システムに沿って試合を見てみよう。~第14節 松本山雅FCvs清水エスパルス

1.始めに

システムというと難しく感じる方もいるかもしれません。システムとは要は選手の配置の目安。なので複雑に考えずファンにとっては試合を見る時の目安、ガイドにみたいに考えてもいいかもしれません。

もちろん、サッカーの試合は色んな要素が複雑に絡みあっているのでシステムの理屈通りにはなりません。でも何となくでも試合の目安みたいなものが見えていた方が理解しやすくなるのではないでしょうか。

というわけで今回は両チームのシステムに注目して松本戦をザクッと振り返ってみたいと思います。

試合の局面を、「自分達がボールを持っている局面」と「相手がボールを持っている局面」の2つの分けてそれぞれの局面でお互いがどういう振る舞いをしているか見ていきます。

2.清水がボールを保持している局面

DAZNで試合を見ていると開始前にシステムに沿って選手紹介してくれます。僕は試合が始まる前に、それをノートに書いて両チームのシステムを噛み合わせてみたりもしています。(僕のことはどうでもいいですね。はい。)

さてこの試合は、清水が4-2-3-1、松本が3-4-2-1。このシステムの噛み合わせで図にしてみます。清水が上から下へ攻めていくと考えてください。

当然、試合中に選手は動くのでこの通りにはなりません。でもどこを見るかの基準があればいいので、とりあえずこの噛み合わせからフリーになりそうな選手や場所を探します。

まず①の清水のゴール前。清水のディフェンスラインが4人で松本の前線は3人。松本が前からプレスに行っても清水の選手が1人フリー。そこからボールを運ばれそうです。

次に②のサイド。1vs1だけど位置がずれています。このままだと金子選手や中村選手がフリーになって3バックの脇を突かれそうです。

こんな感じでフリーになりそうな場所のめどをつけました。そうしたら次は試合中に、その場所でどう振る舞っているかを見ていきます。

松本はどう振る舞っていたかというと、シャドウの杉本、前田両選手を中盤サイドに回して下の図のように5-4-1という配置に変化をしていました。

これで中盤と後ろは数的優位。しかもサイドは誰が誰を見るか守備の基準点が明確になっています。

これでシステムの噛み合わせ的には、清水は攻めあぐねる形です。そこで今度は清水が少し形を変えていきます。

清水はセンターバックソッコ選手や二見選手が左右に開いたり、ボランチの六平選手がサイドに出て、松本のシャドウの前に立つような位置取りをするようになりました。

これで松本は明確になっていた守備の基準が再びあいまいになってしまいました。とは言え中盤以降には運ばせたくない松本。サイドに出てくる選手(図で言うと二見、六平)にはシャドウが対応。エウソン選手、松原選手にはウイングバックがという守備基準を取ることが多くなります。

ウイングバックが前に出てしまうと金子選手や中村選手を見る選手がいなくなり、彼らが相手の3バックの脇を突きやすくなっていきます。

76分にはドウグラス選手がペナルティエリア内で倒されPKを獲得。この場面も仕組みは同じです。

二見選手がサイドに動くことで本来(前田-松原)、(田中-中村)だったサイドの守備基準がずれて前田選手が二見選手を見る形になりました。松原選手をウイングバックの田中選手が見るので、中村選手がフリー。それはまずいと3バックの右の今井選手が中村選手について行き今井選手がいた場所がフリースペースになりました。

そこにドウグラス選手が入っていったことでキーパーと1対1になる。という構図でした。

5-4-1で中央を塞ぎ、サイドの守備を明確にした守る松本。それに対してサイドからずれを生じさせた清水。そして最終的にはディフェンスラインに出来た穴を突く。これが清水が保持した時の流れになっていました。

3.松本が保持している局面

松本が保持する局面でも同様に基本システムを噛み合わせて、フリーになりそうな選手や場所を予想してみます。

まず①の松本のゴール前。3バックの左右がフリーになりボールを運べそうです。

②のサイドや③の清水ゴール前。人数はいるけど位置がずれています。なので誰が誰をマークするか曖昧になりそうです。

ではそれに対して清水はどう振る舞っていたのか。清水は松本とは逆に前から数的不利の場所を埋めていきました。

こんな感じです。

清水はサイドにボールを誘導してその周囲のパスコースを全て塞いでいきます。さらに北川選手とサイドハーフの選手が後ろへのパスコースを消しながら(カバーシャドウの動き)ボールを持った選手にプレッシャーをかけます。そしてこのサイドの網の中で奪ったり、相手が苦し紛れに蹴ったボールを回収するという形です。

松本の方はというと、清水の前プレを飛び越えてしまえとレアンドロペレイラ選手へのロングボール。そして、その裏を前田選手が狙います。清水はレアンドロペレイラ選手を二見選手がマーク。その裏はソッコ選手がカバー。後ろから直接蹴られる分には人数が揃っているので問題なし。

問題となったのは前のプレスがずれた時。特に北川選手の守備がずれると、前ではめこみたい清水はボランチの選手が前に出てきてプレスをかけにいきます。すると中盤にボランチが一人しかいない状態になり縦パスをスパンと通されてしまいます。基本的に清水は前へのプレスを回避されたら後ろは自分の前方へ根性のマンツーマンでついていきます(下の図)。

マンツーマンでついていくとシステムの噛み合わせ上、清水ゴール前で松本のシャドウが一人浮いている形になり、そこからピンチになりやすいという構図です。

42分に六平選手が杉本選手を倒してイエローカードをもらったのはこの構図通りのプレーでした。また64分にPKを与えた場面。きっかけはボールを奪われたところからでしたが、強いマンツーマンの意識でセンターバックが引っ張られる、間のスペースが開いてそこをボランチが後追いで追いかけるのでファールになりやすいという仕組みが原因になっていました。

4.最後に

以上、システムの噛み合わせに沿って試合の流れを追ってみました。始めにも書いたようにシステムの理屈通りに試合が進むわけではありません。しかし、サッカーは11人と11人で行われるスポーツ。誰がどこでどういうプレーをするかは間違いなく試合に影響を及ぼします。試合の開始前に注目ポイントを考えたり、試合後に振り返る時、システムの噛み合わせに注目してみるのも楽しいのではないかと思います。



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