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「Apple アプリ外決済誘導の容認」はアプリエコシステムを変容させるか 〜世界で進むアプリプラットフォーム規制の現状〜

■ はじめに

こんにちは!Reproの稲田宙人(@HirotoInada)です。

8月末に某通信社が発表した「アップル、他社決済も容認 米アプリ開発者と合意」というニュースによる誤解が物凄い勢いで広まっていた為、整理のツイートをしたところ若干界隈でプチバズりをしたことからも、近年のアプリプラットフォームへの規制厳格化・規約変更はアプリデベロッパーの注目を集めていると言えます。

今回は、8月後半からのAppleを始めとしたアプリストアプラットフォームへの法規制の厳格化・規約変更により今後何が変わるのか・何が変わらないかをまとめ、その上で現状の各国でのアプリストアプラットフォームへの規制状況を踏まえて想定されるアプリエコシステムへの影響と対応策を論じます。

尚、今回取り上げる規約変更や法規制の強化に関しては、僕のPodcast「Mobile Update // モバイルアップデート」の以下のエピソードで話していますので、併せてご覧頂くと理解が深まるかと思いますのでぜひ。

注意:
2021年9月10日段階の情報に基づいた記事です。
最新の情報・正確性に関してはご自身であたるようにお願いします。

1. 今回の変更内容の概要

1-1. 何が起こっているのか?

まずは、この2週間でアプリストアプラットフォーム、とりわけAppleのApp Storeに関してどのような変更があったのかの概要をまとめます。

■ 変更内容一覧
①世界:Appleがアプリ外でのメールなどを用いた外部決済手段の案内・誘導を容認 8月26日

②韓国:世界で初めてApple・Googleのアプリ内課金手段の強制を禁止する法律が議会で議決 8月31日

③日本:Apple 「リーダー」アプリに限りのアプリ内での外部決済手段への誘導を容認 9月1日

1-2. 何が変わるのか?

では、この規約変更を受けて、具体的に何が可能になるのか・今後もNGな行動は何なのかをまとめます。(②の韓国での法案化は現状は世界全体には適用されないので割愛します。)

■ 今後可能になること
①世界:Apple アプリ外誘導による決済容認を受けて
全てのアプリがアプリでのメールなどを用いた外部決済手段の案内が可能

③日本:Apple 「リーダー」アプリに限りのアプリ内での外部決済手段への誘導を容認を受けて
「リーダー」アプリに限ってアプリにアプリ外決済ページへの誘導リンクを設置可能
■ 今後もNG
・アプリでユーザーに課金させるのにプラットフォームの決済手段ではなく、外部決済手段を用いる

・プラットフォームデフォルトのアプリストア以外からユーザーにアプリを提供する = サイドローディングの禁止

「リーダー」アプリ以外がアプリで外部決済手段の案内やその誘導施策を行う

注目するべきは、①規約変更の対象アプリ・②決済手段・③決済する場所の3点です。

まず、①規約変更の対象アプリに関しては、アプリ内に外部決済手段のリンクを設置できるのはあくまでも「リーダー」アプリのみで、全てのアプリが容認されたわけではない点に注意が必要です。
次に、②決済手段・③決済する場所に関しては、今回容認されたのはあくまでもアプリ外で外部決済手段を用いるように誘導することであり、アプリ内で外部決済手段を用いることは引き続き禁止がされている点が重要です。

この一連のニュースを受けて多くの消費者から「Kindleのアプリ内で遂に本が買えるようになる!」という意見が挙がっていましたが、恐らくそれは実現しないでしょう。理由は単純明快で、依然アプリ内での外部決済手段は容認されていないので、アプリ内で決済を行わせる限りはAmazonはAppleに課金手数料を支払う必要があるからです。

2. アプリ内課金手数料の仕組みと規約変更詳細

2-1. どのようなコンテンツにアプリ内課金を用いる必要があるのか

まずは、そもそもどのようなコンテンツがアプリ内課金の対象(=アプリ内課金を使わなければいけない)なのかを整理しましょう。

■ アプリ内課金を用いらなければいけない
・アプリ内のコンテンツに対しての課金(基本は非物理)
例:ゲームアプリ・VOD・音楽ストリーミング・漫画など

■ アプリ内課金を使用しなくて良い
・アプリ外のコンテンツ・サービス・人に対しての課金(基本は物理)
例:EC・フリマ・フードデリバリー・英会話レッスンなど

一連の規約変更の影響があるアプリカテゴリに関しては第3章で詳述しますが、まずは上記の基本原則を理解するのが重要です。
基本は、デジタルコンテンツの都度課金・サブスクリプション課金に対して手数料が発生する仕組みになっており、第1章末でも触れたKindleもアプリ内課金の対象になっているのが分かるかと思います。

