見出し画像

ボカロアルバムのサブスク配信時に権利関係で気をつけていること

同人作品であるボカロアルバムをAppleMusicやSpotify、AmazonやMoraなどでサブスク配信しています。

配信に際しては、ディストリビューター(配信手続きの代行業者)やボカロキャラの権利元によって権利関係の対応が色々異なります。それぞれに対応方法が変わってくるので、どうしたらいいのか分かりにくいと思います。

今回の記事では、僕がディストリビューターとしてTUNECORE Japanを利用して、v_flower及び紲星あかりのアルバムを配信する際に権利関係で気をつけていることを紹介します。なお、他の合成音声キャラクターと権利元の組み合わせの場合は、事情が異なる可能性が高い点はご容赦ください。


アマチュアのボカロアルバム配信は許諾が必要か?

合成音声キャラクターの権利元によって判断が異なります。「権利元」とはVOCALOIDの権利元のヤマハやCeVIOの権利元のCeVIOプロジェクトではなく、各合成音声キャラクターの権利元です。

合成音声キャラクターを利用した際の配信について、各権利元で2次利用のためのキャラクター利用許諾のガイドラインを出しています。Webで確認できるものが多いので、まずはそこを確認してみてください。

v_flowerの場合

ガイノイド - キャラクター利用に関するガイドライン

ガイノイドのガイドラインページ

v_flowerの場合は「当社の許諾が必要なケース」の中に、「インターネット音楽配信サービスや電子書籍販売サービス等を利用し、創作物のデータを販売する場合(当社が特別に許諾しているサービスにおける利用はこの限りではありません)」の一文があります。この中の「インターネット音楽配信サービス」が今回のケースに該当します。

また僕の利用しているディストリビューター(TUNECORE Japan)は、「当社が特別に許諾しているサービス」に該当しないため、個別にガイノイドに監修と許諾をお願いする必要があります。

以上の2つの事情のため、僕がv_flowerに歌わせたアルバムを配信する場合は、毎回権利元のガイノイドへの問い合わせが必要で、ディストリビューターには権利元より許諾を受けた旨のエビデンスを提出しています。

紲星あかりの場合

VOCALOMAKETS - キャラクター使用ガイドライン

VOCALOMARKETSのガイドラインページ

一方で紲星あかりの場合は、「Q.2-03」に「本ガイドラインの範囲内での本キャラクターの名称および二次創作イラスト、公式3Dモデルを使用した楽曲および楽曲に関する画像等を一般流通にて販売および配信するには申請が必要になります。」とあります。つまり配信で「紲星あかり」の名称を使用したり画像を使用したりする場合は申請が必要、と認識しています。

ただし、別文にて「当社が提携している企業(下記参照)からの販売および配信につきましては、個人で当社に申請をする必要はありません。その場合には提携企業の申請方法等に従ってください。」という但し書きもあります。僕の利用しているTUNECORE Japanはこの「提携している企業」に該当します。

実際にTUNECORE Japan側では、配信登録の際に提携している権利元への申請インターフェースを用意していますので、僕はこれを利用しました。利用の際は利用キャラクターの一覧から「紲星あかり」を選択するだけです。

なお、紲星あかりのようにパッケージの発売元(ボカロ版はAHS)と権利元(VOCALOMARKETS)が異なるケースもありますので、注意してください。

その他のライブラリやソフトウェア

他のキャラクターについては詳しく知らないため、各権利元に問い合わせてください。また、ボカロだけでなくCeVIOやVoiSona、SynthsizerV、UTAU、VOICELOID、A.I.VOICEなどの合成音声についても、権利元によって考えが異なります。まずは公式サイト・もしくは問い合わせフォーム等から権利元の提示している条件を確認してください。

また、曲中で合成音声以外にも人の声のサンプルライブラリやループ素材、効果音などの素材利用などをしている場合、許諾確認が必要な場合があります。また、最初から商用利用のためのオプション料金が設定されている場合もあります。こちらも各メーカーの許諾条件を確認してください。

アルバムの制作に他の方が関わっている場合の注意点

ジャケットに使用するイラスト、作詞、演奏などで他の方に関わってもらっている場合があります。依頼時に配信利用の可能性がある旨も併せて相談する・配信を決めた際に相談するなどして、配信登録前に権利/支払い関係についてどのような条件にするかの合意を得てください。

アルバムジャケットの場合、僕は最初の依頼時に「配信も行う」旨を含めて依頼額の見積もりを出してもらうようにしています。僕はアルバムに関わる活動全般での使用権利額として配信で利用する際の額も含める条件で引き受けてもらうことが多いです。依頼先によってはレベニューシェア(利益額に応じた分配)の条件を出してくる場合もあるかもしれません。

[余談1]ディストリビューターの選定時に気をつけていること

ディストリビューターによってサービス内容が異なります。差異が目立つ点はいくつかあります。

  • 利用できる配信サービスの違い

  • ロスレス/ハイレゾ配信対応か否か

  • 登録時の手数料の有無、売上の際の手数料徴収の有無

  • 合成音声関連での許諾及びライセンス使用料支払い代行があるかどうか

配信先は、国内サービスだけでなく、海外サービス(業者によっては中国国内など通常は登録窓口がない国のサービスと提携している場合もあります)、TikTokなどの動画用BGM素材としての提供、YouTube動画などでの収益化など、登録曲をどのようなサービスに配信するかが異なります。どこにどんな形で提供したいかによって選ぶ業者が変わってきます。

ディストリビューターによっては、配信先に圧縮音源でデータを提供する場合があります。ロスレス(CD音質)音源やハイレゾ(高ビットレート)音源を配信したい場合は、業者を慎重に選定しましょう。

登録時の手数料は有料の場合と、無料の場合があります。無料の場合は配信収益からディストリビューターの取り分を天引きする場合が多いようです。また無料と引き換えに無期限の契約(こちらからは解約できない)を条件にしている業者もありますので、よく確認してください。有料の場合は期間が決まっており、更新時に更新手数料が必要になる場合があります。

合成音声関連での許諾サービスは、上記の紲星あかりの例などです。提携している権利元に合成音声キャラクターライセンス使用料を支払う(これも配信収益から天引きされるケースが多い)のと許諾依頼を同時に行ってくれる業者もあります。

それがないディストリビューターの場合や、そもそも提携を行なっていない合成音声ライブラリの場合は、権利元とライセンス使用料について直接やり取りする必要が発生する例もありますので、許諾をもらう際に確認をしておいた方が良いでしょう。

[余談2]付加サービス

話題は変わりますが、TUNECORE Japanで配信するとアルバムごとに配信先のリンク一覧のまとめページのURLを発行してもらえます。

僕の場合は下記のような感じで、Twitterのフォロワーさんの利用しているサービスに適した案内ができるので便利です。

Bouquet feat. flower

Bouquetの配信一覧例

流星到来! feat. 紲星あかり

流星到来!の配信先一覧例

今回は、権利やお金が関わる話でまたボカロ固有の情報も少ないため、僕の例を記事にしました。完全に全ての条件が同じというわけにはいかないと思いますが、参考にしていただければ幸いです。

執筆者プロフィール


いいなと思ったら応援しよう!