インサイドセールスの時間価値を最大化させるための「アウトソース(外部委託)」という選択肢
今回は、インサイドセールス業務を「アウトソース」に関する話です。個人的な考え方ですが、インサイドセールスにおいて最もインパクトが高い施策は時間のアロケーション(再配分)だと思ってます。標準化されたオペレーションに割く時間は極力減らし、いかに成果を創出するための時間割合を増やせるかにより、インサイドセールスの生産性は大きく異なります。
一般的にアウトソースの活用で得られる効果はコール数増加などの「活動量」を高めるイメージを持つ方が多いかもしれませんが、Brazeではインサイドセールスで営業代行をはじめ、様々なアウトソースサービスを活用しながら自分のキャパシティを超えた業務量に対応できる体制を構築しています。 加えて、Brazeの場合「活動品質」を高めるためにもアウトソースの取り組みが大きく貢献しています。
コール数を増加するためのコール代行に特化した内容はこちらの記事で解説してます。
今回は、Braze社内でアウトソースをしている業務とアウトソースすることによるインサイドセールスの働き方の変化、顧客に与える影響についてお伝えします。
インサイドセールスアウトソース導入背景
Brazeでは、大きく3つの背景からアウトソースを活用した組織体制を構築しています。
(1)少人数体制で商談を創出する必要があり、自社以外のリソースを確保して活動量を担保したい。また、新規のリード獲得数や商談進捗に合わせて必要なリソースが変動する状況に柔軟に対応したい
(2)効率重視の「マス向けアプローチ」と質重視の「1to1アプローチ」をバランスよく対応したい
(3)新入社員の早期立ち上がりが必要であり、可能な限り単純作業の時間を減らしたい
インサイドセールスがアウトソースを活用する4つの意義
私が担当しているインサイドセールス領域において、アウトソースを活用する意義は大きく4つあります。
(1)インサイドセールスの時間価値が向上する
アウトソースを活用することで社外でも対応可能な業務を減らし、自社で注力すべき業務に時間を割くことができます。
顧客理解やデータに基づく分析、戦術設計の時間を確保することで、組織全体として顧客の解像度が上がり、PDCAを高速に回すための体制を構築できます。
過去に"顧客の解像度"に関する記事を書いたので、ご関心ある方は参考にしてください。
(2)リソース調整がしやすく、状況が変化しても商談創出に必要な活動量が担保できる
安定して商談を創出するためには、「安定した活動量」が必要です。営業目標が上がったことに伴い活動件数の目標が増えることもあれば、競合に先行して市場開拓を狙うなど、営業戦略上、突発的に活動量が増えることはよくあります。
一人あたり活動件数には物理的な限界があり、採用市場から優秀な人材を採用することは難しいなか、状況の変化に応じてリソース不足を解消することが可能となります。
(3)属人化させずに再現性の高いオペレーションを設計
アウトソースするためには誰でもできるように言語化、マニュアル化の整備が必要になります。ルール・定義付けなどを行い、誰でも仕組みを回せる土台構築に繋がります。
またコール業務の代行を依頼する場合、業界や役職別のトークスクリプト作成、トークを利用した際の受付突破率やアポイント率の検証など、顧客の状況に合わせて新しい武器を磨く時間を外部リソースで担保できます。
(4)少人数組織でもレバレッジを効かせて実行力を強化
アウトソースを活用することで、自分のキャパシティ以上の業務に対応することができます。忙殺されると思考停止になりがちですが、前向きに「あれやろう」「これをやろう」という発想がメンバーから次々生まれるようになります。
アウトソースしているインサイドセールス業務内容
インサイドセールスは架電だけでなく、メール文面の作成やメール送信作業、アポイント取得後の日程調整、Salesforceへの活動記録の登録、商談メモやヒアリング内容をフォーマットに合わせて編集して営業に共有するなど、意外と細かい業務が多く、マルチなタスク処理能力が求められます。
私の場合、インサイドセールス業務の60%は事前準備とヒアリング含めたアプローチ活動に使われていました。また日程調整などのオペレーション作業に10〜20%の工数が割かれています。そしてアプローチ業務のうち、半分はメール送信、半分はコール活動です。コール後の接触率が20%だとすると、全体の6割程は顧客と会話できていない「作業」の時間となってしまいます。
インサイドセールスに限らず、営業は労働集約的な働き方になりがちです。時間をかけて活動すれば成果に繋がり、活動数が減った途端に成果が落ちてしまった経験は多くの人が身に覚えがあるはずです。
アウトソースの活用は、人のモチベーションや稼働時間に関係なく、一定の活動量を担保し、安定した商談供給に貢献します。
アウトソースを上手く活用するするための業務整理のポイント
アウトソースを検討する際に、「経験にもとづく感覚的な判断が必要」、「微妙なニュアンスを伝えることができない」といった理由から外部への委託が難しいという声をよく聞きます。