尚、各OSプラットフォーム上でのアプリ内課金に関する規約詳細に関しては、手前味噌ですが拙著「アプリ内課金の手数料回避は可能なのか?~ストアガイドライン輪読~」を参照してください。

2-2. 変更内容の詳細

次に、一連の変更内容の詳細をまとめます。

①世界:Appleがアプリ外でのメールなどを用いた外部決済手段の案内・誘導を容認
全てのアプリを対象に、アプリ外でのメールなどを用いた外部決済手段の案内が可能になります。アプリストア外での決済に対しては同様、手数料の徴収対象外です。

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Source:Apple, US developers agree to App Store updates that will support businesses and maintain a great experience for users

現状のガイドラインでは以下の2つの行為が禁止されていますが、このうち②ができるようになります。

①アプリ内で外部決済手段を案内・誘導する
②アプリで取得した情報を元にアプリ外で外部決済手段を案内・誘導する

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Source:App Store Reviewガイドライン 3. ビジネス>3.1.3 その他の購入方法

「アプリ外でのメールなどを用いた外部決済手段の案内」がどのような導線を意味するかと言うと、アプリ内でメールアドレスを取得してメールマガジンで外部決済ページに案内するような導線を意味ます。
Appleのプレスリリースでは「メールなど」と記載があり、アプリ外でのコミュニケーション手段としてSMS・LINE・アプリプッシュ通知などが含まれるのかなどの具体的な内容は今後のガイドライン改定が待たれます。

②韓国:世界で初めてApple・Googleのアプリ内課金手段の強制を禁止する法律が議会で議決
韓国でApple・Googleのアプリストアプラットフォームデフォルトの決済手段の利用強制を禁止する法案が議会で議決されました。韓国の立法制度上、最終的な法制化には韓国大統領の署名が必要になりますが、成立目前まで来ていると言えるでしょう。

この法律が成立すると、韓国のアプリデベロッパーは、プラットフォームデフォルト以外の独自決済手段を自由にユーザーに提示することができるようになります。また、この法律に違反した場合は、Apple・Googleは韓国内での売上の3%が罰金として科せられる実効力を持った画期的な法律となっています。

アプリストアプラットフォーム名指しの政府規制の法案化は世界で初めてであり、今後このドミノがどこまで倒れていくかは注目が必要です。
尚、韓国での法制化進行の背景やその影響に関しては第5章で詳述します。

③日本:Apple 「リーダー」アプリに限りのアプリ内での外部決済手段への誘導を容認
日本公正取引委員会(JFTC)の調査により、Appleは「リーダー」アプリに限り、アプリ内に外部決済ページへの誘導リンクを設置可能にすると発表しました。この規約変更は2022年初頭に全世界に適用される予定です。

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Source:Japan Fair Trade Commission closes App Store investigation

これまでアプリ内で外部決済手段や決済ページを案内すること・誘導することは禁止されていました。

ここで気になるのが「リーダー」アプリの定義です。
以下はAppleのガイドラインですが、「リーダー」アプリは雑誌・新聞・書籍・オーディオ・音楽・ビデオアプリと定義されています。より具体的にはSpotify・Netflix・各ニュースパブリッシャーなど、今まで散々Appleと規約を巡って対立してきたカテゴリのアプリが当て嵌まります。

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 Source:App Store Reviewガイドライン 3. ビジネス>3.1.3(a)「リーダー」App

今までアプリ内から外部決済手段への案内・誘導をすることは禁じられていましたが、今回の規約変更によりアプリ内にリンクを設置して直接外部決済の案内をすることが可能になります。

このガイドラインの穴を上手く突いていたので有名なのがNetflix・Spotifyです。
まず、Netflixはアプリ内には登録機能は設置せず、カスタマーサービスに問い合わせ加入させることで手数料を回避しようとしていました。

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Source:アプリ内課金の回避法まとめ (2019/2月)

次に、Spotifyです。Spotifyでもアプリ内に登録・決済機能は実装せずに、ウェブページに飛ばす導線を設計しています。しかし、アプリ内から外部決済ページに飛ばすのはこれまでNGだったはずです。これをSpotifyがどう回避しているかというと、遷移したページではあくまでもアップグレードできないようにして、ユーザーに課金ページに自ら遷移してもらい、間接的な決済誘導をすることで手数料を回避しているのです。

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Source:アプリ内課金の回避法まとめ (2019/2月)

両社ともにガイドラインを上手く読み解き、巧妙に手数料回避設計をしていましたが、今回の規約変更により「リーダー」アプリはアプリ内に直接外部決済ページへの誘導・案内が設置可能になるので、上記2社中心に当該カテゴリのアプリの課金導線設計は変わっていきそうです。

