として、一つの目標をスケッチブックに書いていた。
【一つのデザイン(広告)で、戦争が終わるような、世界が平和になるようなものを作る】
未だ到達できていない目標にもしかしたら近づけるかもしれない。
2016年の年末一杯、頭の中や紙の上でそのイメージを作り上げていった。
エンブレムはどのようなカタチにするべきか。
そのヒントは、全て想いやコンセプトの中にある。
何度もコンセプトに立ち帰りながら、彫刻刀で少しづつ削っていくような感覚でフォルムを浮かび上がらせていく。
日本人とモンテネグロ人が力を合わせて立ち上げた友好のクラブ。
いつしか自然とそのフォルムは形をなしていく。
手書きのラフが完成すると
2017年1月1日から4日間をかけて、エンブレムの清書作業を行なった。
エンブレムが完成すると、大迫さんページャさん、立ち上げのメンバーのグループLINEに送った。
するとすぐに「1発で気に入りました。それを使わせて頂きます」という有り難い返事をいただいた。
【今日は、ページャと二人でこのロゴを眺めながら、一杯飲もうと思います!】
その言葉が、とにかく嬉しかった
戦前にはあったかもしれない和の精神、日本人らしさを日本人が、海外に出て取り戻すプロジェクト
子供たちや若い人たちがさらに生き甲斐を持って人生を進めるためのプロジェクト
“世界をつなぐ友好のサッカークラブ“
2017年、FKアドリアの真新しいエンブレムとともにプロジェクトは歩みを始めた。
続く