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ノベル版「Parallel World」- [第4章] Parallel World
原作: みるくかふぇ、設定協力: ひぃ熊、キャラクターデザイン&イラスト: 水野色
曲名「Parallel World」、作詞: ひぃ熊、作曲: みるくかふぇ、ボーカロイドアレンジメント: 甲楽わん
■ストーリー
「KAKO……さん?」
人の気配を感じためぐみが歌を中断し、顔を上げるとそこには見慣れたKAKOの姿があった。
いや、その姿に違和感を感じたから、めぐみは疑問系で呼びかけたのだ。
「GUMI……さん?」
KAKOに似た目の前の少女はそう呟く。「やはりKAKOさんではないのか」、めぐみはほっとしたような、少しがっかりしたような表情を浮かべる。でもGUMIとは?
「あなたはGUMIさんではないの……? でもまさか……」
目の前の少女も同じ違和感を感じたようで、めぐみをまじまじと見つめる。「ううっ、そんなにじっと見ないで……」、めぐみは内心でそう思いながら目を逸らす。
咄嗟にその少女はめぐみの手を掴んで、霧の中へと走り出そうとする。めぐみの手からオレンジの傘がこぼれ落ちる。
「あなたなら GUMIさんを助け出して、私たちの世界を解放できるかもしれない。お願い、手を貸して!」
「えっ!?」
話が分からない、GUMIさんを助ける? 私たちの世界の解放?
「ちょ、ちょっと、何を言って……。お願い、手を離して」
めぐみの叫びにはっと気がついたその少女は、めぐみの手を離す。
「ごめんなさい、突然の無礼大変に失礼しました。私の名前はクララ、首都ミューズにてレジスタンス活動を展開している『Day Break Shower』の活動員です。今から事情を説明します」
クララと名乗るその少女はめぐみの目を見つめ、話し始める。
「私達は、あなたの世界とは別の場所に存在する並行世界に住んでいます。どうやらこの世界は私たちの世界と似ているようで、どこかの時点で違った歩みを始めたようです。私達の世界では歌が人の心を救ったり落ち込ませる力があり、近年はGUMIさんという歌姫が象徴として人々の心を癒していました」
めぐみは必死に必死に話を理解しようとする。並行世界? 歌に力がある? 理解し難い話だ。でも、KAKOにそっくりなこの子が嘘をついているようには思えなかった。
「あな……クララさんが救ってほしいと言っているGUMIさんはどんな方なのですか?」
「私は貧民街の出身で、子供の頃は希望の見えない不安な毎日を過ごしていたの。そんな折に貧民街を訪れたGUMIさんは、私に歌で希望を授けてくれた。」
クララは胸に手を当てて話を続ける。
「その後一念発起した私は得意なバスケで市のちょっとした名門チームにスカウトされて、そこで色んな人と知り合い、援助によって上の学校に通う事もできるようになったの。あの人の歌は光。そんな風にGUMIさんに救われた人はたくさんいて、彼女の歌を拠り所に私達の世界は前へと進んでいた」
GUMIとの出会いを明るく話すクララの表情が、ふと曇りだす。
「GUMIさんには長年、彼女に曲を提供する『音楽王』と呼ばれるパートナーがいたの。すらりとして温和そうな青年だったわ。だけど昨年の春に彼は豹変した。突然『不幸の音楽』を作曲して世界に流し始めた。音楽は流行病のように次々と伝播し、人々は自分では何も考えられない・希望を持てない人達に変わり、世界は不幸に染まったわ」
クララは再びめぐみの目を見据えて言う。
「GUMIさんはそんな音楽王……、いや今は『闇の音楽王』ね。抵抗をしたのだけど、話し合いに呼び出された場で騙し打ちをされて、首都ミューズの高い塔に幽閉されてしまったわ。私達はGUMIさんを救出し、あるはずだった当たり前の日常を取り戻すためにレジスタンスとして集まったの。お願い、手を貸して!」
めぐみはキョトンとしてしまった。
「クララさんの事情は分かったわ。でも、どうして私を誘おうとするの? 私は何の力もないわ」
そう答えるめぐみに、クララは冷静に答えを返す。
「あなた、そう言えば名前を伺っていなかったわね」
「めぐみです」
「そう、めぐみ……呼び捨てでいいかな? 私の事も呼び捨てで呼んで。私はレジスタンスの協力者を探すために、外の世界とつながる装置を使って霧を起こしていたの。その霧の中からめぐみの声が聞こえた。私、めぐみを見て驚いたの。めぐみの歌声と姿は、GUMIさんと瓜二つだったから」
「えっ?」
めぐみの目が大きく開く。私と歌姫が瓜二つ? 人前で歌を歌えない私が?
「だからめぐみが救出作戦に協力してくれれば、きっとGUMIさんを救い出せる。まだ私の直感でしかないけど。だからお願い、協力して」
めぐみの視線は、困惑で泳ぎ始める。どうにか口から出た言葉が、めぐみの迷いをクララへと伝える。
「私、世界を救うなんてできない。だって人前で歌を歌う事だってできないのに!」
「私だって何もできないわ。でも、何もせずにはいられないの!」
めぐみはクララの顔を見返す。真剣な顔だ。もし憧れのKAKOにこんな真剣な顔で「めぐみちゃんに歌ってほしい」と言われたら、私はどうするのだろうか。
めぐみは一歩踏み出し、クララの手を握って震える声で想いを伝える。
「他人事とは思えないわ。何もできないかもしれないけど、とにかくあなた達の街・ミューズへ連れて行って。何が起きているのか、この目で見たいの」
めぐみとクララは手を取り合った。やがて2人は霧の中へと消えていく。公園の道に小さく咲いたオレンジの傘を残して。
■キャラクター紹介
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※この作品はみるくかふぇが制作した音楽アルバム「Parallel World」の原作ストーリーです。アルバム「Parallel World」はSound Cloudでの無償公開(ストリーミング視聴のみ)のほか、サブスクリプションサービス各社での配信、BOOTHでのダウンロード販売/CD通販を行っています。
Parallel Worldアルバム情報: https://note.com/hiroys_milkcafe/n/na13b39e4b322
※この作品は二次創作です。作中に登場する人物「GUMI」は株式会社インターネットが販売する製品「メグッポイド」の愛称ですが、販売元は当作品とは無関係です。また「メグッポイド」の商標・キャラクター等は販売元に権利があります。
ノベル版「Parallel World」目次
https://note.com/hiroys_milkcafe/m/m09bbd902a64d