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2024北斗旗全日本空道無差別選手権大会レポート

例えば、皆さんにとって、人生で譲れないものは何でしょうか。

誰からも理解されなくても、誰からも認められなくても譲れないもの。自分は、空道というスポーツが譲れないそれです。この競技を通して、いただいた楽しさ、嬉しさ、悲しさ、悔しさ。そのどれもが、私にとってかけがえないものです。

さて、そんな空道というスポーツの全日本大会が東京・代々木国立競技場第二体育館で行われました。今回の大会は、年に一度、秋に行われる無差別級での全日本大会。以下、今回の北斗旗レポートになりますので、ですます調ではなく、口語体&敬称略で書かせていただきますので、ご了承ください。

北斗旗空道無差別選手権

【大会展望】
まず、今回の北斗旗。注目点としては、世界大会後で初めて開かれる無差別級のトーナメントで、各階級の-230, -240, -250, -260, 260+で誰がベスト8、つまり決勝トーナメントに残るのか、ということが一つのポイントになると考えていた。

というのは、今回は無差別選手権ということもあり、決勝トーナメントの前に各階級での椅子取りゲーム(決勝進出者を決める予選)があって、すなわちそれが来年2025年のワールドカップ、2026年の青森国体、2027年の第7回世界大会に繋がるからだ。補足すると、北斗旗「無差別」の本当の無差別級トーナメントは8名のファイナリスト達が決定したのちに決まる。

戦前の予想。私自身は全日本空道連盟の大会展望で挙がっていた通り、まず260+の矢倉から上がってくる前年覇者の西尾勇輝、-230の矢倉から上がってくる目黒雄太、佐々木龍希の3名は固いかと思っていた。

注目は、-240~-260から上がってくる選手達で、ここは総本部の寮生2名(中上悠大朗・佐々木虎徹)、日本代表経験のある谷井翔太などが上がるかな…、という予想で、残り2~3枠は当日のトーナメント表を見ない限りは分からない、というのが正直なところ。


2024年11月2日(土)18:00
羽田空港着。東京は雨。あいにくの天気だが、雨の東京は平時よりも人通り少なく、気温が低いため過ごしやすい。宿泊先にチェックインする前に、上野御徒町にあるBARで簡単な夕飯。そのお店のマスターは、たまたまUFCとか総合格闘技が大好きで。空道や北斗旗の話を楽しくさせていただいた。明日は必ず良い大会になる。

レモンサワー&おつまみ@上野御徒町


2024年11月3日(日)朝10:00
代々木国立第二競技場着。
前日の雨が曇り空をすべて吐き出してくれたように当日は快晴に。気持ちいい。ある小説家が言っていた。人が空を見上げるとき、それは何かに対して祈りを捧げるときなのだと。ーこの空の下で大会の成功を願った。

国立競技場代々木第二体育館(本大会の会場)

―閑話休題。話を北斗旗に戻す。
まず、決勝トーナメント前、各階級の戦いは有力選手による予想通りの実力と、無名選手による予想外のパフォーマンスにより、一回戦から激戦になった。ファイナリストが決まる前の各A~Hブロックまでの詳細は省くが、特に-230~-240は2年程したら日本代表の顔ぶれも今と全く異なるものになると感じた。以下、写真にてA~Hブロックまでの矢倉(トーナメント表)と試合結果を示したい。

A~Bブロック(-230クラス)
C~Dブロック(-240クラス)
E~Fブロック(-250クラス)
G~Hブロック(-260クラス)

【決勝トーナメントレポート】
さて、ここからは決勝トーナメントについて。ベスト8以降の戦いを。A~Hブロックの予選の結果、決勝進出者は以下の8名に決定。

・佐々木 龍希(総本部)
・目黒 雄太(長岡支部)
・佐々木 虎徹(総本部)
・谷井 翔太(横須賀支部)
・中上 悠大朗(総本部)
・服部 昌洸(横浜北支部)
・林 洸聖(佐久支部)
・西尾 勇輝(大阪南支部)

決勝トーナメント前の抽選の結果。トーナメントの組合せは以下に。
ここからが本当の北斗旗をかけた戦いだ。

  1. 林 洸聖 vs 中上 悠大朗

  2. 佐々木 虎徹 vs 服部 昌洸

  3. 佐々木 龍希 vs 西尾 勇輝

  4. 谷井 翔太 vs 目黒 雄太

準々決勝 第一試合
林 洸聖 vs 中上 悠大朗
この試合は、-260クラスと-250クラス新鋭同士の激闘に。ジュニアクラス出身者の戦いは基本的に蹴り技と掴み打撃中心の戦いになりやすいが、とにかくこの二人は打撃・組ともに穴がない。延長戦、手数で上回った中上悠大朗へ凱歌が挙がったが、空道連盟の映像(勝利者インタビュー)でもあったように中上選手自身は全く勝ったと思っていないとの事で、その意気も素晴らしい。激闘を繰り広げた両者のさらなる飛躍が期待された。

準々決勝 第二試合
佐々木 虎徹 vs 服部 昌洸
この試合は、空道を長年見ているヒトにとっては、かなりセンセーショナルな結末だったように思う。寮生として、秋の関東予選を制した佐々木虎徹の勢いは凄まじいもので、サウスポースタイルから繰り出されるストレート系の打撃、左ハイキックで頭一つ抜きんでた存在のように思った。その中で、服部昌洸が本戦腕十字で一本勝ち。

