国際機関によるブロックチェーンの取組み(世銀・国連)

ブロックチェーン技術は民間企業の枠を越えて、国際機関でも実験的に採用されつつあります。以下にいくつか事例を紹介したいと思います。

世銀は2018年8月、ブロックチェーンを使った新たな債券「bond-i」(Blockchain Operated New Debt Instrument)を発行し、予定金額を上回る投資を受けました。

世銀債は発展途上国の教育発展や医療向上、災害対策、環境配慮、貧困削減などを支援するための資金調達を目的に発行されており、投資家は本債券を購入することにより間接的に発展途上国への支援を行えます。また、世銀債を発行している国際復興開発銀行は「IBRD」とも呼ばれ、1945年に設立され世界銀行グループのうち最も歴史が長く、単一機関としては世界最大の開発資金の国際融資機関です。

Bond-iは、伝統的な金融市場にEthereumによるパブリックブロックチェーンネットワークの商業利用の初の成功例となっています。

この技術が資本市場にもたらす影響についてより深い見識を得て、価値を動かす他の方法について探求できるようになることを期待している。現在は銀行口座を持たない、または金融サービスに十分なアクセスを持たない地域を助けるのに、これらの技術は大いに役立つだろうと考えている

と世銀の財務、資本市場銀行取引・決済担当者が述べています。

国連においてもブロックチェーン技術を活用した支援が始まっています。WFP:World Food Programme(世界食糧計画)が現金給付の仕組みにブロックチェーンを採用したのが一例です。2016年4月からブロックチェーン技術をベースとした独自システム「Building Blocks」の開発に着手。 食糧支援の効率化と支援対象者のプライバシーの保護につなげるのが狙いのようです。

開発ベンダーであるドイツの「Datarella」や英国の「Parity」との提携の下、Ethereum(イーサリアム)をベースとした「Building Blocks」を開発しました。

2017年1月、パキスタンでProof-Of-Conceptアルゴリズムを用いて、現金給付の際の認証や登録取引で実証実験が実施されました。これをベースに2017年5月にはシリア難民1万人を対象にし、2018年1月には対象者数を10万人に拡大。結果、WFPが取引記録を保有することとなり、シリア難民の個人情報がサードバーティーである銀行や携帯会社に流れることが無くなりました。

ブロックチェーン技術により、変更できない安全な方法で取引が記録されます。小売店と難民が直接取引できるため、銀行などの仲介業者が不要となり、WFPによるヨルダンでのパイロット・プログラムではサードパーティーに支払われる手数料が98%削減できたとのことです。

これらシステムには、国連難民高等弁務官(UNHCR)のバイオメトリック技術が用いられています。ヨルダンの難民キャンプでは、虹彩(こうさい)認証による身分証明が可能になりました。現金、クーポン券、クレジットカードの代わりに、目をスキャンすることによって、難民キャンプ内のスーパーマーケットから食料が購入できます。

Building Blocksの開発には、WFPが2016年に開始したイノベーション・アクセラレータが果たした役割が大きいようです。

イノベーション・アクセラレータは、財政支援、専門家のネットワークとグローバル・フィールドリーチへのアクセスを通じてWFP内起業家と外部のスタートアップやNGOなどをサポートしています

ブロックチェーンの国際機関における活用も、今後は注目されそうです。

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