2-3. 今後可能になる課金導線設計

さて、ここまでアプリ内課金の基本原則・規約変更内容の詳細をまとめてきましたが、本章の最後に今回の規約変更を受けて可能になる課金導線設計をまとめます。

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上記新旧比較に、外部決済をする場所・決済を行う場所の2つの観点を入れると以下のように整理できます。

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あくまでも、外部決済ページへの誘導がアプリ内外で容認されただけで、アプリ内での課金手段は依然Appleのアプリ内課金システムを用いる必要がある点に注意してください。

ここまでの議論を踏まえると課金導線設計は以下のように図示できます。

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3. 想定される影響と対応

本章では、Apple・アプリデベロッパー・サードパーティツールベンダーの3者の観点から、今回の規約変更がどのような影響を及ぼすか・それにどう対応するかを考察します。

3-1. Apple
■ 影響
まずは、今回の話題の当事者であるApple自身への影響です。今回、Appleは一部ながらも外部決済手段への誘導を容認したので、当然アプリ内課金に基づく収益の減少が影響として考えられるでしょう。現状、売上高ベースではアプリ内課金などを含むサービス経由の比率は20%近くまで上昇しており、利益ベースで見れば大きな影響があるのは想像に容易いです。

まず、韓国でのアプリ内課金手段の強制禁止です。韓国のアプリ内課金売上は世界第4位の$5.6Bですが、これは世界全体の売上の約4%に該当します。今回の措置によりAppleはこの市場を失う可能性があります。

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Source:App Revenue Data (2021)

売上高ベースでは数値としては大きくない為あまり影響がないように見えますが、韓国はその特性上、今回の法制化はその失う売上高の以上に大きな影響が世界中に波及する可能性があります。こちらに関しては、第5章で詳述します。

次に、「リーダー」アプリ内の外部決済手段の案内・誘導の容認です。App Annieによると、AppStoreの非ゲームアプリの売上に占めるサブスクリプション経由の割合は実に97%となっており、ほぼ全ての売上が近年はサブスクリプションモデルのアプリから発生していると言えます。

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Source:App Annie The State of Mobile 2020

上記はあくまでも非ゲーム全体ですが、今回規約変更の対象となる「リーダー」アプリはVODを中心にAppStoreの売上ランキング上位の常連である為、一定売上減少の可能性はありそうです。

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Source:Worldwide Consumer Spend in 2019

■ 対応
このように、Appleは今回の規約変更により売上減少の恐れがある訳ですが、どのような対応をしてくるでしょうか?ここでは、既にAppleが発表した対応策と今後予想される対応に関して考察します。

①Appleの対応策「Apple News Partner Program」:
まずは既にAppleが発表した対応策である「Apple News Partner Program」に関して。Appleは「リーダー」アプリ向けの規約変更を行う直前である8/26に対応策として、Appleの提供するAppleNewsアプリ上でのニュース配信を可能にすることで、参加ニュースパブリッシャーは通常30%の課金手数料を15%まで引き下げるパートナープログラムを発表しました。タイミングがタイミングだけに、失う可能性のある「リーダー」アプリの一つである新聞カテゴリのアプリからの課金手数料を何とかして繋ぎ止めたい強い意志が感じられます。

しかし、このプログラムは売上減少抑止にあまり効果が出ないと考えます。理由としては以下の点が挙げられます。

①元々クロスプラットフォームで提供しているパブリッシャーにとっては、アプリ外誘導の容認は影響がない
②ブランド力が強いパブリッシャーにとって、プラットフォームを通してニュースを配信することでブランド毀損の恐れがある
③プラットフォームを介すことでエンドユーザーと直接繋がられなくなり、プラットフォームにもデータを奪われる

以前から米NewYork Timesや英Finantial Timesなどのブランドが確立しているニュースパブリッシャーは自社媒体のみでの配信を公言しており、今後もクロスプラットフォームを前提とする大規模なニュースパブリッシャーはこのプログラムに参加するメリットはあまり見出せないと思います。

一方で、中小規模でアプリ専業のニュースパブリッシャーにとっては、課金手数料の削減・Appleというプラットフォームに乗っかることでトラフィックを獲得できるという2点で一定需要はあるのかもしれません。

②外部決済誘導容認の規約対象の拡大可能性:
次に、一連の外部決済誘導容認の規約の対象が拡大される可能性について。依然外部決済が容認されていないアプリ種は以下のように整理できます。

a. 非ゲーム・サブスクリプションモデル(「リーダー」アプリ以外)
b. 非ゲーム・都度課金
c. ゲーム・サブスクリプション
d. ゲーム・都度課金

このうち、a. 非ゲーム・サブスクリプションモデル(「リーダー」アプリ以外)に関しては、前述の通り大きな売上構成比を占める為、おそらく追加で容認されることはないでしょう。逆に、b. 非ゲーム・都度課金に関しては妥協策として今後追加で容認される可能性も一定あるのではないかと思います。

