【必見】ACIIAアジア大会2024 参加記@バリ島(インドネシア)
こんにちはHIROです。今日は私が2024年8月27-29日に参加した「ACIIAアジア大会2024 参加記@バリ島(インドネシア)」についてお伝えします。これは非常に貴重な記事ですので、是非お読みいただけると嬉しいです!
1. はじめに
1-1. はじめに
2024年8月某日、私は胸の高鳴りを抑えながら深夜便でインドネシアのバリ島に向かいました。目的は、内部監査のアジア大会「ACIIA Regional Conference 2024」への参加です。この大会は、内部監査の最新動向を知り、業界のエキスパートたちと交流する絶好の機会です。
私はインドネシアには特別な思いがあります。過去にDeloitteで働いていた際、インドネシアの首都ジャカルタに駐在していた経験があるためです。急速な経済発展と古い文化が交錯する国、そして東南アジア特有のゆったりとした雰囲気が大好きで、今回のACIIA大会がバリ島で開催されると聞いた瞬間、これは運命だと感じすぐに参加を決意ました。また、2024年7月にワシントンD.C.で開催されたIIA国際大会が非常に有意義であったことも、参加を決意した大きな理由です。
1-2. 自己紹介
私は、これまでに4大監査法人のDeloitteやPwCで内部監査サービス等を提供し、Global Tech企業の内部監査部門長を経験してきました。現在は、内部監査に特化したコンサルティングファームであるFront-IA(株式会社フロンティア)で執行役員として参画し、米国法人Front-IA Innovations, Inc.の代表も務めています。Front-IAは、内部監査とテクノロジーの専門家が集結した稀有な企業で、内部監査アドバイザリーサービスに加え、生成AIを活用したソリューション等も提供しています。
今回のアジア地域大会では、内部監査の最新知識を得て、クライアントに還元することが目的でした。期待に胸を膨らませ、世界の動向を直接感じるために、現地へ赴くことを決断しました。
2. 大会の概要
2-1. 大会の基本情報
今回のACIIA Regional Conferenceは、「Purposeful Impact」をテーマに掲げ、バリ島のヌサドゥアコンベンションセンターで開催されました。2024年8月28日から29日にかけて、約1000人以上の参加者が集まりました。
この大会は、急速な変化と複雑さが増す時代において、内部監査の役割がどのように進化しているかを探る場となりました。特に、新しい監査基準が公開されるタイミングでの開催ということもあり、内部監査の専門家たちが一堂に会し、最新のツールやスタンダードについて議論し、共有する重要な機会となりました。
3. 大会のプログラム概要
3-1. Day 1: 2024年8月28日
初日は、07:00からの登録から始まりました。08:30には開会式が行われ、IIA IndonesiaのAngela I. Simatupang氏やACIIAのMichael Gallego氏による開会挨拶がありました。その後、インドネシアのSMEに関する基調講演や、IIA Global BoardのSally-Anne Pitt氏による内部監査の現状に関する講演が行われました。
午前のセッションでは、Chairman of International Internal Audit Standards Board IIAでありExecutive Vice President & Chief Auditor. AlGの毛利氏とAngela氏による新しいグローバル基準に関するパネルセッションがあり、私も非常に興味深く聞き入りました。午後のセッションでは、サイバーセキュリティやガバナンス、コミュニケーションに関する議論が展開され、各分野の専門家たちが最新の知見を共有しました。
3-2. Day 2: 2024年8月29日
2日目は、毛利氏による内部監査のトランスフォーメーションに関するパネルセッションから始まりました。私が特に注目していたセッションで、AIGでのグローバルベストプラクティスに関する示唆が多く、非常に参考になりました(詳細は後述)。
その後、公共サービスの最適化における内部監査の役割や、サステナビリティレポートに関するセッションが行われました。午後には、生成AIを活用した内部監査のデジタルトランスフォーメーションに関するセッションもあり、これからの内部監査の未来を見据えた議論が展開されました。
