【吃音に関連するもの】痙攣性発声障害について
痙攣性発声障害とは
痙攣性発声障害(SD=Spasmodic Dysphonia)は、声を出そうとすると、自分の意志と無関係に声帯が異常な動き方をしてしまう状態を指します。
脳の大脳基底核の異常によって起こるジストニアの一種と考えられているが、原因は不明。大きく3つのタイプに分類されます。
○ 内転型:最も患者数が多いタイプ。声を出そうとすると声帯が過度に内側に閉じようとしてしまうため、締めつけられて絞り出すような声になってしまう。
○ 外転型:声を出そうとすると声帯が開いてしまうため、息が漏れるようなかすれ声や失声状態になってしまう。
○ 混合型:上の2つの症状を併せ持つ。
声帯には見た目の異常がなく、医師にも周知が徹底されていないため、「精神的なもの」と診断されることも多く、幾つもの病院にかかり病名にたどり着くのに何年もかかるケースも珍しくありません。
多くの方で、仕事や人間関係・就職活動などに困難を覚え、学校ではいじめの原因になることもあります。また、声が稀に正常に出る時もあることがかえって周囲からの理解を得にくくしている要因にもなっています。
吃音との大きな違いは、歌を歌うとき、斉唱・斉読(一緒に言う・読む)をするときでも、声や言葉が出なくなることです。
(吃音では、歌を歌う時は吃音がみられず、スムーズになります)
痙攣性発声障害と症状が似ている発声障害
痙攣性発声障害の症状によく似た声の病気・障害等に、機能性発声障害、過緊張性発声障害、心因性発声障害、音声振戦症、吃音などがあります。
特に、機能性・過緊張性・心因性などは症状が痙攣性発声障害に酷似していて、かつ、その複数を併発しているケースもあり、音声の専門医にも確定診断を難しくさせている。
○ 機能性発声障害:器質的異常に基づかない(ポリープなど見た目の異常がない)発声障害。過緊張性発声障害・心因性失声・音声衰弱・変声障害などを含む。8割は過緊張性とみられ、不適切な発声方法が習慣化したものが多い。
○ 過緊張性発声障害:咽頭頸部全体が閉まってしまい、絞り出すような声になる。
○ 心因性発声障害:精神的な要因により、息漏れのような声しか出ない。まれに、詰まって絞り出すような声になることもある。
痙攣性発声障害に行われている主な治療法
原因不明のこの病気・障害は、現在の医学では完治は難しく、勝手に「閉じよう」「開こう」とする声帯をいかに閉じ過ぎないよう・開き過ぎないようにするかを意図した対症療法が中心となります。
○ ボツリヌストキシン注射:世界中で最も一般的に行なわれている治療。ボツリヌストキシンを声帯筋に注射することにより、声帯筋が一時的に麻痺・脱力し、痙攣性発声障害の症状が消える。効果は平均2〜3ヶ月と言われているが個人差がある。
○ 甲状披裂筋摘出術:勝手に閉じようとする声帯筋(甲状披裂筋)を手術で摘出する方法。入院して全身麻酔下で行う。
○ 甲状軟骨形成術2型:喉頭の軟骨を縦に切開し、閉じようとする声帯を左右に広げ、チタン製の器具で固定する。局所麻酔下で声を出しながら広げる幅を調節する。
○ 音声訓練:自然にため息をつく時には強い声門閉鎖が起こらず、喉頭の過緊張が起こりにくいということを利用した訓練法などが、言語聴覚士の指導のもとで行われる。