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【世界の内部監査の潮流】第15回:内部監査のグローバルインフルエンサーは誰?
こんにちは、HIROです。私は現在、米国のシリコンバレーで「世界の内部監査のベストプラクティス」や「内部監査における生成AI活用」の研究とコンサルティングに取り組んでいます。このシリーズでは、日本の内部監査人が普段触れる機会の少ない「世界の内部監査」に関する最新情報を、迅速かつ分かりやすくお届けします。特に、アメリカの内部監査はその進化が日本より10年以上先を行くと言われており、非常に参考になるケースが多いと感じています。
今回は、私が尊敬している元内部監査人協会(IIA)の会長兼 CEOのRichard Chambers氏のブログ記事の内、2024年第3位のものをピックアップして、「内部監査の最新トレンドを発信し続けるグローバルなインフルエンサー」についてお伝えしたいと思います。この記事を読むことで、SNSやオンラインメディアを活用して積極的に発信している世界の監査専門家たちの特徴や、日本の監査人が得られるメリットについて理解することができます。
1. 世界の内部監査インフルエンサーたちが注目される理由
1.1. SNSを舞台にした国境を超えた影響力
近年、内部監査の世界でもSNSやオンラインメディアを活用し、積極的に情報発信を行う専門家が増えています。欧米はもちろん、南米やアフリカ、アジアなど世界各地の監査人たちが、LinkedInやブログ、ポッドキャストなどを通じて「内部監査の新たな可能性」や「最新のガバナンス・リスク管理手法」をシェアしているのです。
私自身、シリコンバレーで仕事をする中で強く感じるのは、「SNSの普及によって、地域の壁を超えた知見の交換が可能になった」という点です。海外では、自分の監査体験談や調査結果を積極的に発信する文化が根付いており、そこには“批判を恐れないオープンマインド”があるように思います。その結果、一つの画期的なアイデアや提案が瞬く間に世界各地の監査人に共有され、さまざまな角度から意見が交わされるのです。
1.2. 多彩なバックグラウンドがもたらす新たな価値
Richard Chambers氏のブログで紹介されている25名のインフルエンサーも、国籍や経歴は実に多種多様です。たとえば、アメリカやヨーロッパの大手監査法人・コンサルティングファーム出身者だけでなく、アフリカや南米、アジアで活躍する監査人が含まれていることが特徴的です。それぞれが違う文化的背景や組織のルールのもとで仕事をしているため、「内部監査にはこんなアプローチもあるのか」と目からウロコが落ちるような知見を与えてくれることもしばしばです。
たとえば、ある南米の監査担当者が自社の資源開発プロジェクトでのコンプライアンスリスクをSNSで詳しく解説したケースでは、欧州や北米の監査人が「自国とは異なる事情」や「新たなチェックリストの作成アイデア」について活発にコメントを寄せていました。こうしたダイナミックなやりとりを見ていると、監査の視野が驚くほど広がるのです。
2. 日本の内部監査人にも役立つ“SNS発信型”専門家の活用法
2.1. 国内では得られないリアルタイムのグローバル情報
日本の内部監査コミュニティは質が高く、誠実に業務を行っている方が多い一方で、どうしても「海外事情に触れる頻度が少ない」という課題を感じることがあります。そうしたときこそ、世界の監査インフルエンサーをフォローする意義は大きいでしょう。
例えば、マネジメントへのレポーティング手法や最新ツール導入に関する海外事例は、日本ではまだ一般的でないケースもあります。けれども、海外の監査人がSNSで「新しいデータ分析ツール導入により不正検知率が◯%向上した」など具体的な成果をシェアしていれば、そこからヒントを得られますよね。リアルタイムで海外の実例をキャッチできるので、「いつか海外のカンファレンスで講演を聴く機会があれば…」と待たずとも、今日から新しい知識を活用できるのです。
また、日本での実務を英語で発信することで、逆に海外の専門家からフィードバックをもらうことも可能になります。私も過去に、監査プロセスを英語で簡潔に書いたところ、欧米やアジアの監査人から「こんなアプローチも面白いね!」とコメントをもらい、それを参考に改良を加えたことがあります。まさにSNSならではの双方向コミュニケーションが、新しい風を吹き込む原動力となるのです。
2.2. フォローすべき具体的アカウントと組織
Richard Chambers氏が挙げている25名の個人に加え、いくつかの組織アカウントも非常に活発です。たとえば、AuditBoardやIIA(Institute of Internal Auditors)の各国支部アカウントなどは、定期的にウェビナーやホワイトペーパーの告知を行っており、グローバル基準の最新動向を一早く得ることができます。