4. アジア大会の雰囲気
バリ島のヌサドゥアコンベンションセンターで開催されたこの大会は、リゾート地の雰囲気が漂う穏やかな場所で行われました。気候も東京より涼しく、歩いているだけでとても気持ちが良かったです。
参加者を見渡すと、非常に女性や若手が多いのが印象的でした。日本では白髪の男性が多い内部監査の世界ですが、国際的には若手や女性にも人気があり、全く異なる光景が広がっていました。日本でもこのような変化が必要だと強く感じました。
また、会場には開始の1時間前に到着しましたが、人が少なく最初は会場を間違えたのではないかと思うほどでした。開始時間になってもまだ始まらず、数十分遅れてようやく開始されたのも、インドネシアの時間感覚を感じさせるものでした。日本とは異なるこのゆったりとした感覚も、個人的には非常に心地よく感じました。
5. 印象に残ったセッション
ACIIAアジア大会に参加して、多くのセッションが行われましたが、その中でも特に印象に残ったセッションをいくつか詳細にご紹介します。
5-1. OPENING CEREMONY
大会初日のオープニングセレモニーは、インドネシアの文化を感じる壮大な演出から始まりました。特に印象的だったのは、インドネシアの伝統舞踊であるケチャダンスのパフォーマンスです。ケチャダンスは、数十人の男性がリズミカルな「チャッ、チャッ、チャッ」という声を発しながら、一糸乱れぬ動きで円を描きながら踊るという、非常にエネルギッシュな舞踊です。
このダンスの迫力に圧倒され、会場全体が熱気に包まれました。インドネシアらしいこのオープニングセレモニーは、これから始まる大会への期待感を一気に高めてくれました。私にとっても、この地域ならではの文化を直接感じることができたことは、大会に参加した意義をさらに深めるものでした。
5-2. KEYNOTE SPEECH 2: State of the Internal Audit Profession
オープニングセレモニーに続いて、IIA Global Board 2023-2024のChairであるSally-Anne Pitt氏による基調講演が行われました。この講演では、内部監査の現状と将来の展望について詳しく語られました。
特に注目すべきポイントは、グローバルリスクのトップイシューとしてサイバーセキュリティが引き続き最重要視されている点です。Sally-Anne氏は、サイバーセキュリティリスクが現在だけでなく、今後3年間もトップリスクであり続けると説明していました。また、デジタルディスラプションリスクや気候変動リスクが今後さらに重要性を増していくという指摘もありました。
さらに、彼女の講演の中で、アジアにおける生成AIの内部監査での活用が他の地域に比べて遅れているという調査結果が紹介されました。私は内部監査における生成AI活用の研究を進めている身として、この現状を非常に深刻に受け止めました。生成AIは、内部監査のプロセスを大きく変革する可能性を持っていますが、その潜在力が十分に活用されていない現実を目の当たりにし、もっと普及活動に力を入れる必要があると痛感しました。
5-3. PANEL SESSION 1: The New Standards - Elevating the Standards, Elevating the Profession, Elevating Impact
このセッションは、今回の大会のメインテーマの一つである新しいGlobal Internal Audit Standards(GIS)に焦点を当てたもので、私にとって非常に学びの多いセッションでした。パネラーは、IIAのInternational Internal Audit Standards BoardのChairmanでありAIGのExecutive Vice President & Chief Auditorの毛利氏と、IIA IndonesiaのPresidentであるAngela I. Simatupang氏です。
このセッションでは、2025年1月から施行される新基準の詳細が解説されました。新基準は、5つのドメインと15のプリンシプルで構成されており、全ての監査人にとってのコンパスとなるものです。特に「Comply or Explain」の原則が導入されることにより、各監査人がスタンダードを満たすか、満たせない場合はその理由をしっかりと説明する責任が求められます。
