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ビートルズにのめり込んだのは「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を知りすぎたからかもしれない

きっかけ

「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を知ったのは中学2年の時。音楽の先生で、彼女は大学を出たてで新任で来た人だった。当時の中学のクラスはやんちゃで授業もろくに聞かないような世代だった。女性で新任の先生、しかも音楽の授業なんてなおさらで、ほとんど授業にならなかった日ばかりだった。

そんなあるとき、授業で1枚のレコードを聴かせてくれた。それが「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」で、「ポール死亡説」についても教えてくれた。曲の終わりの方で "I buried Paul(ポールを埋葬した)"と言ってると言われ、みんな気味悪がったが、俺は逆に興味津々で、後にFM番組で同曲を録音してからは何度も何度も聴いた。

余談だが、あまりにも授業を聞かない、妨害ばかりされたからか、先生は1年で辞めてしまった。生徒のひとりとして申し訳ないと今では思っている。

「ビートルズ・レコーディング・セッション」

時は過ぎ、21歳か22歳ぐらいのころ、「ビートルズ・レコーディング・セッション」という本を入手した。ビートルズが何年何月何日のどの曲を何テイク録音したというのが書かれた本で、俺はこの本に夢中になった。

ビートルズ・レコーディング・セッション。2009年には「完全版」ってのが出ているが、内容はよくわからん。

『プリーズ・プリーズ・ミー』のシングルとして出てた4曲を除く10曲をわずか1日で録音していたとか、『リボルバー』のレコーディングの最初が「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」だったとか、いろいろと驚くところがあったが、中でも「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」は最も驚かされた。

1966年11月24日の第1テイクはメロトロンを使っているものの、とてもシンプルで静かだったのが、日を重ねるごとにホーンセクションやストリングスまで入ってヘヴィに変わっていく様が書かれてて、一体どんな感じだったのかと俺の興味をそそる。

さらに7年ぐらい信じていた "I buried Paul"が、実は"Cranberry souce(クランベリーソース)"だったという事実もこの本で知った。ポール死亡説なんてインチキじゃねえかと思った瞬間だ。

そして、何よりも驚いたのが、最初の静かなバージョンとオーバーダブをほどこしたヘヴィなバージョンをがっちゃんこしたいというジョンの我がままに「キーもテンポも違うから無理だ」とジョージ・マーティンは返すものの、両者のピッチを変えることでそれを実現したという事実。いまみたいにPCでちょちょいとピッチを変えるのとは違っただろうし、ものすごく大掛かりなことをしたんだろうなと想像させる。

アウトテイクの存在を知る

同じころ、レコード・コレクターズか何かで、アウトテイクを集めた「Ultra Rare Trax」というブートレグの存在を知った。その頃はまだブートレグというと音がとても悪いというイメージがあったのだが、ここに収録されているものは正規盤と大差ない音だと書かれていた。

そしてその「Ultra Rare Trax」シリーズの6枚を池袋Parcoの山野楽器輸入盤コーナーで見つけてしまったのだった。

ビートルズ沼の原点、Ultra Rare Trax

財布と相談しつつも、いま逃したら手に入らないかもしれないと思い、一気に全部購入した。同様のアウトテイクシリーズで、"Unsurpassed Masters"というのもあって、そのVol.3には「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のバリエーションが多数入っていたので、それも併せて買った。

Unsurpassed Masters Vol.3、「ストロベリー・フィールズ」はTake1、Take2, 3 and4、Take5, 6 and 7、Remix25 (from Take 15 and 24)、そして Remix26 (from Take25)と5トラック入っていて、これでほぼこの曲のレコーディングの過程が分かるような内容だった。

どちらも音がとてもよく、正規盤と変わらないというのも頷けた。クランベリーソースと言ってるのもこの耳で聴いて、確かにそうだと認識した。ビートルズの裏側を垣間見た気がした。なお、Ultra Rare Trax にも3テイクほど入っている。

その数年後に『アンソロジー』が出たことで、俺にとってこのブートレグの役割はほぼ終わったが、それでも「ストロベリー・フィールズ」だけはよく聴いていた。

結局のところ「ストロベリー・フィールズ」の何に惹かれているのか

『サージェント・ペパーズ』のスーパーデラックスエディション。ここにもTake1, Take4, Take7, Take26が収録されている。

それはやはり、現代とはまったく違うレコーディング環境で、テクノロジーというよりも「知恵」で作り上げていったというのが見えたからだと思う。もしアウトテイクとかレコーディングの話なんて知らなかったらここまでのめり込んでいないと思う。

そして曲の終わりの方、一旦フェイドアウトっぽくなってリンゴのドラムがドタバタ入ってくる部分があるけど、その周辺ってやたらと話し声みたいのが入っていて、それがまた生々しさがあって好きだ。ビートルズってこの時期以降、そういうの結構あるし。

いまでもビートルズはデラックスエディションのアウトテイクとか、膨大な量の「ゲット・バック・セッション」の音源だとか、そんなのばかりを喜んで聴いているわけだからね。本当だったら残っているテープは全部聴きたいところだし。そんな風に思うのはビートルズぐらいだ。

中学2年の時、音楽の授業で「ストロベリー・フィールズ」を聴いていなかったらこうはなっていなかったかもしれない。

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