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【"海外子会社の内部監査シリーズ"連載開始】#1: 海外子会社管理の重要性!

こんにちは、HIROです。私は現在、米国のシリコンバレーで「内部監査における生成AI活用」の研究とコンサルティングに取り組んでいます。
このシリーズでは、日本の経営者/内部監査人を悩ませる「海外子会社の内部監査」について、要点を分かりやすく解説します。日系企業の海外子会社では、不正や不祥事等のインシデントが多発しており、国内拠点と比べて非常にリスクが高い実態があります。その悩みの種を少しでも解消できる一助になればと思い、このシリーズを書くことにしました。今回は、このシリーズを始めるにあたっての背景や私の想いをお伝えしたいと思います。


1. イントロダクション:海外子会社内部監査の重要性と私の経験

1.1. ご挨拶と私のバックグラウンド

私はこれまで、Front‐IA、PwC、Deloitte、SmartNewsなどで15年以上にわたり、グローバルな内部監査・経営管理に従事しており、この領域で日本でトップクラスの経験を積んできました。
実際、15か国以上の現地を訪れ、50拠点以上の海外監査に取り組む中で、現地の経営環境の脆弱さや、内部統制の欠如による不正・不祥事の兆候を数多く目の当たりにしてきました。
その衝撃と学びから、海外子会社の内部監査の重要性を痛感し、日本の内部監査人や経営者の皆様に、現場で培ったリアルな知見をお伝えしたいと考え、この連載をスタートすることにしました。

1.2. 海外子会社内部監査が注目される背景

グローバル展開を加速させる日本企業にとって、海外子会社は避けられない存在です。しかし、その実態は「製品で勝って経営で負ける」という皮肉な現実をはらんでいます。
日本国内では、整ったガバナンスと内部統制が働いているケースが多いものの、海外子会社は、言語、文化、法制度といった要因により、十分な内部統制が機能しないことが少なくありません。
たとえば、ある日系メーカーでは、現地に経営権限を丸投げした結果、内部通報制度が形骸化し、些細な不正が積み重なった末に大規模な不祥事へと発展した事例もありました。
このように、数字だけでは捉えきれない現場のリアルな状況が、海外子会社の内部監査の重要性を一層際立たせています。

2. 海外子会社特有のリスクと不正の実態

2.1. 日本国内との比較で見える違い

海外子会社の内部監査は、日本国内の監査とは大きく異なる局面を迎えます。まず、国ごとに異なる法制度や労働慣行、さらには文化や言語の壁が存在します。
例えば、ある国では労働法規の運用が緩やかで、現地経営陣が内部統制を軽視する傾向にあります。また、文化や言語の違いから、現地スタッフとの情報共有やヒアリングがスムーズに行かず、監査で必要な真実の把握が難しくなることも多いのです。
こうした環境では、ガバナンスの基盤が脆弱になり、不正行為や不祥事が発生するリスクが格段に高まります。

2.2. 実際の事例から見るリスクの高さ ~委任という名の放任~

私が実際に東南アジアの子会社で直面したケースをご紹介します。
当初、現地経営陣に丸投げ状態で経営管理を委任(=放任)していたため、内部統制の整備が不十分でした。その結果、売上計上の不正操作や経費の不正流用といった手口が巧妙に行われ、最終的には大きな財務リスクへと発展。
この事例は、表面的な数字だけでは見抜けない、現場での日々の管理の甘さやコミュニケーション不足が、不正の温床となりうることを示しています。
こうしたリスクを未然に防ぐためには、単なる数字のチェックに留まらず、現地の実情を反映した包括的な監査視点が必須です。

3. 連載で取り上げる主要なテーマ

3.1. 今後の連載で深掘りするテーマ

この連載は、全10回超(予定)にわたって、以下のようなテーマを中心に展開していきます。

  • 海外リスクマネジメントの基本
    海外子会社で直面する多様なリスクの特性と、その正確な評価方法を解説します。

  • 不正防止策と内部監査の役割
    不正行為の兆候を見逃さないための具体的なチェックリストや、最新テクノロジーを活用した防止策をご紹介します。

  • 現地経営陣とのコミュニケーション術
    異なる文化や言語の壁を乗り越え、信頼関係を構築するための具体的手法を伝授します。

  • グローバルガバナンスの構築
    本社と海外子会社との効果的な連携体制、及び職務権限表(DoA)の活用方法について掘り下げます。

  • 最新監査ツールやAIの活用事例
    内部監査ツールや生成AIなどを活用した分析やリアルタイムモニタリングの成功事例等を紹介し、実務に直結するヒントを提供します。

3.2. 読者にとっての実務的メリット

本連載を通じて、読者の皆様は以下のメリットを得ることができます。

  • 具体的な対策の習得
    たとえば、内部監査での効果的なヒアリング方法や、不正兆候の発見手法など、現場で即実践できるノウハウを学べます。

  • グローバル視点の内部統制理解
    日本国内とは異なる海外子会社特有のリスクや文化的背景を理解し、それに基づいた内部統制の整備方法を習得できます。

  • 最新技術の導入による効率化
    監査業務の効率向上や不正防止に寄与する最新ツールの導入事例を通じて、実務の革新を体感できます。

4. 連載内容と今後の展開

4.1. 連載全体の構成と今後の展望

本連載は、イントロダクションから始まり、リスク管理、不正防止策、現地コミュニケーション、グローバルガバナンス、最新技術の活用、さらには成功事例と失敗事例の分析といった幅広いテーマを、全10回超(予定)にわたって深堀りしていきます。
次回以降の記事では、各テーマをさらに具体的な事例や実践的な対策とともに、詳細に解説していく予定です。
たとえば、実際に私が直面した海外子会社の不正事例を詳細にご紹介し、その背景にある内部統制の弱点や、具体的な改善策を議論します。
また、最新のデジタルツールを用いた監査の進化について、現場での活用事例を通じて、即実践できるヒントを提供していきます。

4.2. まとめ

海外子会社の内部監査は、単なる数字のチェックではなく、現地の文化や経営環境、さらにはそこで働く人々の考え方まで深く理解する必要があります。
この連載を通じて、皆様が海外子会社のリスクや不正の実態を正しく把握し、未然防止のための具体的なアプローチを学んでいただけることを心から願っています。
内部監査は、企業の健全な成長と持続可能な経営を支える不可欠な要素です。私自身の豊富な経験とリアルな事例を基に、皆様の内部監査業務がより強固なものとなるよう、今後も全力でサポートしてまいります。


この記事は、私個人の専門家としての継続学習のため、また内部監査業界の発展のために投稿しています。
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