個人的には、データ分析のトレンドを追うにはAuditBoardが発信するテクニカル記事がとても役立ちました。一方、IIAの各国支部アカウントをフォローすれば、国や地域ごとの規制やガイダンスのアップデートがリアルタイムで手に入ります。日本支部のIIAだけではカバーしきれない地域ごとのニュースを得るには、海外支部のSNSも上手に活用すると情報量が一気に増えるでしょう。
ここで一つの例え話をすると、旅行好きな人が海外のガイドブックやブログを参考にして「ここ行ってみたい」「こんな体験があるんだ」とワクワクする感覚に近いものがあります。SNSで出会った海外の監査人とやり取りするうちに、「海外の監査報告書はこんなデザインなんだ」と目を奪われたり、「リスク評価をこんな風にやっているんだ」と驚いたりする瞬間が、本当に新鮮で刺激的なのです。
2.3. 体験談:SNSを通じて得たリアルな学び
私自身も、SNSで海外の監査エキスパートをフォローし始めた当初は、言語の壁や業界のカルチャーギャップを感じることもありました。しかし、投稿やコメントを読むうちに意外と「日本と同じように悩んでいるんだな」という共通点も多く発見しました。たとえば、不正防止策を社内に浸透させる際の“現場抵抗”や、監査ツール導入時の“コストに対する経営層の理解不足”などは、世界共通の課題なのだと再確認したのです。
一方で、海外の監査部門が独自の手法で壁を乗り越えた事例や、オフショア拠点を巻き込んで国際監査チームを編成し、24時間体制でリスク分析を進める事例を学ぶと、「そんな方法があったのか!」という発見の連続でした。それは単なる理論だけではなく、実際に行動した人の声だからこそ説得力があるのです。SNSではそうした“生の声”をダイレクトにキャッチできるのが大きな強みだと感じます。
3. 日本の内部監査現場に与えるインパクトと行動指針
3.1. 組織に閉じこもらない“開かれた監査”の必要性
国内で活躍する多くの監査人は、企業特有のルールや文化に即した形で真摯に業務を行っています。ただ、内向きになりすぎると「海外の最新トレンドを知らずに既存手法だけで満足してしまう」リスクも存在します。それはちょうど、郷土料理だけを食べて育ってきた人が、世界各国の料理を知らないようなものかもしれません。一度海外の料理(=新しい監査手法や思考法)を味わうと、そこに想像を超えた発見や可能性が広がっているのです。
SNSで海外の監査人や関連組織をフォローすることは、こうした“外の世界”を日常的に知る第一歩として最適です。たとえば、自分の専門分野とは全く異なる業界の監査人をフォローしてみると、意外な共通点やヒントを見つけることができます。製造業の監査手法が金融業界で応用可能な場合もあれば、リスク管理の概念がIT業界のプロジェクト監査に活きることもあるのです。
3.2. 具体的なアクションプラン
では、日本の内部監査人が“グローバルな監査インフルエンサー”を上手に活用するには、どのようなアクションが考えられるでしょうか。私の経験から、以下のステップをお勧めします。
1. 関連アカウントを精選してフォローする
リストアップされている25名や、IIAなどの組織アカウントをまずは一通りチェックしてみる。自分の興味・関心に合うものを絞り込んでフォローし、通知設定をオンにしておくと新情報を逃しにくくなります。(…そして私のアカウントもフォローいただけると嬉しい限りです!)
2. コメントや質問を積極的に投稿する
「英語だから…」と尻込みせず、簡単な英語でも率直な質問や感想をコメントすると、思わぬ形で会話が広がることがあります。自動翻訳ツールをうまく使いながら、自分の視点を発信するだけでも、“日本の監査現場からの声”として貴重なデータになります。
3. 社内共有や勉強会での活用
SNSで得た海外の事例やユニークな手法は、社内の勉強会や内部監査チームのミーティングで共有してみましょう。海外ネタは往々にして会話のきっかけとして盛り上がるものですし、実際に実務へ活かすためのヒントが生まれる可能性も高いです。
4. アウトプットを継続する習慣づくり
学んだことを自社の監査手順にどう取り入れたか、あるいは失敗したら何が原因だったのか。そういった試行錯誤の過程こそ、海外からも興味を持たれやすい“オリジナルコンテンツ”になります。経験談を英語・日本語の両方で書き残し、SNSに投稿することで、国境を越えたコミュニケーションの輪がさらに広がるでしょう。
この記事は内部監査業界の発展のために、無料で記事を投稿しているので、「いいね」や「フォロー」で応援いただけると励みになります。それでは、次回の記事でお会いしましょう!
本記事の引用元:
Richard Chambers, “25 Internal Audit Influencers to Follow,”
https://www.richardchambers.com/25-internal-audit-influencers-to-follow/