ゲームに関しては非ゲームと逆の対象拡大がされる可能性があります。以下は、ゲームアプリのサブスクリプション・都度課金の売上構成比ですが、近年サブスクリプション経由の売上が伸びているとは言えど、依然都度課金からの売上が大きいことが分かります。ここからも、もし対象が拡大する場合はまずはc. ゲーム・サブスクリプションが対象になるのではないでしょうか。

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Source:State of Mobile Gaming 2021

いずれにしても、まずは、アプリ内の外部決済誘導設置の容認対象を順次拡大し、最後の最後までアプリ内での外部決済手段の容認は拒否し続けるのが濃厚だと考えられます。

3-2. アプリデベロッパー
■ 影響

今回の規約変更の影響があるアプリカテゴリは以下の通りです。

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■ 対応
①外部決済誘導施策の実施加速:
今回、全てのアプリがメールなどによるアプリ外での外部決済手段への誘導が可能になった為、当該施策を実施するアプリデベロッパーは一定増加すると考えられます。

実際、今回の規約変更以前からクロスプラットフォームでサービスを提供するゲーム・ニュースパブリッシャー、登録時にメールアドレスなどを収集するマッチング・VODアプリは、規約の穴を突いて細々と同様の施策を実施していた為、今回晴れて施策として容認されたことで採用する事業者は増えそうです。

ただ、この施策を行うには構築ハードルが高い決済システムを外部に別に組む必要性がある為、急速な普及はあまり望めず、直近は資金力・開発力がある大規模なデベロッパーが採用する経過を観察するデベロッパーが多くなりそうな所感です。

②サブスクリプション型へのビジネスモデル転換:
今回、「リーダー」アプリが先陣を切って規制緩和がされたのを受けて、一部のカテゴリのアプリではサブスクリプション型へとビジネスモデルを転換する可能性もあるでしょう。

以下は公正取引委員会の調査報告書ですが、重要な点として「リーダーアプリではないアプリを提供しているデベロッパーが既存のアプリをリーダーアプリに変更したり、新規にリーダーアプリを提供したりすることは妨げられない。」と記載があり、規約緩和の対象となるアプリへの転換自体は保証されています。

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Source:(令和3年9月2日)アップル・インクに対する独占禁止法違反被疑事件の処理について

今後の、Appleの規約緩和の対象範囲の拡大次第ですが、一部のアプリがサブスクリプション型へと転換するケースは一定発生し得ると考えられます。

3-3. サードパーティツールベンダー
■ 影響

今回の規約変更を受けて需要が一定上がりそうなツール種としては以下の2つが挙げられます。

①アプリ内マーケティングツール:
・ポップアップやプッシュ通知で外部決済ページに誘導

②アプリ内課金の外部カートシステム:
・アプリ内コンテンツの購入をアプリ外で可能にするカートシステム

■ 対応
①アプリ内マーケティングツールに関しては、規約変更を受けた誘導施策のユースケースが発生します。こちらに関しては第4章で詳述します。

②アプリ内課金の外部カートシステムに関しては、外部誘導時のアプリ内コンテンツのカートシステムの需要が増加・誕生する可能性があります。
3-2でも取り上げた通り、決済システムを自前でスクラッチ開発するのは非常に難易度が高い為、「アプリ内課金専門のShopify」のような形で新しいカートシステムが誕生する可能性はあるでしょう。
また、既存の決済システムである「Stripe」や「Paypal」にとっては、今まで存在しなかったアプリ内課金の市場が誕生することになるため、今後どのように動くかは注目がされます。
しかし、①アプリ内マーケティングツールのような揮発性の高いサービスと違い、決済を司るカートシステムはテックスタックを根本から変更する可能性もあり、急速な普及・採用は進みづらいと考えられます。

4. アプリデベロッパーはどう対応すればいいか?

