吃音を治そうとしてはいけない
記事を読むメリット
この記事は吃音の子供を抱える親御さん向けに書いています。私自身吃音を持ちながら社会人として働き、2児の子供を育てています。子供はまだ小さいですが、吃音の症状が出ています。自分の吃音も治っておらず、子供の吃音も結構重そうですが、なんとかなると思っています。吃音の子供をもつ親御さんは、この記事を読むことで、吃音とはなにか、子供の吃音とどう向き合っていくべきかわかるようになります。
吃音とは
吃音症は身体的な障害がないのにも関わらず、ことばをスムーズに話すことができない症状です。話そうとするときに、最初の音声が連続して発せられたり(連発)、特定の言葉をしゃべろうとするときに声が出ない(難発)の症状があります。発達障害のひとつであり、基準に当てはまれば「精神障がい者保健福祉手帳」が交付されることがあります。また、吃音は国によらず、人口の1%で見られると考えられており、日本の場合は、約120万人が吃音症状があると推定されています。
また、吃音に対して有効な治療方法は現在も確立されておりません。
私の吃音遍歴
親によると3歳くらいから吃音の症状が出ていたそうです。自分で吃音を自覚するようになったのは、小学3年生の頃だ。日直の仕事として、クラスメイト全員の名前を呼ぼうとしたときに、どもってしまったことを今でも覚えています。それから吃音という言葉は知らなかったけど、自分の喋り方が他の子と違っているということを認識するようになります。そこから、中学校、高校生と上がるに連れて吃音という言葉は知らなかったが、いかにどもりが出ないようにすることに意識を集中して話すようになりました。その過程でどもりが出にくくなるような呼吸法をインターネットで調べて自室で練習に励んでいたこともありました。けど、効果はありませんでした。正確に言えば、どもりが出ないような話し方をすることはできましたが、健常者のような普通のしゃべりは呼吸法の延長線上にはありませんでした。私は普通に話せるようになりたかったのであって、どもらない話し方を習得したいわけではありませんでした。多くの吃音を克服したい方も同じではないでしょうか。だから、吃らない話し方を普段の話し方に変えようとはしませんでした。
程度の差はあれど、吃音の悩みを抱えている人は同じような体験があるのではないでしょうか。
吃音者を取り巻く問題点
障害という認識が広まっていない
吃音とは上記のとおり、発達障害のひとつではありますが、当事者やその家族含めて発達障害と認識している人はほとんどいないと思います。原因として、吃音によって障害者手帳を交付された事例が少ないことも考えられます。その背景には吃音症状は人によって、症状は様々で吃音を正しく診断できる医師が不足していることも問題です。
私自身幼少期から吃音がありますが、しゃべるのがちょっと変だから直したほうがよいと言われたことはあっても、発達障害だから治さななくてはよいと言われたことは一度もありません。おそらく、読者のお子さんも同じような状況ではないでしょうか。また、私が吃音が発達障害の一つであると知ったのは大人になって、インターネットや書籍で吃音のことを調べるようになってからでした。多くの子供は漠然としゃべりにくいなと感じることはあっても、正しい情報を親や学校から得られていない現状があります。
周りに吃音を相談できない
私自身学生時代は吃音であることを自覚していたが、周りには吃音がある友人がほとんどいなかったこともあって、自分の吃音を他人に相談することができませんでした。相談できなかった理由としては、どもったときに友人から笑われた経験が大きかったです。笑われたことによって、どもってはいけないんだという意識が植え付けられて、真面目な子ほど吃音をどうにかしようと自分で抱え込む傾向があります。自分で抱え込んでしまうと、親がいない場所でひたすら苦手な言葉を言う努力をする子供は多いです。
親は幼い頃からこの子のしゃべり方はなんか違うぞと気づいて、小学生時代に「ことばの教室」に通わせてくれていた記憶があります。ことばの教室というのは言語障害がある子供の支援を行う指導教室のことで、自治体ごとに設置されています。ただ、ことばの教室でどもりにくくなるような発声方法を練習をした記憶はなく、PCゲームをしていた記憶しかありませんが(笑)。
なお、吃音に特化した「言友会」というセルフケアグループが日本各地にあります。
ロールモデルとなる社会人との接点がなく、将来を描きにくい
親御さんの頭を一番悩ませているのは、将来子供がつける仕事はあるのか、自立できるのかということではないでしょうか。
私も学生時代、吃音という理由で人前でしゃべる営業職は難しいだろうなと感じて、理系の大学に進みました(現在は医療機器メーカーで技術系の仕事をしています)。将来を考える10代の時間に、吃音を抱える社会人との接点が全くなかったのは振り返ってみて大きなマイナスだったなと感じています。ロールモデルとなる社会人との接点がないから、私のように消去法で職業を選択せざるをえかった人がほとんどではないでしょうか。そして、就職するためには吃音者にとって非常に不利な面接試験が避けては通れません。私自身就職活動には苦労しましたが、どもるのは緊張しているからだとごまかしてなんとか突破しました。重度の吃音をもつ人にとっては、どもっているだけで不合格にされているケースも多いです。
吃音にばかりフォーカスしてしまって、長所に目が生きにくい
自分自身の経験を踏まえても、うまくいかないときはすべて吃音のせいだと思い込む傾向があります。そして、どもらないように意識すればするほどどもってしまうという悪循環に陥っていました。
でも吃音があろうがなかろうが、その子には長所があります。長所に目を向けて、最大限長所を伸ばして自信をもたせてあげることが大切です。吃音をどうにかしてあげたいという親心はもちろんわかりますが、吃音という障害に対して治療方法を見つけるのは医者の仕事です。
吃音を治そうとしてはいけない
吃音を治すのは医者の仕事
インターネットで検索すると、吃音を克服できました!という人が見つかると思います。その人が吃音を克服できたのは事実かもしれませんし、お子さんに同じ方法を試してみると効果が出る可能性もあるかもしれません。でもはっきりしているのは、吃音に対して有効な治療方法が確率されていないという事実です。特殊な訓練を長期間積めばもしかすると吃音を克服できるかもしれません。でもおそらく効果はありません。私も高額な民間療法を試した経験がありますが、少なくとも私には効果はありませんでした。
彼らは吃音を治したいというよりはお金を稼ぎたいんです。吃音というのは症状が当人の体調や周りの環境によって、症状が大きく変わります。だからこそ、本当は効果がまったくなかったとしても、民間療法によって一時的に症状がよくなるように見えることもあります。民間療法というのはあくまで対症療法に過ぎず、病気の根本を治す治療ではありません。ビジネス視点で考えると、永遠に治らない病気をもっている美味しいお客さんでもあるんです。だからこそ民間療法に頼ってはいけません。
親が子供にするべきことは?
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