新曲レポート「春ヲ告ゲル、花ノ記憶」
2/23に投稿したボカロ音楽新曲、「春ヲ告ゲル、花ノ記憶」のレポートです。
曲制作の概要
ニコニコ動画の公式オンラインイベント「ボカコレ2024冬」の参加曲です。「鬼っ子ハンターついなちゃん」の歌唱ソフト「SynthesizerV ついなちゃん」(通称「ついなちゃん」)の歌唱と、鳴花ヒメ・鳴花ミコトによる合いの手をフィーチャーした和風ロックです。
ついなちゃんは、鬼退治を生業とする「方相氏(ほうそうし)」の少女という設定を持ったキャラクターです。方相氏は紀元前の中国に祖を発する伝統的な職業ですが、日本においても飛鳥時代から方相氏の活躍の記録が残り、日本各地の節分のお祭りや儀式・古代の神道とも関連の強い民族的な色彩を持っています。
このついなちゃんの和の設定を生かし、また同じく菅原道真を祀った天満宮の「梅の精霊」というキャラクターである鳴花の2人を絡めた、春の和風曲を作ろうという発想から制作がスタートしました。
課題としていたこと
今回が初の和風曲となりました。ボカロ音楽においては「千本桜」「神のまにまに」など、挙げ始めたらキリがないくらい有名和風ソングが存在します。その中で、ありきたりな和風曲ではなく、「みるくかふぇの和風曲」として何を打ち出せば良いのかというのが、今回の最大の課題となりました。
まず一番前面に来るがの激しいサウンドを持つロックやメタル。そして、僕の作る作品が持つメロディの美しさや儚さ。そういった要素を盛り込むことが、みるくかふぇらしい作品を作る上で不可欠と考えました。
できたこと・工夫したこと
曲は春を連想させる雅な和風曲としてスタートしますが、後半サビに入るとエモいメロディとオケによる激しいサウンドに切り替わるように構成しました。
曲のスピード感も前半のゆっくりした感じから、後半に倍速化することで単調になりがちな和風曲に意外性を持ち込めたと思います。その分、DAWソフトでの打ち込み作業も、非常にややこしく大変でした(笑)。
Synthesizer Vのボーカルということで、VOCALOIDでの歌唱以上に「音を伸ばす・伸ばさない」アーティキュレーションに気を配りました。人っぽく歌う以上、ちょっとした部分が妙に雑な歌唱に感じてしまう点があるのかもしれません。
メロディ作りにおいても、歯切れの良いスタッカートフレーズを多用するなどしています。オケの側のピチカートや箏など弦を弾く音との相乗効果で、春らしい明るさを演出できたと思います。
メロディにおいては、和音階を使うかどうかについて非常に悩みました。ペンタトニックで構成される音階は単調になりがちでもあるので、エッセンスとして意識しつつも和音階に縛られずにメロディを構成しています。
これは以前に、「紲星あかりが転生したら、そこはインドだった!」でインド音階をどの程度曲に盛り込むかで悩んだ際に出したものと似た結論になりました。
反省点は今のところはありません(笑)。強いて言えば、SynthesizerVとVOCALOIDの歌唱を混ぜることに対する、歌唱上の違和感を感じたことくらいでしょうか。今回は両者の役割やキャラクターをきちっと分けたことで、それほど問題にはなりませんでした。ただ、デュエットとかは難しいかなとも感じています。
ついなちゃんの周りのキャラクターは、和の世界観を強く持っています。この特徴を活かした曲は今後も書いていきたいですね。
以上です。
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