ここまでApple・アプリデベロッパー・サードパーティツールベンダーの3事業者の立場から規約変更の影響を考察しましたが、本章ではエンドユーザー側にどのような影響があるか・それにどう対応するべきかを論じます。

4-1. アプリ外決済手段への導線
今回の規約変更を受けて、アプリ外決済手段への誘導施策を実施検討をするべきなのは以下の「売上の向上が見込める」アプリです。

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しかしながら、いつ再度規約変更がされるか分からない中で、フルスクラッチで誘導システムを実装するのは通常のデベロッパーにとってはハードルが高いです。

こういったアプリに関しては3-3で触れたように、アプリ内マーケティングツールの活用が可能です。より具体的には、手前味噌ですが弊社サービス「Repro」を用いることで、大きな追加開発工数をかけずとも以下のような施策の実施が可能になります。

①全てのアプリ:会員登録確認メールで外部購入サイトへの誘導

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②全てのアプリ:メールマガジンで購買意欲の高いユーザーへ外部購入サイトに誘導

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③全てのアプリ(会員登録機能あり):アプリ内で会員登録を促進し、後日外部購入サイトへ誘導

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④全てのアプリ(会員登録機能なし):アプリ内でメールアドレスなどを収集し、後日外部購入サイトへ誘導

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⑤「リーダー」アプリのみ:アプリ内でアプリ内メッセージを用いて外部購入サイトへ誘導

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4-2. ユーザーの手間と実利の天秤
今回の規約変更により手法はどうであれ 4-1. アプリ外決済手段への導線でご紹介したような誘導施策を実施検討するデベロッパーは多いかと思います。しかし、ユーザー目線で見ると手間がかかる外部誘導は受け入れられない可能性もある為、外部誘導による手間とそれにより享受できる実利を天秤にかけてもらえるような設計が必要になります。

より具体的には、手数料分の割引という実利に加えて、それ以上の実利として何が提供できるかを模索する必要があるでしょう。例えばゲームアプリのガチャアイテムでは、同額のアイテム購入でも外部決済時にはおまけアイテムをつけるなどが考えられる。

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Source:アプリ内課金をハックする

4-3. 二重価格による問い合わせコストの増加可能性
VODは基本クロスプラットフォーム利用前提・マッチングアプリでは昔からウェブ決済とアプリ内課金で違う金額を採用していることもあり、多くのアプリでは、アプリ内・ウェブ上での購入金額が異なります。

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Source:with 料金ページ

しかしながら、エンドユーザーでその事情を正確に理解しているケースは少なく、今度外部誘導施策実施により二重価格が採用された場合、一部のユーザーからの問い合わせが発生する可能性はあるでしょう。

事前対策としては、アプリ内・ウェブ決済ページ双方に価格設定の根拠を示すなどしかできませんが、問い合わせが発生した場合には真摯に対応をする必要があります。

5. 各国でのアプリプラットフォーム規制状況と背景・展望

本章では、日本・韓国・米国・欧州・インドの5つの地域・国でのアプリプラットフォームへの規制状況・背景と今後の展望に関して論じます。

5-1. 日本
まずは日本です。今回の一連のニュースの1つでもある「 「リーダー」アプリのアプリ内での外部決済手段への誘導を容認」は日本の公正取引委員会が主導したものですが、この他にも「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」、通称「透明化法」が存在するのをご存知でしょうか?

この法律は、アプリストアを含むデジタルプラットフォームへの規制を法案化したもので、実は2021年2月1日から施行している現行法となります。
しかしながら、透明化法の基本原則は、規制の大枠は法律として定め、詳細内容はプラットフォーム事業者の自主的取組に委ねる共同規制の規制手法を採用しており、実効力は伴わない骨抜きの法律となっているのが現状です。

同じ日本の法律・取り組みでもその実効力には大きな差がありますが、これは、透明化法を経済産業省・Appleの規約変更を公正取引委員会が主導していることに起因していると考えられます。公正取引委員会は、国の行政機関ではありますが、行政委員会と呼ばれる合議制の機関であり、他から指揮監督を受けることなく独立して業務を行うことができるのが特徴で、これ故に調査・実行の力が強かったのではないかと思われます。

以上の前提整理を踏まえて、今後日本でプラットフォーム規制が進むかですが、公正取引委員会が主導するのであればある程度短期スパンで同様の規約変更はあり得そうです。

以下は、日本の端末シェアですが半分以上がApple端末になっており、OSシェアで見るとApple・Googleの2プラットフォームがほぼ100%を占めている状態です。

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Source:IDC Japan

一方、アプリプラットフォームと同じくプラットフォームとして透明化法の対象になっているECモールプラットフォームは、以下のように楽天・Amazonが頭1つ飛び抜けているものの、アプリプラットフォームと比較するとそのシェアは低く60%となっており、寡占とは言えないでしょう。

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Source:ECC Lab

公正取引委員会のミッションに立ち返ると、ECモールプラットフォームと比較してアプリプラットフォームの方が寡占市場として調査の対象になる可能性は高く、今後加速するのは引き続きアプリプラットフォームへの規制であるというのが僕の考えです。

5-2. 韓国
韓国が世界で初めて政府規制という実効力を持ったアプリプラットフォーム規制法案の成立目前状態にいる背景には、韓国のモバイル産業が大きく関係しています。

