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【"世界の内部監査の潮流シリーズ"連載開始】世界最先端の内部監査を学ぶ!
こんにちは、HIROです。私は現在、米国のシリコンバレーで「内部監査における生成AI活用」の研究とコンサルティングに取り組んでいます。
このシリーズでは、日本の内部監査人が普段触れる機会の少ない「世界の内部監査」に関する最新情報を、迅速かつ分かりやすくお届けします。特に、アメリカの内部監査はその進化が日本より10年以上先を行くと言われており、非常に参考になるケースが多いと感じています。今回は、このシリーズを始めるにあたっての背景や私の想いをお伝えしたいと思います。
1. なぜ「アメリカは10年以上先を走っている」と言われるのか?
1.1. 情報格差を生む“英語の壁”
日本の内部監査がアメリカより10年以上遅れている、とよく言われます。理由はいくつかありますが、その一つが“英語の壁”です。内部監査を取り巻く世界的な潮流は、国際会計基準や先進的な監査手法など英語圏で次々と生まれています。しかし、日本の内部監査人がそれらの最先端情報を直接キャッチアップしようとすると、どうしてもハードルが高い。翻訳されるまでにタイムラグがあり、せっかくの新鮮な知見が日本に届く頃には半歩、いや一歩出遅れているケースもしばしばですし、全く届かないこともあります。
英語を使って海外の情報を調べるのは、まるで普段あまり泳いだことがない人が広大な海に飛び込むようなもので、最初の一歩を踏み出すだけでも相当な勇気がいります。そのため、多くの日本の内部監査人が「どうしても言語の壁を乗り越えられず、国内で得られる情報源に限られたリソースのまま仕事を続けるしかない」と感じているのが現状なのです。
1.2. アメリカの“攻めの監査”と日本の“守りの監査”
アメリカの大手企業やスタートアップの監査手法を間近で見ていると、非常に特徴的なのは“攻めの監査”であることです。単なる不正検知だけでなく、経営戦略を支援し、企業の成長を後押しするような提言やリスク管理を積極的に行います。たとえば、AIを用いたデータ分析で市場の変化をいち早く察知し、経営者に即時にリスク緩和策を示すケースも珍しくありません。
一方、日本では内部監査を「ミスや不祥事のチェック担当」と見なす風潮がまだまだ強いと感じます。これは“守りの監査”としては効果的かもしれませんが、経営パートナーとしての価値発揮にはまだ伸びしろがあるということです。私がアメリカで過ごし、多国籍企業や外資系コンサルで得た経験から見ても、監査部門が積極的に経営に関わり、時には企業文化の変革を後押しするようなアプローチは、国内ではまだ限定的といえます。
2. シリコンバレーから日本へ“リアルな声”を届けたい
2.1. 私自身のシリコンバレーでの学び
私は現在、米国法人「Front-IA Innovations」を立ち上げ、シリコンバレーという世界最大のイノベーションの震源地で活動しています。ここはIT企業の集合地帯だけではなく、内部監査やガバナンス分野でも先端的な取り組みが日々生まれる場所です。ベンチャーキャピタルからの投資圧力もあり、スタートアップ各社は不正やリスクに対して常に敏感で、監査体制にも最新のテクノロジーが積極的に導入されています。
一例として、あるAIスタートアップの内部監査チームは、膨大な取引データをディープラーニングでリアルタイムに分析し、わずかな異常値でも即座にフラグを立てられる仕組みを構築していると聞きました。そんな話を聞くたびに、日本の企業でも採用すれば効果を上げられるだろうに...と、もどかしさを感じることが多々あります。
2.2. 情報を“翻訳”して日本に届ける重要性
「シリコンバレーではこんな風にやっているらしいよ」と伝えるだけでは、正直あまり意味がありません。なぜなら文化も違えば、企業の規模や制度もまったく異なるからです。私の役割は、単に最新トレンドをそのまま日本語にすることではなく、それを「日本企業で実践するときに、どのようにアレンジすればいいか」を踏まえてお伝えすることだと思っています。
