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【世界の内部監査の潮流】第24回:IA 360°の2024年のトップ記事とは?
こんにちは、HIROです。私は現在、米国のシリコンバレーで「世界の内部監査のベストプラクティス」や「内部監査における生成AI活用」の研究とコンサルティングに取り組んでいます。このシリーズでは、日本の内部監査人が普段触れる機会の少ない「世界の内部監査」に関する最新情報を、迅速かつ分かりやすくお届けします。特に、アメリカの内部監査はその進化が日本より10年以上先を行くと言われており、非常に参考になるケースが多いと感じています。
今回は、「2024年の内部監査に関する注目記事のトレンド」についてお伝えしたいと思います。この記事を読むことで、海外の専門家が指摘するポイントや、そこから見えてくる日本の内部監査現場への示唆について理解することができます。
1. 「2024年の内部監査」注目記事のポイント
1.1. 変化の潮流が加速する一年だった
2024年は、企業や監査を取り巻く環境が激しく変動し続けた年でした。パンデミックの影響から復帰しつつある一方、世界各地での紛争や不安定な地政学リスク、新たな大統領政権下での規制や経済政策のゆらぎ、そしてAI技術の台頭など、内部監査を取り巻く課題は多岐にわたります。
海外メディア「Internal Audit 360°」がまとめた「The Top Internal Audit Articles of 2024」によると、内部監査部門はこのような変化の奔流を“脅威”ではなく“機会”としてとらえる動きが進んでいるようです。具体的には、デジタル化による効率化やリアルタイム監査の導入など、これまで以上に革新的な取り組みが注目されています。
1.2. “不確実性”こそが内部監査の存在意義を高める
過去数年にわたる混乱のなかで、多くの内部監査人は「自社が予想外の事態に直面したときに、いかに素早くリスクを可視化し、経営層を支援できるか」という重要性を改めて認識しました。
2024年を振り返ると、AIやデジタル化はさらに進展し、パンデミックの余波による社会・経済の変容はようやく落ち着きを見せ始めましたが、それでも新たな政治・経済リスクは常に発生しています。その結果、「常に変化を織り込む監査計画」「経営層への迅速なアラート機能」などがますます求められてきているようです。
2. 海外の記事から読み解く主要テーマとその背景
2.1. 「Eight Uncomfortable Truths About Internal Audit in 2024」
まず注目すべきは、内部監査人が抱える課題を“8つの不都合な真実”としてまとめた記事。ここでは、デジタル化やデータ活用が進展した一方で、「依然として内部監査に十分なリスペクトが与えられていない」「監査部門が組織の“ど真ん中”に入りきれていない」といった問題が指摘されます。
実際、日本でも「内部監査の重要性は認識されつつあるが、まだまだ各部署との連携が甘い」「社内での評価が限定的」という声を耳にすることがあります。特に歴史ある企業では、内部監査を“お飾り”として見なしてしまう向きも未だに少なくありません。こうした状況を打破するために、監査部門自身が柔軟なアプローチや高度な専門性を打ち出し、“経営の頼れるパートナー”としての立場を確立する必要があるでしょう。
2.2. 「It’s Time to Ditch the Annual Audit Plan」
次に取り上げられたのが、“年間監査計画”の見直しを促す記事です。リスクが動くスピードが格段に速くなっているいま、1年に1回だけ監査範囲を策定するやり方は陳腐化しつつあるという指摘がなされています。
確かに日本でも、年初に監査計画を立案しても、半年後には想定外の大きなリスクが浮上していることがあります。たとえば、海外の政治変動が引き起こすサプライチェーンの寸断や、新たな規制対応など、外部環境の変化は常に起こります。そのため、よりアジャイルな監査プロセスを導入し、四半期ごと、あるいは月ごとに柔軟に監査範囲を再評価する仕組みが望まれています。
2.3. 「Internal Audit’s Increasing Role in Hunting for Fraud」
不正検知に関するテーマも2024年の注目トピックとなっています。新しいグローバル内部監査基準でも、不正リスクへの取り組み強化が強く打ち出されていることから、監査人が不正発見の先頭に立つケースが増えているようです。
日本企業でも「横領や贈収賄などの伝統的な不正」だけでなく、「サイバー攻撃によるデータ改ざん」「AIを使った巧妙な詐欺」など、多岐にわたる不正リスクが高まっています。内部監査が組織全体の“倫理・コンプライアンスガード”として機能するためには、法務部門やIT部門と密接に連携し、不正の温床を早期に発見する枠組みを構築することが急務でしょう。