この基準に基づいて、監査人は自分の判断を正当化し、組織全体のガバナンスに貢献する必要があります。例えば、ドメイン3ではボードの関与が求められていますが、組織構造上の制約から基準を完全に満たすことが難しい場合には、その理由を明確に説明することが求められます。
また、新基準における「Professional Skepticism」と「Professional Courage」の重要性が強調されました。特にProfessional Courage(職業的勇気)については、上司と異なる意見を持つ場合でも、自分の信念を貫く勇気が必要であり、それが監査人としてのインテグリティに繋がるという話が印象的でした。このセッションを通じて、新しい基準が内部監査人に求めるものが何かを深く理解することができました。
5-4. DINNER AND RECOGNITION
初日の最後に行われたのは、インドネシアの伝統舞踊をベースにしたエンターテインメントショーでした。長い一日のセッションを終えた後、リフレッシュするのに最適な時間となりました。インドネシアの文化が色濃く反映されたこのショーは、私にとって非常に癒しの時間であり、会場全体がリラックスした雰囲気に包まれました。
ショーの後には、他の参加者とのネットワーキングの時間も設けられており、同じ業界で働くプロフェッショナルたちと直接交流できる貴重な機会となりました。特にインドネシアの伝統料理を楽しみながら、日中のセッションで得た知見を共有し合うことができ、非常に有意義な時間を過ごしました。
5-5. PANEL SESSION 4: Internal Audit Transformation
2日目の最初に行われたこのセッションは、毛利氏による内部監査のトランスフォーメーションに関するもので、私が最も期待していたセッションでした。毛利氏は、AIGで実践しているグローバルベストプラクティスについて詳細に説明してくださり、その内容は非常に示唆に富んでいました。
このセッションでは、現状維持の考えを打破して、内部監査がどのように組織に最大のアシュアランスを提供できるかについて具体的な事例が紹介されました。また、Audit Strategyというコンセプトが取り上げられ、中長期的な視点で組織の進化に寄り添う必要性が強調されました。これには、コソーシングやアウトソーシングなどの選択肢を含む、柔軟な戦略が求められることも説明されました。
毛利氏の講演を通じて、内部監査の未来像が具体的に描かれ、私自身の業務においてもどのようにこれらを取り入れるべきか考えさせられる非常に貴重な時間となりました。この毛利氏のセッションは非常に示唆に富み、共有すべき内容が多いため、また別の機会に個別に記事を書きたいと思います。
5-6. INSPIRATIONAL SESSION: Stoic Philosophy - Mental Resilience for Better Impact
大会の最後を飾ったこのセッションは、哲学的な視点からメンタルレジリエンスについて考察するものでした。講師のHenry Manampiring氏は、「Filosofi Teras」や「Hitam 2045」といったベストセラー書籍の著者であり、マーケティングや広告の分野でも活躍しています。
このセッションで紹介されたストイシズム(Stoic Philosophy)は、特にメンタルレジリエンスを高めるための哲学として注目されており、自分のコントロールできる範囲にフォーカスすることが重要だと説かれました。これは、他人や過去に囚われず、自分自身と未来に対して責任を持つという考え方で、私自身も常に心に留めている哲学です。
このセッションは、監査業務に直接関連する内容ではありませんでしたが、全てのビジネスパーソンにとって重要なメンタルの持ち方を学ぶ良い機会となりました。自己管理と自己啓発の重要性を改めて認識し、日常の業務においてもこの考え方を取り入れていきたいと感じました。
6. その他の所感など
6-1. 業界のレジェンド毛利氏との会食
今回のACIIAアジア大会で、特に印象に残った出来事の一つは、大会後に毛利氏と2日連続で会食を共にできたことです。毛利氏は、内部監査業界において圧倒的な実績を持ち世界的に活躍している人物であり、私にとって憧れの存在でした。そのような方と直接会話し、大会中の短いセッションでは聞けなかった詳細な話を伺うことができたのは、まさに私のキャリアにおけるターニングポイントとなりました。
