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Connecting the dots

大学の授業でSteve Jobsのスピーチをよく題材に使います。そのひとつが2005年スタンフォード大学の卒業式で行った"Stay hungry, stay foolish."を餞(はなむけ)の言葉として送るスピーチです。

心に響くというか突き刺さることばが溢れているスピーチで、だから授業が成立つ(笑)のですが、やはり一番はこの"connecting the dots"です。

人はその時その時に夢中になれることがある。夢中になっている時は、その時そのことが将来自分の成功につながる、これをやっていればお金儲けできるなどということは露ほどにも思っているわけではないのです。しかし、それが後に、大きな意味を持つ、人生においての大きな突破口につながることがあるということを、わかりやすい話で伝えてくれています。

この最初の話(The first story)の締めくくりのことばは、" Again you can't connect the dots looking forward. You can only connect them looking backward."です。人生で起こってくるさまざまな出来事(dots)の意味、あるいはそれらがどう繋がってくるのかを予想することはできないが、後から振り返るとそれがわかるという趣旨です。

意味のあることばが姿を変えて幾度も現れてくる
このスピーチを何回聴いても飽きないのは、その時々で意味合いを変えて自分に語りかけてくれるような感覚を持てるからだと思います。それは、このスピーチに限らず、人生で出会う多くの人々の語り、本、映画そのほかあらゆる情報に共通することだと思います。別の見方をすれば、自分がいるその状況によって、同じ言葉から受ける感覚が違ってくるということかもしれません。このスピーチはそういう意味で、多くの良いことばに接することの大切さを教え続けてくれているように思います。

原典にあたることの重要性
このスピーチを題材にして行う授業で、必ず学生に伝えていることがあります。それは、おそらく世の中の多くの人がSteve Jobs自身の言葉として伝えていることばとして覚えているのが、冒頭に挙げた"Stay hungry, stay foolish."です。

Steve自身がこのスピーチの中で言っていますが、この一節は、Stewart Brandなる人物が、発行していた雑誌"Whole Earth Catalogue"の最終号で読者に送ったメッセージでした。ネットには、この"Stay hungry, stay foolish."についての記事が多く掲載されています(そうしたものの例のリンクを一つ貼っておきます)が、このことばの原典はStewartであってSteveではないことを無視しているように思います。なんだか、「Steveはあのことばに次の意味を込めたのだ」という記述が多いように思いますが、それをいうならStewartに立ち戻るべきだと私は思います。

「誰が伝えようと、そのことばが自分にとってどういう意味を持つかが大切なんだ」という意見もあるでしょう。でも、伝聞と元々の発言者のことばを区別する態度、つまり原典にあたる態度も、決して忘れてはいけないと思うのです。この原典にあたることの重要性を伝えた本として、印象に残っているのが、烏賀陽(うがや)弘道さんの「フェイクニュースの見分け方」という本です。リンクを貼っておきます。(烏賀陽さんは、Noteでも執筆されています)


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