ビンテージロードバイクの剥がれない塗装
10月の京王閣自転車フリマに出かけていって、入場から5分ほどでビアンキのビンテージフレームを発見!
ちょっと見た感じかなりヤレているが、綺麗にすれば使えるだろうと思い、「これ、別に悪いところはないんですよね?」と聞いたら
「特にないです、シートステーにBianchiの彫りが入っているから本物ですよ!」と
見た感じは1980年頃のロードバイク用フレーム
パイプはコロンバスらしい(ステッカーが貼ってある)のでわりと高級車
サイズは520くらいなので、ちょうどいいしジャンクなので値段も安い
出店者に「これください!」というと、え?本当に買うんですか的な目をされたがw そのまま購入し持ち帰った。
家に帰ってよく見てみると、トップチューブにあるブレーキアウターガイドが切り取られていて、その部分にテープのようなものが貼られている。シートチューブのフロントディレーラー台座も同様に切り取られてなんだかわからないテープが貼られている
そしてダウンチューブにあるはずのシフトレバー台座も同様に切り取られている
この元オーナーは何がしたかったのか?
切り取られているのは、すべてバンド留め部品が存在するものだから、すべてバンド留めに変えたかったのか?
しかも、切り取り方が杜撰で、下の台座がちょっと残っているような状態。切るなら切るでちゃんとやれと言いたい
綺麗にするには再塗装が必須なわけであるが、その前に切り取られた部分の修正が必要なので、0.5mm程残っている台座跡を鉄ヤスリで削って平らにし、そのあと超硬バイトで均していく、この場合、超硬バイトの刃はとても役に立つ、カンナで削るように僅かな出っ張りを綺麗に削ぎ落とす
平らになったところで、サンドペーパーを使って高さを均していく
さて、何箇所かある切り取り箇所を綺麗にして均しているために、塗装がハゲハゲ状態となっている。
やはりビアンキなのでキレイなチェレスタに塗りたいところ
ということで塗装の剥離に入る
フレームの塗装剥離は何度かやったことがあるので、さほど問題にはしていなかった(これが大きな間違い)
塗装を剥がすには剥離剤を塗って、塗装が浮いたところでプラスチックのスクレーパーやスポンジなどで水で流しながら取り除いていく
よく、youtubeで塗装剥離を行っている動画があるが、大体の人は剥離剤を塗って、大して剥がれていない状態のときに金属製のスクレーパーでガシガシ剥がす・・・という画をよく見るが、そんなことをしたら母材に傷がついてしまい、その素地の仕上げにまた時間を費やすので、そんなことはしないでほしい。ちゃんと塗装が浮き上がってから、水圧で流すか、傷のつかないスクレーパーでやってほしい。
なぜ、金属製のスクレーパーでやる必要があるかというと、ちゃんと下層まで剥離剤が届いていない。その原因は剥離剤が効く前に乾燥してしまい効力がなくなっているためである。特に夏場では乾燥しやすいので、剥離剤を塗布したら、乾燥しないようにレジ袋などで覆って感想を防ぐ、下層まで届いてない場合は剥離剤をもう一回塗るという対策が必要
さて、フレーム塗装の剥離を行う場合は、Holtsの塗装剥がしを使っている。普通にDIY店などで購入できる剥離剤としては、一番強力だと思う。剥離剤に関しては気温が低いと効果が弱い。でもこのHoltsの製品は寒くても割と効果が高いので使っている。
ビニールシートを広げ、フレームを置いて剥離剤を塗っていく。この剥離剤を使うときは、手袋・メガネ・マスクは必ず装着すること。
強い剥離剤は皮膚につくと激しい痛みを感じるので、このようなもので保護する必要がある。皮膚に一滴ついただけでも30秒ほどで激しい痛みがあるくらいなので、目などに入ってしまうと失明の恐れもあるのは明白
くれぐれも防御装備を怠らないでほしい
冬なので30分ほどおいて、様子を見る
いつものようにメラメラと鱗のように塗装が剥がれている様子がない
プラスチックのスクレーバーで擦ると、上層のクリア層とデカールなどだけが溶けて剥がれる
古いビアンキは現代のビアンキに比べて、ちょっとくすんだようなチェレステ(トルコ石のような色)なのだが、それはクリア層の黄変であることがわかる。
ということで、クリア、デカールがきれいに剥がれたところで、クレンザーをスポンジにつけてガシガシ洗う
こうすることによって、新たな塗装の下地ができる
一応この状態で、各パーツを組み付けてみて異常がないか確認をしてみる
ヘッドパーツが届いてなかったので、乗ることはできないが、一通りパーツは異常なく取り付けられるようだし、フレーム自体の狂いも殆どなさそうである
前述の台座部分を均してグラインダーで磨いてみるとそれは見事にキレイな素地が出てくる。まるでクロームメッキされたような美しさである
そこでラグ部分を磨いてクリア塗装なりレジンを塗るなりして、メッキラグのように出来ないかとひらめく
となると、最低でもラグ部分の塗装剥離が必要
でも、あれだけ素地が綺麗ならば、チネリのスーパーコルサのようにシートステーやチェーンステーも素地を磨いてメッキ仕上げのようにすればいいのでは
そして、塗装剥離のラビリンスに入ってしまうわけである
前回はHoltsの剥離剤で見事失敗したわけであるが、それならと違う剥離剤を試してみる
SNSリールなどで時折見かける、水のような無色透明でさらさらした液体をかけると見事に塗装が膨れてきて水をかけただけでもツルリと剥がれてしまうアレである
Amazonで発見できたので早速購入し試してみる
説明書は中国語と英語で書かれているのだが特に注意事項などは無いようなので、塗装面をきれいに洗って乾燥させて、その魔法の水をかけてみる
その後、何時間経ってもなんの反応もない
やはりこの塗装は45年も経っているので、経年変化を起こしていて現代の剥離剤では剥離できないのか?と思えてくる
それならば
プロ用の剥離剤を使うしか無いと思い、プロ御用達の剥離剤を購入
これで落ちないわけがないレベル
これも、Amazonで購入し早速トライ
よくあるようなドロドロとした液体で、匂いもそれなりにキツイ
そして、最強であるがゆえにゴム手袋をしていても、ゴム手袋を通して皮膚まで到達してしまうほどの強さ!