会話の中で、毛利氏が築いてきたグローバルベストプラクティスや、内部監査の未来に向けたビジョンを共有していただき、非常に刺激を受けました。また、毛利氏がボランティアでIIAの活動に従事していることを知り、その情熱とコミットメントに深く感銘を受けました。私も毛利氏のように、業界全体の向上に貢献していきたいと強く感じました。
日本の内部監査全国大会では、毛利氏は常に多くの人に囲まれており直接話す機会を得ることは非常に難しいため、このような機会を提供してくれた国際大会と日本内部監査協会の渡邉氏に非常に感謝しています。皆さんにも、こうした国際大会に参加して、自分自身の視野を広げるとともに、業界のリーダーたちとの貴重な交流を持つことを強くお勧めします。
6-2. One IIA ~世界の一体感を肌で感じる~
国際大会に参加することで、IIAが持つ「One IIA」という理念を肌で感じることができました。IIAは世界中で共通の団体であり、世界で一つのグローバルスタンダードを共有しています。また、CIA(公認内部監査人)資格も国際的に共通の資格であり、この資格を持つことで、世界中でプロフェッショナルとして活躍することが可能です。
会計士や弁護士のように、国ごとに異なる基準や資格が求められる職業とは異なり、内部監査は世界中で共通の基準に基づいて業務を行うことができる稀有な職業です。国際大会に参加することで、このグローバルな一体感を直接感じることができ、非常にモチベーションが高まりました。
残念ながら、日本からの参加者はまだ少ないのが現状です。しかし、言語の壁を乗り越えて、もっと多くの日本の内部監査人が国際大会に参加し、この素晴らしい経験を共有してほしいと願っています。私も、この魅力を日本で広め、参加者を増やすために努力していきたいと思います。
6-3. 生成AIの活用の現在地
今回の大会で特に印象的だったのは、内部監査における生成AIの活用に関する議論がまだ浅いという現状です。KEYNOTE SPEECH 2でも触れられていましたが、アジアにおける生成AIの内部監査での活用は、まだ始まったばかりであり、具体的な事例や応用方法についてはこれからが期待される段階です。
私は、生成AIの活用に関する研究を進めており、日本の一流企業と一緒に実証実験を行ったり、生成AI活用のセミナーを開催してきました。その中で得た知見を共有し、業界全体のレベルアップに貢献したいという強い使命感を感じています。生成AIは、内部監査のプロセスを劇的に変える可能性を秘めています。その可能性を広く伝え、業界を活性化させるために、今後も活動を続けていく決意を新たにしました。
6-4. 人材育成と次世代への期待
大会を通じて感じたのは、次世代の監査人材の育成が急務であるということです。会場には多くの若手監査人が参加しており、その姿勢や意欲からは、業界の未来が明るいことを感じました。しかし、日本ではまだまだ若手の参加が少なく、この点を改善する必要があります。
内部監査は、専門的なスキルと深い倫理観が求められる職業です。そのため、次世代を担う若手がこの分野に興味を持ち、積極的に学び、成長していくための環境を整えることが重要です。私はこれまでの経験を活かし、若手の育成や業界全体の活性化に貢献していきたいと強く感じました。
7. おわりに
さいごに、今回のACIIAアジア大会は、非常に多くの学びと刺激を得られた素晴らしい機会でした。特に毛利氏との会食や、IIAの「One IIA」という理念を肌で感じたことは、私にとって忘れられない経験となりました。また、生成AIの活用に関する議論がまだ初歩的な段階にあることを認識し、これからの活動に向けて強いモチベーションを得ました。
また、このような素晴らしいイベントを運営してくださるIIA(内部監査協会)の皆さまには本当に感謝です。来年のIIA国際大会@トロント(カナダ)やアジア大会にもぜひ参加したいと考えています。
この投稿を読んで、少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひ一緒に国際大会に参加して、学び合い、刺激し合いながら、業界全体を盛り上げていきましょう!
ちなみに今日は私の誕生日ですが、みなさんに国際大会の魅力を伝えたく、カフェで一人黙々とこの記事を書いていました。ぜひ、この投稿を読んで「いいね」を押していただけると励みになります。また次回の記事でお会いしましょう!