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TOEIC生みの親の嘆き

数日前に近くの書店に立ち寄った時に気になった本がありました。本のタイトル「英語が出来ません」が刺さりました。著者は、刀根館正明さん、朝日新聞の記者と末尾に紹介があります。

タイトルのイメージとは異なり、自分が英語が不得意という内容の本ではなく、長年日本の英語教育や日本人が英語苦手問題に興味を持ち、朝日新聞、その関連誌のみならず一般書籍で多く蓄積された知見をまとめた本です。

また、昨今多くみられる例えば小学校英語教育賛成派と反対派のような対立軸を据えて、どちらかに与する立場で書いているものでもないというところも、特徴といえば特徴かと思います。

最近話題になった大学入試への外部試験の導入問題にも触れており、英語に限らず、教育問題一般に関心のある読者にもニーズを感じてもらえそうだし、私のように英語教育の一端をわずからながらでも担っているものにとっては、さまざまな問題に対し多くの専門家(英語教育の専門家だけでなく)に対して行ったインタビュー内容を書かれていたりで、非常に興味を惹かれるものでした。また、おまけのように、各章の後ろに「幕末英語事始」というコラムもあり、江戸末期から明治にかけての通詞などの英語専門家の働きなどに興味のある私にとっては、さらに「読んでみたい」という意欲を湧かせるものでした。

中味については、あまり触れると「ネタバレ」となり、著者にご迷惑がかかるかもしれないので、一つだけ触れると、TOEICという試験の「生みの親」(始まったときの物語もなかなか面白いものです)である北岡靖男さんの言葉が印象に残りました。曰く(TOEICが)「英語学習のための物差しをつくるつもりだったのに、英語学習を強制するための道具になってしまった」

Steve Jobsが自分の会社から追い出されてしまったように、いったん作って公になったものは、もはや自分のものではないということなのでしょう。

英語について、さまざまな角度から興味のある人、英語教育になんとなく疑問や不満を持っている一般の方々から、英語に何らかのかたちで携わっている人たちにも、楽しく読める本ではないかと思いました。


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