この結果は、私もとても嬉しかった。というのは、単純な試合の勝ち負けを越えて、旧世代vs新世代という図式の中で、長年空道に身を捧げてきた服部選手の努力が佐々木選手の才能を上回ったと思うからだ。来年、-240クラスの日本代表をかけた戦いがより楽しみに。


準々決勝 第三試合
佐々木 龍希 vs 西尾 勇輝
この試合は、佐々木選手の棄権により西尾選手の不戦勝という結末に。
2024年、日本空道の中心人物は誰でもない佐々木龍希だと思っていて。
それはもちろん、佐々木選手の輝かしい実績とパフォーマンスにもあるのだが、佐々木選手自身が寮生という立場ながら、東京で自身の支部を持たれるという決断にある。今回、アルメニアでのユーラシアカップ2週間後での大会出場で、当日の体調もすぐれなかったとのこと。もう少し、休んでも良いんじゃない?という想いも。いずれにせよ、2024年の空道界のMVPは佐々木龍希で間違いない。佐々木選手の新しいステージ・戦いを今後も変わらず応援したい。一人の空道ファンとして。

準々決勝 第四試合
谷井 翔太 vs 目黒 雄太
この試合は面白かった。-230クラス決勝では頻繁に繰り広げられていた目黒-谷井の試合で、トータル戦績はおそらく目黒選手が勝ち越しているかと思うが、今回も打投極の好試合に。この二人の試合は、明確に打撃で主導権を握りたい目黒選手と、組の攻防でリードを取りたい谷井選手、両者のスタンスがはっきり分かれるので面白い。投げ技を凌ぎ、打撃で有効打を重ねた目黒選手勝利。

普通、同じ選手同士の対戦というのは、2,3…回と回数を重ねるごとに互いの手の内が分かるため、ディフェンシブな試合になりやすいが、この2人は全くそれを感じさせない。個人的にこの目黒-谷井の試合はあと10回くらい見てみたい。

準決勝 第一試合
中上 悠大朗 vs 服部 昌洸
この試合はとても興味深く、まず準々決勝の第二試合で、佐々木虎徹を破った服部昌洸のパフォーマンスを、中上悠大朗がどのように捉えたか、という所に着目した。というのは、同門(総本部)の選手がはっきりと敗れるという姿を目の当たりにした際に、心理状況としてポジティブにもネガティブにも働きうるからだ。

結果として、この予感は前者に傾いた。本戦は拮抗した展開となり、延長で服部の老獪さを中上の勢いが上回る展開に。総本部の強さが改めて際立つと同時に、2025年の-250クラスの戦いの激しさを予感させた。

準決勝 第二試合
西尾勇輝 vs 目黒雄太
この試合に関しては、大会後の映像でも報じられたように、西尾勇輝が本戦ハイキックで一本勝ちという結果になった。この戦いの結末は中々にショッキングで。目黒雄太が明確に一本負け(打撃、寝技含めて)するというのは2014年世界大会のvs中村知大戦以来かと思う。

無差別の怖さと難しさ。そして圧倒的な現実。
ショックも大きかったが、これも空道の魅力なのだ、と観ているこちら側に、まるで踏み絵を敷いているような結末だった。何はともあれ、北斗旗を掛けた真剣の切り合いを見せてくれた、西尾・目黒両選手に敬意と感謝を申しあげたい。

決勝
中上悠大朗 vs 西尾勇輝
決勝戦。双方の矢倉を勝ち進んだ中上悠大朗と西尾勇輝の激突。体力指数は中上-250(軽重量級)、西尾270+(超重量級)で北斗旗無差別では、意外とめずらしいカテゴリー&組み合わせの選手同士のぶつかり合いだったように思う。体力指数差がある戦いはたいてい軽い階級の選手がHIT&AWAY戦法で、重い階級の選手がそれをルールの中で追いかけ捉えれるか、という展開になるが、この組み合わせはどうなる。

結論。中上悠大朗と西尾勇輝は、お互い真向勝負で本戦3分、延長戦3分をぶつかり合った。延長戦、スピードと要所要所でのテイクダウンでグラウンドでの効果を奪った中上に凱歌。私の記憶が正しければ、‐250クラス・軽重量級での北斗旗制覇は2015年(清水亮汰の初栄冠)以来かと思う。総本部の北斗旗奪取に、空道のパラダイムシフトと温故知新の両方を感じた。


【謝辞】
今回の北斗旗レポート執筆にあたり、まず第一の御礼を、本大会に出場・激闘を繰り広げていただいた選手の皆様、大会を運営してくださいましたスタッフの皆様に、敬意と感謝を申し上げます。また、ジュニアクラスの補佐もある中、東京への渡航&北斗旗観戦を快諾していただきました所属支部の支部長である札幌南支部の田中俊輔支部長に厚く御礼を申し上げます。そして、本レポートを最後まで読んでくださいましたnoteの向こう側にいるすべての読者の皆様へ、最大の感謝を申し上げます。ありがとうございました。

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