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【AIxIAシリーズ連載開始】生成AIが内部監査(IA)の世界を変える!
こんにちは、HIROです。私は現在シリコンバレーで「内部監査における生成AI活用」の研究とコンサルティングをしています。内部監査業界に生成AIを普及させ、業界全体を活性化するために本連載を始めることにしました。
今日は連載の導入として「内部監査と生成AI」についての概要をお話しします。内部監査という職業は、生成AIの活用において最も恩恵を受けられる分野の一つです。これまで内部監査の現場で多くの時間を費やしてきた作業が、生成AIの活用によってどれほど効率化できるのか、その可能性を探っていきます。
1. 内部監査(IA)と生成AIの相性の良さ
1.1 内部監査で必要とされる膨大な文字情報処理
内部監査では、企業内部の膨大な文字情報を収集し、それを分析して課題を抽出して、監査結果レポートにまとめるという作業が中心です。たとえば、監査調書や監査報告書の作成、法規制や内部ルールのレビューなど、これらすべてが監査人にとって負担の大きいタスクです。これらの作業は、正確さと迅速さが求められるため、従来の方法では多大な時間を要していました。
1.2 生成AIの得意分野
生成AIは、大量の文字情報の分析と生成を瞬時に行えるという特長を持っています。さらに、定量情報だけでなく定性情報も高度に分析できるため、内部監査において求められる多様なタスクに対応可能です。これにより、監査人の作業負担を軽減し、より重要な判断や意思決定に集中することができます。もしくは、これまでリソース不足により監査を実施していなかった領域に対しても監査を実施して、経営者にアシュアランスを提供できるようになります。
2. 内部監査での生成AI活用シーン
生成AI/LLMの内部監査への活用方法には、さまざまな可能性があります。以下に具体例を挙げます。
2.1 プランニング
生成AIを活用することで、複雑な法規制や専門性の高い分野(例:サイバーセキュリティ)の要点を瞬時に抽出できます。これにより、監査計画を効率的に立案し、リスクや重点項目を整理して具体的なアクションプランに落とし込むことが可能です。
2.2 ドキュメンテーション
監査計画書や監査調書、監査報告書といったドキュメントを、生成AIを活用して自動生成することができます。これにより、監査人の文書作成作業が大幅に削減され、監査の質を維持しつつ時間を節約できます。
2.3 リスクアセスメント
生成AIは、企業の業種や事業特性を分析し、過去のデータからリスクパターンや傾向を見つけ出すことが得意です。これにより、未来のリスクを予測し、重要性を評価することができます。特に、グループ企業を多く抱える大企業において有効です。
2.4 フィールドワークの効率化
会議やインタビューの音声データを自動で文字起こしし、要約やアクションアイテムを整理した議事録を作成することで、フィールドワークの効率が飛躍的に向上します。これにより、監査人は現場での観察や判断により多くの時間を割けます。
2.5 継続的モニタリングとデータ分析
生成AIは、会計データやシステムログなどの大量データを迅速に分析し、リスクの兆候や異常値を特定することが可能です。これにより、リアルタイムの監査や早期対応が可能となり、企業の安定的な運営をサポートします。
3. 生成AI/LLMの留意点
3.1 得意分野と不得意分野
生成AI/LLMにも得意分野と不得意分野があります。私が企業を支援する中で多く見られたのは、生成AI/LLMが不得意な領域(複雑な推論を含む業務:リスクアセスメント等)から着手してしまい、成果をうまく出せずに「生成AI/LLMは使えない!」と勝手に判断して活用を終えてしまうことです。これはもったいなさ過ぎます。生成AIが使えないのではなく、使い方が悪いのです。適切に成果がでる領域から順に着手したり、成果が出づらい領域でも適切な方法を用いることで、確実にAIの果実を得ることができます。(具体的な方法は別途解説予定)
3.2 期待値ギャップへの注意
新しい技術である生成AIは変化の速度が速く、多くの内部監査部門がどのように活用すべきか迷っています。過度な期待を抱いた結果、成果が期待値に達しないギャップが生じるケースもあるため、技術の限界を理解した上で活用を進めることが重要です。
4. まとめ
生成AIは、内部監査の効率化において極めて大きな可能性を秘めた技術です。内部監査の主要なタスクである情報の収集、分析、レポート作成のすべてにおいて、その能力を発揮します。しかし、導入の際には、生成AIの得意・不得意を理解し、期待値を現実に即したものにすることが求められます。
私はこれまでに、生成AIを活用した内部監査のセミナーや、大企業とのPoCプロジェクトを多く実施してきました。今後の投稿では、具体的な活用方法や事例についてさらに詳しく解説していく予定です。本日は概要のみとなりましたが、ぜひ引き続きご注目ください!
この記事は内部監査業界の発展のために、完全に無料でボランティア的に記事を書いているので、「いいね」や「フォロー」で応援いただけると励みになります。それでは、次回の記事でお会いしましょう!