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自分でも忘れていたこと
現在電子出版のため、毎日のように、過去綴った原稿を読み返しています。その時その時に色々調べものもし、結構時間とエネルギーを費やして創り出したものを、電子出版という手段でいわば「復活」させることができるようになったということは、本当に素晴らしいことだと思います。
私は、これから60代後半に入っていきますが、この歳になると、いつ何時お呼びがかかるか分からないという感覚が強くなってきます。したがって、自分がやりたかったことはやり遂げておきたいし、誰かに言いたいことは、ぜひ遺しておきたい(「のこす」は「残す」ではなく「遺す」方です)と強く思うようになりました。そういう意味では、いくつもの大学で講師という役割を与えられていることは幸いだと、本当に思います。
話は戻りますが、かつて書いた原稿を読み返していると、面白い発見がたくさんあります。その一つが、自分でも忘れたいたことに遭遇することです。昨日も、「投資の英語年金の英語」という、かつて近代セールスという銀行や信用金庫などで働く人たち向けに書いた原稿を読んでいて、こんな下りに出会いました。それは、一時期通訳学校に通っていた頃(40歳代後半だったと思います)で起こった教室でも出来事でした。ここからは引用です。
========================================================また、後年、翻訳の学校に通ったことがある のですが、その最初の授業に出てきたのが “yield” でした。この時先生が唐突に「yieldにはいろんな意味があるが、金融では利回り、ではメーカーに行ってこの言葉を聞いたら、普通はどう訳すでしょう?」と質問してきました。この時は、「利回り」しか頭に浮かばないまま答えられず、時間切れでした。先生の答えは「歩留まり」。通訳などをやっていたら、大変な誤訳をするところでしたね。この時に先生の表情(そんなことも知らないのかという顔)とともに、この"yield"のもう一つの意味はしっかりと覚えました。…あることばを聞いた時の風景、そのことばを発した人物の表情などと一緒に入ってきたことばは、決して忘れないものです。
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"yield"ということばの「歩留まり」という意味は、この時に覚えたんだと、記事を読み返して思い出したという訳です。自分を振り返ることの楽しさを知った思いでした。
考えてみると、こんなエピソードばかりを本にしたいと思っても、従来の商業出版の方法では、出版社の編集者がよほど「面白い、売れるかもしれない」と思ってくれなければ本になることはなかったかと思います。今や、どんなつぶやきや独り言であろうと、本として「遺す」ことができる。自分がいなくなった後も、誰かが読んで、クスッと笑ってくれると愉快だなと思います。電子出版、書き下しはしばらく先で、当面過去に書いたものの棚卸し原稿を復活させることが続きそうです。
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