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【内部監査の基礎知識】内部監査の体制~内部監査の組織的位置づけ~

こんにちは、HIROです。今日は「内部監査の組織的位置づけについて」詳しくお伝えします。内部監査は、企業のガバナンスやリスクマネジメント、コンプライアンス、内部統制を支える重要な役割を果たしていますが、その効果を最大限に発揮するためには、組織内で適切な位置づけが必要です。今回は、内部監査の組織的な独立性や経営者へのダイレクトレポーティング、デュアルレポーティングといった組織内での内部監査の体制面について、具体例を交えて解説していきます。


1. 内部監査の組織的位置づけとは?

1.1 組織的な独立性の重要性

内部監査が効果的に機能するためには、その組織的な独立性が非常に重要です。独立性とは、内部監査部門が他の部門や経営陣からの影響を受けずに、客観的な視点から監査を行うことができる体制を指します。独立性が確保されていない場合、内部監査が企業内の不正や問題を適切に指摘できなくなるリスクがあります。

1.2 経営者へのダイレクトレポーティング

内部監査部門は、一般的な部門とは異なり、CEOや取締役会などの経営陣に直接報告する体制が求められます。これを「ダイレクトレポーティング」と呼びます。ダイレクトレポーティングは、内部監査が経営陣と密接に連携し、企業全体のリスク管理や内部統制を強化するために不可欠な仕組みです。

たとえば、ある企業で内部監査部門が経営陣に直接報告している場合、監査で発見された重大なリスクや不正行為を迅速に経営陣に伝えることができます。これにより、経営陣は問題に対して即座に対応策を講じることが可能となり、企業の健全な運営が保たれます。

2. デュアルレポーティングの体制

2.1 デュアルレポーティングとは?

デュアルレポーティングとは、内部監査部門が経営陣(通常は代表取締役)のみならず、取締役会や監査役会/監査委員会に対しても直接報告を行う体制を指します。この体制は、内部監査の独立性を強化し、経営陣だけでなく、取締役会や監査委員会の視点からも監査活動が評価されることを目的としています。

デュアルレポーティングにより、内部監査部門は経営陣の影響を受けにくくなり、より客観的で信頼性の高い監査報告が可能となります。たとえば、内部監査が経営陣に対して不都合な事実を発見した場合、経営陣がその報告を抑制しようとしても、取締役会や監査役会/監査委員会への報告が確保されるため、問題が適切に共有される可能性が高まります。

2.2 デュアルレポーティングの実践例

ある多国籍企業では、内部監査部門が代表取締役に直接報告するだけでなく、四半期ごとに取締役会や監査役会/監査委員会にも詳細な報告を行う体制を敷いています。この体制により、取締役会や監査役会/監査委員会は内部監査の活動を評価し、必要に応じて監査の範囲や優先事項を調整することができます。また、取締役会や監査役会/監査委員会は内部監査部門の独立性を守るため、予算や人員配置に関する決定にも関与しています。これにより、内部監査はより強力なサポートを受け、組織全体のリスク管理に貢献しています。

3. 内部監査の組織的独立性を確保する方法

3.1 組織内での独立性の強化

内部監査の独立性を確保するためには、組織内での配置や報告ラインが明確に設定されていることが重要です。内部監査部門が、経営陣や他の部門から直接の指示を受けないようにすることで、客観的な監査が可能となります。具体的には、内部監査部門のリーダーである内部監査責任者(CAE: Chief Audit Executive)が、代表取締役や取締役会に直接報告できる体制を整えることが推奨されます。

たとえば、内部監査部門が経営企画部や財務部門の下に配置されていると、独立性が損なわれるリスクがあります。これを避けるためには、内部監査部門を経営陣の直属とし、監査の結果や提言が経営陣の指示を受けずに報告される体制を構築する必要があります。

3.2 内部監査の独立性を守るための実務的な対策

内部監査の独立性を保つためには、いくつかの実務的な対策が有効です。まず、内部監査の予算や人事権が経営陣の影響を受けないように、取締役会や監査役会/監査委員会がこれらの決定に関与することが求められます。また、内部監査の業務範囲や優先事項も、経営陣の意向に左右されず、独立して決定されるべきです。

さらに、内部監査部門が日々の業務においても他の部門からの圧力を受けないように、明確な監査手続きと報告ルートを確立しておくことが重要です。例えば、監査中に発見された問題が経営陣によって隠蔽されないよう、監査委員会との直接的なコミュニケーションラインを確保することが有効です。

ただし、今回はあくまで一般論を説明していますが、実務上は企業の置かれた状況に応じて、最適な対策は異なりますので、ご留意ください。

4. 内部監査の組織的位置づけがもたらす効果

4.1 経営の透明性と信頼性の向上

適切な組織的位置づけにより、内部監査は経営の透明性と信頼性を大きく向上させることができます。独立した内部監査部門は、経営陣が見落としがちなリスクや問題を客観的に指摘し、企業全体の健全な運営に貢献します。これにより、企業はステークホルダーからの信頼を得やすくなり、長期的な競争力を維持することが可能となります。

4.2 経営陣へのフィードバックと意思決定の質の向上

内部監査が経営陣に直接報告することで、監査結果が迅速に経営に反映される体制が整います。これにより、経営陣はリアルタイムでリスクや問題を把握し、迅速かつ適切な意思決定を行うことができます。たとえば、内部監査がサプライチェーンにおけるリスクを指摘し、経営陣が即座に対応策を講じることで、潜在的な問題を未然に防ぐことが可能となります。

5. まとめ:内部監査の組織的位置づけの重要性

今回の記事では、内部監査の組織的位置づけについて詳しく解説しました。内部監査がその役割を十分に果たすためには、組織的な独立性やダイレクトレポーティング、デュアルレポーティングといった体制面の工夫が不可欠です。適切な組織体制の下で、内部監査は企業のガバナンスやリスク管理や内部統制の強化に大きく貢献し、経営の透明性と信頼性を高めることができます。

内部監査の組織的位置づけについて考えることは、企業の健全な成長を支えるための重要なステップです。ぜひ、今回の記事を参考に、自社の内部監査体制を見直してみてください。


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