転職が許容される社会になるべき
最近は転職サイトやエージェントも増えており、昔に比べれば転職活動は一般的になっている。でもまだまだ自分の勤める日系の会社では転職してくる人は少なく、多くは新入社員からの生え抜きばっかりだ。
実際に総務省の労働力調査を見ると、2021年の転職希望者数は889万人で1990年は484万人と比較して、2倍程度まで増えている。一方で実際に転職した転職者数はどうなっているかというと、1990年で200万人で、徐々に増えているものの、2000年以降は300万人程度で頭打ちになっている。つまり、転職希望者数は増えているのに、転職者数は増えていない状況である。
なぜ転職がもっと許容される社会であるべきか、考える根拠は以下の通りである。
マクロ経済的な視点:雇用の流動性が上がれば、条件のよい会社に数年おきに転職する人が増える。それによって、労働市場が欧米並みに活発に賃金も上がる。賃金が上がれば、消費が活発になり、景気もよくなり、税収も増える。
労働者の視点:はじめに就職した会社や仕事が合わなかった場合に、転職することが容易であれば、別の道に進むことができる。電通で起きたような過酷な労働環境で働いた末に、自殺してしまうような人を減らすことができる。
では転職が許容されない原因はなんだろうか。
一番大きいのは、正社員という日本独自の雇用形態が通例になってしまっているからだと思う。正社員の特徴としては、「終身雇用」「年功序列」が挙げられる。終身雇用と年功序列は多くの会社ですでに機能しなくなっており、将来的には崩壊する可能性が極めて高い。それでもまだ日本には強い解雇規制があり、解雇する客観的理由がないと正社員を解雇することが難しい。そんな状況ではあるが、それでもまだまだ正社員というのは派遣社員やアルバイトと比べると恵まれた「既得権益」といえる。それは、解雇されにくさや給与の高さだけでなく、福利厚生の充実度、社会的な信用度など多岐にわたる。
そのため、新卒で正社員という恵まれたポジションを手に入れると、多くの人はそのポジションを手放さないことを目的に仕事に励む。その結果、少しこの仕事違うかもと思っても、転職に至らず、だらだら同じ会社に居座り続け、甘い蜜を吸い続ける。転職するよりも同じ会社でそこそこ安定な生活ができればよいという人が多数派になってしまう。それによって、労働市場が固定化する事態が引き起こされていると思う。
なので、日本も欧米と同じように、正社員という既得権益がなくなり、役職や職能によって、給与が決まるジョブ型雇用がもっと浸透すれば、労働市場が活発になり、給与も上がり、経済的な発展が実現する。でもそれには正社員という既得権益にどっぷりつかってしまっている多数派の日本人の既得権益を奪うことが必要である。たから、実現するのが難しい。答えはわかっていても抵抗勢力が強すぎるから、日本はやっぱり衰退してしまうんだろうなぁ。