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二酸化炭素からの有用物質生産プラットフォームとしての「国産」水素細菌の可能性

日本農芸化学会2023年度大会シンポジウム「脱炭素社会で活躍する循環型炭素資源からの有用物質生産」(2023.3.14) において、同タイトルで発表しました。要旨は以下の通りです。


水素細菌は水素をエネルギー源としてCO2を固定することにより独立栄養的に生育できる細菌であり、クリーンエネルギーである水素を利用してCO2から有用物質生産を行うことで、CO2の削減によりSDGsへの貢献が近年期待されている。我々の研究室では、分類学的にも生化学的にも特徴的な3種の水素細菌Hydrogenobacter thermophilus TK-6、Hydrogenophilus thermoluteolus TH-1およびHydogenovibrio marinus MH-110を国内から単離し、長年にわたりその解析を行ってきた。TK-6は生育至適温度が70℃の絶対独立栄養性細菌であり、TCAサイクルの逆反応である還元的TCAサイクルによりCO2固定を行う。TH-1は生育至適温度が52℃でカルビンサイクルによりCO2固定を行う通性独立栄養細菌であり、これまで知られているすべての生物の中で独立栄養条件での増殖速度が最も高いという特徴がある。MH-110は生育至適温度が37℃の絶対独立栄養性細菌であり、カルビンサイクルにおいてCO2固定を行う鍵酵素であるルビスコを3種類持ち、広範なCO2濃度に適応してCO2固定を行うことができる。特に低CO2条件ではカルボキシソームと呼ばれる細胞内小器官を形成してCO2濃縮を行うという特徴がある。これら細菌はいずれも増殖が速く、水素細菌としては例外的に酸素耐性が高いため、産業利用に適していることが期待できる。我々はこれら3種の菌株を水素細菌利活用の標準菌として位置付け、全ゲノム解読を行い、生化学的、分子生物学的特徴についての情報基盤整備、遺伝子組換え法の開発を進めている。本発表では、これまでの研究成果を踏まえ、3種の水素細菌それぞれの特徴とその応用可能性について述べる。




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