ベガルタ仙台戦2失点目より。ヨンソン采配についての考察
ベガルタ仙台戦では終了間際の失点により敗戦。大変悔しい結果となりました。84分に選手交代とシステム変更があった後の失点だったため、監督の采配ミスではないかという声も聞こえました。
果たしての2失点目はヨンソン監督の采配ミスだったのか。
その采配について、システム変更のあった84分の前と後、そして失点場面と3つの時間帯に分けて観察し、その内容から考察してみたいと思います。
1. 84分前までの状況
84分前までのマッチアップは下の図の通り。
清水のシステムは4-4-2、仙台は3-4-3。ミスマッチが起きており、仙台の選手が清水の守備ブロックの間にポジションしている状態です。
これに対して清水の守備は、前半はしっかりパスコースを切りながらブロックを作ることで、後半は前からプレスをかけることで仙台の攻撃に対応していました。
しかし時間の経過とともに疲労の影響(清水は中2日での試合)が出始め、ポジションの修正の遅れやボールへの寄せが甘くなってきます。そのためミスマッチがあらわになり、仙台にボールの前進を許すようになります。
特に交代で入ってフレッシュな状態のジャメーリと中野のいる右サイドではそれが顕著になり金子と飯田は守備で後手を踏むことが多くなっていました。
2. 84分のシステム変更の意味
(1)守備面からの考察。
清水は金子から角田に選手交代。角田をDFラインに入れて、システムを4-4-2から5-4-1に変更します。
選手交代後のマッチアップは以下の通り。
マッチアップが完全に噛み合っています。これで守備時にポジションのずれがなくなりました。
パスコースを消しながらボールに寄せる、周囲の選手がスライドしてポジションを修正するといった複雑な思考をしながらのプレーをする必要が無くなります。それにより守備での役割が明確になりました。
全体的にマンマークに近い守備になったわけですが、唯一右サイドの中野に対しては、受け渡しで見ているような守備でした。
中盤エリアを北川が見て、深い位置まで侵入してきたら飯田が見る形です。
(2)攻撃面からの考察。
システムが噛み合ったことで守備ブロックの中で「ずれ」が出来づらくなりました。それにより相手のボールの前進をストップして、奪って攻め返せる場面が増えてきました。
攻撃時のポイントは全体的にマッチアップが噛み合っているということは、清水がボールを持った時も1対1の状況が生まれているということです。
87分のカウンターを見てみましょう。
DFラインで奪ってカウンター。
北川にボールが出ると、前方にスペースがある状態での1対1です。88分にもドウグラスに通れば決定機という場面がありました。
北川をサイドに残して5-4-1にシステム変更しマッチアップを嚙み合わせる采配には、奪ってからドウグラス、北川という打開力に優れた選手を使って1対1を仕掛ける狙いもあったのではないかと思われます。
先に述べた右サイドを受け渡しの守備にしていたのは、北川を前に置いておきたいという考えもあったのかも知れません。
試合終了まで約10分間に、87分、88分、91分からのコーナーキック2回と複数回、相手ゴール前まで攻め込むことが出来ています。
3. 失点場面の観察
清水の左サイド(仙台から見て右)から蜂須賀がクロスを上げようとしている場面。
ボールのある左サイドは平岡、蜂須賀にそれぞれ石毛、松原が付いています。これはマッチアップ通り。
そしてゴール前。ボランチの梁が上がってきているのでマークする相手は上のマッチアップ図と変わっていますが、マーク自体は問題ありません。これは5-4-1にした効果で、清水の守備陣は仙台の攻撃陣に対してしっかり人数を確保できています。このときDAZNの映像ではファンソッコを中心にマークの確認をしている姿も映っています。
ただ北川が内側に意識が行き過ぎて中野が逆サイドで浮いています。おそらく北川はクロスが直接ゴール前に来ると予想していたのではないかと思います。さらに、サイドの深い位置は飯田にマークを受け渡していたのでマークの意識が希薄になっていたのかもしれません。
ここは問題点の1つで、マークの確認の際に北川にもマークを指示をしてあげることが必要だったでしょう。
ボールが逆サイドの中野に振られた時、北川は中野へのマークが完全に遅れてしまいます。
しかしこの時、ゴール前のマークに関しては問題なく噛み合っていました。そのままなら、クロスを上げられても跳ね返すことは出来たはず。ところが...。
中野が折り返したところ。
各選手マークを掴んでいますが、ソッコだけがボールウォッチャーになり、石原のマークを外しています。そしてフレイレが反応するも石原にゴールを決められてしまいました。
この時の仙台は、中央をマンマークで固められている状態のところ左→右→左→中央とサイドチェンジを繰り返すことでゴールを決めており、その攻撃は理にかなったものでした。
4. まとめ
結論としては、采配ミスは見つけられません。
相手の守備のずれをポジショニングとボールの動かし方で作り出すというのは仙台の攻撃の最大の特徴です。それが出始めた時間帯にシステムをミラーにすることで消す。しかも、北川をサイドに置くことでカウンターで得点する可能性を残しておく。これがヨンソン監督の狙いだったと思われます。
4-1-4-1にして中盤の人数を増やして解決するという策もありますが、ずれを消して前線のカウンターを繰り出すには、5-4-1の方がより明確な対応です。
失点は局面の対応ミスであり、これを采配で防ぐのは難しかったでしょう。
しかし、問題がないというのはあくまでこの試合の采配に対してです。この試合の対応として采配が正しいとしても、局面で対応の甘さが出ては勝ちは拾えません。鹿島戦でも最後のセットプレーで西のマークを外していたように、局面での対応が甘いのはこのチームの特徴です。
そこは個人の守備技術とともに、チームとしても力が足りないところなので監督の更なる指導の元、底上げを期待したいと思います。
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