【開催報告】「IPCC主執筆者が語る気候変動イノベーションの最前線:未来を拓くスタートアップの可能性」パネルセッション
12月3日、CIC Tokyoで開催された環境エネルギーイノベーションコミュニティ「LEEP SUMMIT 2024」にて、「IPCC主執筆者が語る気候変動イノベーションの最前線」セッションを実施し、モデレータを務めましたのでご報告します。CIC TokyoとU3 Innovationsが主催する同コミュニティは、起業家、投資家、大企業、官公庁や自治体、研究者、学生らが集う日本最大級の環境エネルギー分野のコミュニティであり、今回は現地およびオンラインで計468名が参加する盛況なイベントとなりました。
本セッションでは、IPCC第6次評価報告書(2021年~2023年公表)の主執筆者をお迎えし、最新の気候科学や技術開発に関する知見を共有いただきました。登壇者は東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授(WG1・第1章 構成、背景、手法)、杉山昌広教授(WG3・第12章 部門を超える視点)、同大学工学系研究科技術経営戦略学専攻の田中謙司教授(WG3・第16章 イノベーション、技術開発および移転)、および慶應義塾大学の森田香菜子准教授(WG3・第15章 投資とファイナンス)です。
セッションでは、グローバルな気候科学の最新知見から、日本のGX(グリーントランスフォーメーション)や脱炭素社会への展望、国内スタートアップエコシステムへの提言まで多岐にわたるテーマが取り上げられました。IPCC第6次評価報告書では、人間活動による気候変動の影響が「疑う余地がない」と明言されており、世界の平均気温上昇を1.5度以内に抑えるための迅速な行動の重要性が強調されています。この文脈の中で、気候変動対策におけるイノベーションの重要性や、スタートアップの貢献可能性について活発な議論が展開されました。
江守教授は、気候変動の科学的理解を紹介しつつ、技術開発と社会実装におけるELSI(倫理的・法的・社会的課題)やRRI(責任ある研究とイノベーション)に触れながら、気候イノベーションには多角的な検討が必要と述べました。田中教授は、脱炭素化において分散型エネルギーシステムへの移行が鍵であり、特にデジタル化の役割が重要であると強調され、さらに大学発の起業が増加している現状についても言及されました。MIT出身の杉山教授は、技術イノベーションを生むスタートアップの増加が必要であり、それを促進する交流の場の拡充が指摘されました。森田准教授からは、気候変動や生物多様性に関連するファイナンスの役割が紹介されるとともに、スタートアップには過去の環境研究の蓄積を活用するように助言頂きました。セッションを通じて、環境エネルギーイノベーションエコシステムへの期待が高まるとともに、若い世代の参画への期待も述べられました。
今後もアカデミアの最前線の知見とスタートアップエコシステムを結びつける場を提供し、気候変動対策における科学とイノベーションの架け橋となる対話を続けていければと考えています。このような取り組みを通じ、環境エネルギー分野における新たな価値創造を共に目指していきます。どうぞよろしくお願いします。