2.4. 「A Guide to Crafting Compelling Internal Audit Reports」
内部監査のレポート作成は、どの組織でも課題になりがちです。新しいアイデアや指摘をまとめても、それが経営陣や現場担当者に“響く”形で伝わらなければ成果は半減してしまう――これは多くの監査人が経験していると思います。
記事では、「レポートのフレームワークとして“五つのC”(Criteria, Conditions, Cause, Consequence, Corrective Action)を用いるべき」と提案されています。単なる事実列挙ではなく、なぜ問題が起こり、どのような影響があり、どんな是正策をとるのかをシンプルかつインパクトのある形で提示することが求められるわけです。
2.5. 「What to Look for During an Internal Audit of the Procurement Process」
最後に、調達プロセスの監査がクローズアップされています。パンデミック後の混乱で、サプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになったことは記憶に新しいでしょう。日本企業においても調達先の多様化や在庫管理の見直しが進んでいますが、それに伴い新たなリスクが生じる可能性もあります。
調達における不正や品質問題、さらにはESG(環境・社会・ガバナンス)面での取り組みをどう監査するのか。これらは今後も継続的に注目されるテーマだと考えられます。
3. 日本の内部監査人に向けた具体的アドバイス
3.1. 柔軟な監査計画と小回りの利くチーム編成
海外の記事で強調されているように、年一回の固定的な監査計画だけに頼るのは危険です。日本の企業文化では、どうしても「計画重視」「変更はあまり好まない」といった傾向がありますが、そこを乗り越えていくことが肝要です。
たとえば、四半期ごとにリスク評価をやり直し、必要に応じて監査チームの編成や優先順位を変える。ITリスクが急浮上したなら、即座にIT監査の優先度を上げる――といった“機動力”を高める施策を検討してみてはいかがでしょうか。
3.2. 不正リスクへの先手対応と監査の信頼度向上
「不正リスクを監査人が積極的に追いかける」という姿勢は、日本の企業文化では時に摩擦を生むかもしれません。しかし、社会の要請や新基準の方向性から考えても、内部監査がリードしないわけにはいかない領域です。
IT部門やコンプライアンス部門との連携を強化し、不正リスクを可視化する仕組みを構築すると同時に、従業員への意識改革を促すことも大切です。「不正を監視する」だけではなく、「不正を未然に防ぎ、企業文化を健全に保つ」というポジティブなメッセージを打ち出し、社内の理解を得る努力を続けましょう。
3.3. レポートの“品質”にこだわり、トップマネジメントの心をつかむ
どんなに優れた監査をしても、報告書が冗長で分かりにくいと、その価値は十分に伝わりません。先述の“五つのC”をはじめ、論理的に簡潔にまとめるフレームワークを積極的に取り入れましょう。
また、日本の大企業でありがちな長文化や専門用語の多用は、経営層や現場の担当者が真の意図を理解しづらくなる一因です。要点をビジュアル化したり、改善提案に優先度を付けたりするなど、レポートに「読む人に配慮したデザイン思考」を取り入れることで、監査部門の存在感を高めることができます。
4. 未来への展望と2025年への期待
4.1. 継続する変化の時代にどう備えるか
「Internal Audit 360°」では、2025年に向けて内部監査が引き続き重要な役割を果たすと予測しています。政治的・経済的な不安定要素は完全には解消されないでしょうし、AIやデジタル技術の進化もさらに加速するはずです。
それに伴って、リスクも形を変えながら現れ続けます。だからこそ、監査の柔軟性を高め、組織内外の情報をスピーディーに収集し、現場と経営層を結びつける“架け橋”としての機能を強化することが大切なのです。
4.2. 日本の内部監査が勝ち得る“新たなチャンス”
日本企業には、独自の品質管理ノウハウや緻密なプロセス設計文化があります。これらをデジタル技術やグローバル視点と組み合わせれば、“ジャパンクオリティ”とも呼べる高水準のリスクマネジメント体制を築くことができるかもしれません。
内部監査人がその架け橋となり、世界標準と日本企業ならではの強みを融合していく。そうしたアプローチが、今後の国際競争力を高める一助になると考えています。
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(引用元:
“The Top Internal Audit Articles of 2024,” Internal Audit 360°.
https://internalaudit360.com/the-top-internal-audit-articles-of-2024/ )