これは期待できる!
塗布して3時間あまり・・・
見た目にはなんの変化もない><
メーカーに質問をしてみると、冬場に使用するときは缶をよく振って撹拌するようにとのこと
それなら「冬場」とかいう曖昧な指示ではなく「何度以下のときは」とかにして欲しいなと
同じ冬場でも地域によってかなり大きな差があるからね
温度が下がると分離とかするのだろうか?
気を持ち直して、再度トライ
今度は使用前によく降って、またフレームのパイプの中に高温ホッカイロを詰めて温度を上げる
さあ、これで剥がせるだろうと高を括っていたが、数時間後、目視した限りでは変化なし><
しかし今度はスクレーパーでガシガシやると少しは剥がれる
でも、それって剥離剤なくても同じじゃないか?という感じがする
再度、メーカーに尋ねてみる。このメーカーにはもう一段強い製品がありそれを使ってみるという選択肢はあるかきいてみたら、それは弊社でも最強のものだから試す価値があるとのこと、しかし、そちらは酸性なのであとあと錆びる可能性が少なからずあるということであった
いや、それはだめでしょ!
例えばマジックリン(アルカリ性)みたいなもので洗浄しても錆から逃れられないのかと聞くと、どうしても残ってしまう部分はあるので、錆びる可能性のあるときはオススメしないとのこと
やっぱ、だめじゃん><
最近は、剥離剤でも有機溶剤を使わない水性の剥離剤というものが出来ている。人体への薬傷の問題や、環境への対応ということらしい
この水性剥離剤の強さだが、塗料の種類にも依るが、有機溶剤系と遜色ない効果があるらしい
同じような成分のもので、強さの度合いを変えるより、違うアプローチの製品を試す価値があると思って、こちらも購入
念の為、一番容量の小さなものでトライ
今度は、メーカーではなく、AIに聞いてみた
すると母材を温めるよりも、剥離剤を温めたほうが効果があるとのこと
なるほどね!と思いつつ、お湯を沸かして、紙コップに剥離剤を分け湯煎して温度を上げる
そしてその水性剥離剤を刷毛で塗る
水性と言ってもかなりなアンモニア臭がする
ちょっと黄色味がかったペースト状で、夏季常温保存のマーガリンくらいのトロトロさ
説明書によると5〜30分くらいで剥がれるらしいが、1時間ほど放置しても、なんの変化もなし。例によってスクレーパーで擦ってみるが全く剥がれない><
これも駄目だな
3度目の正直で、プロ用剥離剤を試す
今回は、先程のように湯煎して剥離剤を温めてから、以前よりも厚めに塗布
そして断熱シートでくるんで、中に高温ホッカイロを入れて温める
3時間放置・・・
さて、断熱シートをめくると・・・
なんの変化もなし
淡い期待が、淡く散った
またカーボン製スクレーパーで擦り落とす
不思議なのは、それで剥がれるところと、全く剥がれないところがあること
その差は何なのかサッパリわからない
今回は、普通の塗装剥離のように、力を入れなくてもトゥル〜と剥がれる部分が8センチほどあった。なぜそこだけが?
結果から行くと、全面積の7〜8割は剥離できたかもしれないが、肝心な複雑な部分とかは殆ど効果なし
直線部分とかだとサンドペーパーとかでも剥がすことはできるけれど、複雑なところはそうはいかない
さて、以上のような結果からいくつかの選択肢が出来上がる
1つ目
夏になるまで待ってみる
剥離剤は化学反応なので周囲温度が高ければ効果は出やすい
実際に剥離剤は気温に左右される割合は大きいので、夏にやればちゃんと剥がれる可能性は高い
2つ目
コンプレッサーを買ってサンドブラストして塗装を剥がす
この方式だと、複雑な部分の剥離もクリア
剥離したあと、磨くのがめんどくさい
3つ目
グラインダーナイロンホイールで塗装を擦り落とす
実際にベンチグラインダーでやると塗装は剥がれるし、仕上げも綺麗
4つ目
紙やすりで塗装を剥がす
大きな労力と手間、塗装の削りカスがでて近所迷惑
5つ目
水のような剥離剤を温めて再チャレンジ
まあ、やってみる価値はあるかも
あなたならどれを選びますか??