以下は韓国国内でのデバイスシェアのグラフですが、AppleやGoogleなどを押さえて、韓国国産のSamsung端末が圧倒的なシェアを保持しているのが分かります。

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Source:statcounter Global Stats

また、次のグラフは世界全体の端末シェアですが、世界単位で見てもSamsungはAppleを押さえて端末シェアトップであり、国内外共にハードを押さえていると言えるでしょう。

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Source:Global Smartphone Market Share: By Quarter

国内では過半数・世界全体でも約1/5のハードを押さえているにも関わらず、ソフトであるOSとコンテンツディストリビューションをApple・Googleに握られていることが、早い段階からApple・Googleを名指しした政府規制の法案化を進めていた背景だと考えられます。

今回、国内では法律成立間近なわけですが、世界全体から見れば韓国の市場は小さいです。今後、Samsungを中心に、他国での同様の法案成立を目指したロビーイング活動が強化されるのは予想できます。

Appleは、失った売上よりもインパクトがでかいドミノが韓国から倒れ始めていることに危機感を覚えているでしょう。

5-3. 米国
米国では8月11日に、上院でアプリプラットフォームに特化した独占禁止法関連法案が提出されています。主な内容は以下です。

■ 米国独禁法関連法案 要点
①対象:
・企業名指しではなく米国で5000万以上のユーザーを抱えるアプリストア

②プライシング:
・サードパーティの決済手段を受け入れる必要→Apple・Googleの手数料が取れなくなる
・最恵国待遇を要請されなくなる→プラットフォーム外でアプリやコンテンツを販売する際に、プラットフォーム内での販売価格よりも値段を下げないことを要請されるのが最恵国待遇

③競合禁止:
・プラットフォーム側が売上データなどを元に自社で競合可能なアプリを開発することを禁じる

④相互運用性:
・サードパーティアプリストアの利用を可能に、且つデフォルト設定にすることもできるようにする →これはSafariとChromeの関係性に似ている
・且つファーストパーティのアプリストア自体を削除することもできるようにする

⑤検索:検索ロジックを自社に有利に働かせるのは禁止

Source:上院 独禁法関連法案

先に登場した韓国の場合は、あくまでも②プライシングの一部を法案化したのみなので、実際にこの法案が米国で成立した場合、アプリエコシステムを大きく揺るがす事態となり得ます。

特に④相互運用性は、Appleが常々禁止し、昨年のFortniteとの議論の争点にもなったサイドローディングに関する事項であり、今後注目が集まりそうです。

5-4. 欧州
欧州では「公平性と透明性促進規則」が2019年7月に成立しており、この法規則はアマゾンなどのショッピングモール・AppStoreなどのアプリストアなどのプラットフォームがユーザー企業に課す不当な条件を解消するための措置を掲げています。
しかしながら、EUプラットフォーム政策枠組みの原則は、日本の透明化法と同じで、自主規制・共同規制の方法論を重視しており、真に実効力が伴ったものとは言えません。

一方で、罰則規定ありの法案として「デジタル市場法」が2020年12月に提出されており、違反時の制裁は総売上高の最大10%の制裁金の他、最終的な手段として事業分割が行われる可能性もある、かなり強い力を持った法案となっています。

法案の条項としては、基本的に米国の独禁法関連法案と似通っており、以下のような点が主要な事項として挙げられています。

■ EU デジタル市場法案 要点
第5条:ゲートキーパーの義務
b. オンライン仲介サービスにおけるMFN(最恵国待遇)条項の禁止
c. プラットフォームが指定する課金手段の使用を認める・プラットフォーム外でのコンテンツの販売、契約を認める

第6条:更に特定される余地があるゲートキーパーの義務
b. ゲートキーパーがプラットフォームにプリインストールしたアプリをエンドユーザーがアンインストール可能にする
c. ゲートキーパーのOSでサードパーティのアプリやアプリストアなどの使用を認める
d. ランキングにおける自社優遇の禁止

欧州ではかつてよりSpotifyとAppleの対立が見られており、実効力を伴った本法案が実現した場合は、欧州でのアプリエコシステムにも大きな影響を及ぼすでしょう。

5-5. インド
連日のAppleの規約変更などの影響を受けてか、インドでもAppleに対する独占禁止に関わる調査が開始目前です。

現時点ではまだ調査の前段階ですが、韓国での法案化や各国での法規制の動きを受けて、調査に入るのは濃厚かと思います。

以下の2枚のグラフはそれぞれ、国別の一人当たりアプリ内課金額(ARPPU)・国別のモバイルゲームアプリ総ダウンロード数です。

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Source:2021 Mobile Gaming Tear Down

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Source:2021 Mobile Gaming Tear Down

現状インドのARPPUは非常に低いものの、その人口からモバイルゲームのダウロード数は世界1位となっており、最後のモバイルフロンティアとしてGAFA含め各社が進出・獲得を狙っている市場です。