たとえるならば、特殊な海外の食材を手にしたとき、まずは日本の台所でどう調理すれば美味しくなるかを考えるプロセスが必要です。すでにアメリカでは一般的となっている監査手法やAIツールでも、日本の慣習や法律に合わせて使わないと、逆に混乱を招きかねません。だからこそ、アメリカのシリコンバレーの空気を吸いつつ日本の慣習を熟知している私が、その“架け橋”のような存在になりたいと思っているのです。
3. 日本の内部監査を盛り上げたい私の想い
3.1. “攻めの監査”を支える最前線の情報発信
私はこれまで、PwCやDeloitte等のBig4ファームでの修行や、テック系ユニコーン企業での内部監査/リスクマネジメント、さらに米国MBAでの学びなど、さまざまなフィールドを駆け抜けてきました。どこへ行っても、内部監査やリスク管理は企業にとって欠かせないピースであると痛感します。にもかかわらず、国内ではその真価が十分に認知されているとは言えません。
日本で「内部監査が好きです」と言うと、「地味な仕事だよね」「シニアの人が定年前にいく場所でしょ」「チェックリストで質問をするやつでしょ」というイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。しかし実際は、最新のAIツールやデータ分析手法を駆使して、不正を未然に防いだり、企業文化を変えていく“攻めの監査”へとシフトしています。こうしたダイナミックな変化を若手を中心に日本でももっと広く知ってほしい。それが私の想いです。
3.2. 世界と繋がる“内部監査コミュニティ”の創造
シリコンバレーで肌感覚として感じるのは、専門家同士の情報共有のスピード感とその“オープンさ”です。勉強会やミートアップでは常に新しい事例がシェアされ、みんなが自分のノウハウや失敗談を惜しまずに公開する。まるで強豪スポーツチームが練習試合でお互いを刺激し合って成長するように、内部監査のプロフェッショナルたちも互いを高め合っています。
日本に戻ると、「なかなか周囲とノウハウを共有する場がない」「同業者同士で切磋琢磨する機会が限られている」という声をしばしば耳にします。だからこそ、私が「note」で発信する記事をきっかけに、日本の内部監査コミュニティがもっと活性化すればいいなと願っています。内部監査の世界は本来、とてもエキサイティングな要素を秘めている。最新技術との掛け合わせで、今後ますます面白くなる領域なのです。
4. このシリーズでお伝えしたいこと
4.1. “最新動向”ד実務への落としこみ”
今後のシリーズでは、アメリカやその他の海外で起きている内部監査の最新トピックをリアルタイムでお届けする予定です。そして、ただ単に「こんなすごい事例があるよ」という紹介にとどまらず、「どうすれば日本の企業や組織に実践的に導入できるのか?」という観点も深堀りしていきたいと思っています。
たとえば、生成AIを活用して取引データを自動検出・分析する手法について、実際の導入プロセスや必要な人材スキルを細かく解説していく予定です。ここでは、私自身が試行錯誤しながら得た失敗談や、クライアント企業から学んだ成功パターンなどを惜しまず共有していきますので、みなさんの一助になれば幸いです。合わせてこちらのシリーズもご確認ください。
4.2. 専門家の視点と初心者への配慮を両立
内部監査について深い知識がある方はもちろん、初心者の方にも「へぇ、内部監査ってそんなに面白いんだ」と思っていただけるよう、専門用語はなるべく砕いてわかりやすく解説します。一方で、専門家の方が読んでも満足できるような最新理論や裏話も含めてお届けしますので、幅広い層の方にとって実りある内容になるよう工夫していきます。
この記事は内部監査業界の発展のために、無料でボランティア的に記事を書いているので、「いいね」や「フォロー」で応援いただけると励みになります。それでは、次回の記事でお会いしましょう!