自分の頭のなかを100%他人に伝えることは不可能なので、業務をToDoレベルで標準化・マニュアル化する必要があります。また、委託業務の抽象度が高い状態では被委託者側からしたら何をやっていいか理解できなかったり、アウトプットイメージが合わずに納品までの往復が多くなってしまい、逆に生産性を下げることに繋がります。
Brazeでは、アウトソースを上手く活用するために以下のポイントをおさえて業務を整理をしています。
Brazeでは、「最小工数で最大の成果を上げること」に価値をおいているため、手間をかけずにすぐに成果が上がる業務(Low Hanging Fruit)だけではなく、「インパクトが大きいが工数がかかってやりきれない業務」を中心にアウトソースしています。
また、人的リソースが必要なアウトソースは当然費用が発生するため、本当にやる必要があるのか(削除できないか)、現行のシステムで効率化・自動化できないかを先に検討するようにしています。
*テクノロジー活用した業務効率化や生産性向上に関する記事はこちらをご参考にしてください。
アウトソースする業務内容や優先度は、企業文化や成長フェーズによって変わってくるかと思いますので、自社にあったアウトソース活用を社内で協議いただけると幸いです。
実際に委託している業務内容の一部を以下に整理しました。毎月約30時間分の業務をアウトソースしています。(2022年8月時点では、毎月50時間分の工数を外部委託)
また、アウトソースを活用することで、顧客にとってプラスアルファの価値を提供することができています。これらは直接商談を大きく前進させることには繋がりませんが、積み上げることで確実に商談プロセスを加速する(停滞させない)要素となります。
初回商談前の事前準備や、顧客にヒアリングする項目の詳細については、以下の記事に執筆していますのでご関心ある方はご参考にしてください。
アウトソース活用したオペレーション概要図
本パートでは、Brazeのインサイドセールスにおけるで実際のオペレーション概念図を用いながら、アウトソース導入前後の変更点を説明します。
アウトソース導入前
アウトソース導入前のインサイドセールス業務プロセスは、日程調整を含む社内外の事務作業やSalesforceなどの顧客管理システムの登録作業等、アプローチ活動以外に多くの時間が割かれていることがわかります。
続いて以下は「資料代行」「オンライン秘書」「アウトバウンドコール代行」の3社のパートナーと協業して再構築した業務オペレーションの概要図です。
アウトソース導入後
資料作成や社内外の事務作業、アウトバウンド、掘り起こしのコール業務を社内以外のチームで対応できる体制に変更しました。
概略図にはありませんが、アプローチよりも前工程の「リスト作成業務」にもアウトソースを活用しています。例えば、営業員5名に対して100件の企業リストがある場合、合計500件の企業、1社あたり3名のキーマン候補がいる場合は3000件程のリストを作成する必要があります。
SalesforceやWeb上の記事、LinkedIn、Eightから氏名を検索しながらリストを作成すると時間はいくらあっても足りません。クラウドソーシングサービスなどを利用しながらノンコア業務は社外に委託しています。
アウトソースを活用することで、アウトバウンド施策で明確な成果が出ているのでご関心ある方は以下の記事も参考にしてください。
アウトソースによる成果と振り返り
このようにリスト作成やアプローチ活動から解放され、テクノロジー・データ活用やコンテンツ企画、事前のヒアリングなど、顧客に向き合うための本質的な時間に集中できます。
先程の例だと、インサイドセールス1人あたり毎月約30時間分の業務を外部委託できているため、他組織と比較して約3.5日の追加営業日を獲得できたことになります。また、30時間を活用して闇雲に活動件数を増やすのではなく、返信率やアポイント率など「活動品質」を上げるためのPDCAに使う時間を増やすことができます。
PDCAを回した結果、特定のキャンペーンでは返信率50%を実現することができ、またこのようなベストプラクティスは単発で終わらずに将来に渡る資産として組織に蓄積させることができます。
アウトソースの場合は「○時間分の業務削減」などの評価をするケースが多いですが、目には見えない「ベストプラクティス」という資産を短期間で積み上げることができるということも大きな成果だと考えます。
本記事のまとめ
最後に、アウトソースを活用するためのステップをまとめます。
アウトソースは外注する業務を整理し、適切にパートナーを選ぶことで、システムと同じく組織にレバッジを効かして1人あたりのキャパシティを超えた業務量に対応できます。
特に、インサイドセールスのように標準化された仕事が多い役割の場合は、「誰がやっても結果は同じ」という型さえ作れば組織拡大の効率性が最大化されます。一方、「自分がやっていたことを100%の純度で他人に再現してもらう」ことはかなり難易度が高く、アウトソースの導入時期は、エラーが起こる*ことが多いと思います。
エラーが起こることを前提に、起こるエラーに1つ1つ対処していきながら、各組織にあったアウトソース体制やオペレーションを構築し、組織全体の時間価値向上にいただければ幸いです。
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