Apple・Googleを始めとしたプラットフォーム企業は確実にこの市場獲得を目指す為、プラットフォーム規制は難航が予想されます。

5-6. 世界全体のプラットフォーム規制の現状と今後
Appleを始めとしたプラットフォーム企業は多国籍企業である以上、今回の韓国での政府規制の法案化などのドミノの影響を受けていくことは予想できます。

ここまで登場した各国の法規制の状況を規制の強さで並べると以下のようになります。

実現していないものも含めると
アメリカ>欧州>韓国>日本>インド

実現しているものだけだと
韓国>日本>アメリカ = 欧州 = インド

下段を見ると分かりますが、まだまだアプリプラットフォームへの実効力を持った規制は始まったばかりであり、今後2〜3年で大きく進んでいくものと予想されます。
特に、先日G20において、多国籍巨大IT企業を主に中心としたデジタル課税の導入に大枠合意したこともあり、この流れが加速するのは間違いないでしょう。

一方のAppleも必死の防戦を繰り出してくるのは想像に容易いです。
特に韓国・中国が半壊に向かう今、Appleのサービス収益を支えるトップティアである日本・アメリカはその中心になることが予想され、今後の動向にも注目をするべきだと言えるでしょう。

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Source:Mobile Games Market Spotlight

6. アプリエコシステムはどう変わるか

■  現状はまだ構造は大きく変わっていない
ここで改めて今回の変更内容でどのような課金設計ができるようになったかを振り返ろう。

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図からも読み取れるが、できることは増えている一方で、Appleがアプリ内での体験とペイメントを押さえるという根本構造自体は変わっていない。

また、今回規約緩和の対象となった「リーダー」アプリというのはあくまでもAppleが定義したアプリカテゴリです。
例えば、Kindleのように都度課金型・サブスクリプション型(Kindle Unlimited)を併せ持つハイブリッド型の課金モデルの場合は、「リーダー」アプリに該当するのでしょうか?
これはAppleの解釈次第ではどうとでも捉えることができるでしょう。

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Source:Appleと米国のデベロッパが、ビジネスをサポートしながらユーザーの素晴らしい体験を維持できるApp Storeのアップデートに合意

一応、Appleは今回の同意内容として、年次でアプリ審査に関する透明性レポートを作成すると言っているが、個別具体のケースには触れられないと予想されます。

実際、同様の批判はAppleの規約変更声明直後に、Appleと長らく対立しているSpotifyのCLO(最高法務責任者)からも出ています。

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Source:Horacio Gutierrez

真に「自由で公平性のある開かれたアプリストアプラットフォーム」を謳うのであれば、アプリ内課金システムの強制の廃止やサイドローディングの認可など、まだまだ対応するべき事項が存在します。

ゲームチェンジとなり得る構造の抜本的変革はまだまだ先です。

■ 今後どのように対応するべきか?
第5章でも見てきたように、着実にアプリプラットフォームへの規制は世界レベルで進んでいます。
しかし、短くても短くても1年、基本的には2〜3年は世界全体で足並みが揃うには時間がかかることが予想されます。
また、Appleは今後もガイドラインの記載文言を濁したり、新しい独占的な収益スキームを構築し対抗してくるでしょう。

こうしたプラットフォーム規制を歓迎しつつも、現状のOSシェアを考えると、Apple・Googleとうまく付き合っていく必要があります。
付き合っていく上で今後も重要な点は以下の2つです。

①プラットフォームの規約を理解する
・何がOKで何がダメなのかを最新情報を取得して理解する
・その上で現状できる施策を着実に検証し行っていく

②ユーザーの体験を第一に考える
・規約変更で容認されたからと言って、ユーザーの体験を何も考えずに事業者サイドの施策を押し付けないこと
・まずは、ユーザーの体験ありきで導線設計をする
・例えば、「リーダー」アプリでは、アプリ内で登録をさせる・アプリ外に誘導するCTA両方を用意するなどの試行錯誤は考えられる

最後になりますが、本記事がみなさんのアプリプラットフォームへの理解を促進し、デベロッパー・エンドユーザー・プラットフォーム全員が幸せになれる体験設計・取り組みに繋がる指針となることを願っています。

また、本記事に関する感想や意見などもぜひ教えてください。
Twitter(@HirotoInada)にていつでもお待ちしてます。

Epic裁判の判決を受けての追記:2021/09/13

本記事を書いた翌日に、昨年2020年8月に火蓋が切られたAppleとEpic Gamesの裁判の判決が出されました。

この裁判の論点を簡単にまとめると以下のようになります。

■ Epic Games側の主張
主題:Appleはスマホゲーム市場を独占しており、デベロッパーは不利益を被っている

理由:
・Appleはアプリ内課金の手段を自らの決済手段のみに強制することで、手数料収益を不当に受け取っている
→①アプリ内での課金手段が強制されている
→②アプリ外への課金誘導が禁止されている

・Appleは自らのAppStoreのみをアプリ配信ストアと限定しており、サードパーティのアプリ配信ストアからのインストールを禁止している
→③サイドローディングが禁止されている

今回出された判決では、上記①〜③の禁止事項のうち、②アプリ外への課金誘導が禁止されている ことが反競争的であるとして規約の撤廃が求められました。
より具体的には、以下のガイドライン上の規約の記載が削除することを裁判所は求めています。

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Source:App Store Reviewガイドライン>3. ビジネス>3.1 支払い>3.1.1 App内課金

先日、日本の公正取引委員会の調査判決により、Appleは「リーダー」アプリに限り外部登録ページへの誘導を容認するという決定を下しましたが、今回のEpic裁判の結果により、App内課金全体を対象に外部決済ページへの誘導が晴れてできるようになります。

一方で、Epicが主張した、①アプリ内での課金手段が強制されている・③サイドローディングが禁止されている の2点に関しては、裁判所は反競争性を認めるには根拠が少ないとしてEpicの主張を棄却しています。

これにより、Epicの「Fortnite」が昨年AppStoreから消されるきっかけとなった、アプリ内へのEpic独自の課金手段の実装はガイドラインの規約違反と判定され、EpicはAppleに売上の一部を賠償金として支払うことが言い渡されており、一種両社痛み分けの状態となったと言えるでしょう。

今回の判決結果を受けてどのように課金システムが変わるかというと、以下のように図示できます。
スクリーンショット 2021-09-10 10.19.41

スクリーンショット 2021-09-10 9.46.35

結論、「リーダー」アプリのみが対象であった外部誘導が全アプリに適用されるということであり、依然Appleの支配的構造は変わってはおらず、その証拠にEpic Gamesはすぐに上訴しています。

しかしながら、今回の判決の根拠となったAppleのスマホゲーム市場におけるシェアは57.6%であり、独占の一つのラインと言われる65%にはまだ少し猶予があるため、すぐにEpic Games側の主張が認められることはないでしょう。

まだまだEpic裁判はズルズルと続いていきそうな所感です。

※2021/09/28追記 Repro実施ウェビナーでの質問を受けて

2021/09/28(火)にRepro主催のウェビナー「Apple 外部決済誘導の容認」でアプリエコシステムはどう変わる? 〜新アプリ内課金時代に向けたアプリマーケターへの3つの提言〜 を実施しました。

セミナー中に頂いたもののお答えできなかった質問に関して簡単にまとめます。

Q1:ECアプリでアプリ内で使えるデジタルギフトカードを販売する場合は、アプリ内課金を用いる必要がありますか?

A1:今回のケースでは課金対象になるのはデジタルギフトカードになるため、アプリ内課金を用いる必要があります。ただし、物理的なギフトカードをアプリ内で販売する場合であれば、アプリ内課金を用いる義務はありません。

スクリーンショット 2021-09-28 18.23.09

Source:App Store Reviewガイドライン>3. ビジネス>3.1.1 App内課金

Q2:サービスに対する課金はアプリ内課金を用いなくてもよいとのことですが、ライブ配信サービスの投げ銭などはアプリ内課金を用いる必要がありますか?

A2:確かに投げ銭を受け取るのは配信者ですが、投げ銭はゲーム内通貨に該当するため、アプリ内課金を用いる必要があると考えられます。

スクリーンショット 2021-09-28 18.26.14

Source:App Store Reviewガイドライン>3. ビジネス>3.1.1 App内課金

Q3:ゲームアプリでゲーム内通貨の購入を、メールなどを用いて外部に誘導するのは規約上問題ないでしょうか?

A3:現状の利用規約では、「3.1.3 その他の購入方法」で定義される「リーダー」アプリを始めとするアプリカテゴリを除いて、アプリ内コンテンツは全てアプリ内課金を用いて解放する必要があります。ただし、先日のEpic裁判により「3.1.1 App内課金」の冒頭文章の削除をAppleは求められていることから、今後ゲームアプリも含めて外部誘導は可能になる見込みです。
Q4:Google Playではメールなどを用いた外部決済手段への誘導は可能か?

A4:3条で明記されていますが、アプリ内課金を用いる義務があるアプリカテゴリは、アプリ内課金以外の決済手段を直接・間接問わず誘導することを禁じられていることから、ご質問頂いた誘導方法は不可能と考えられます。

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Source:Play Consoleポリシーセンター > 収益化と広告 > お支払い

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