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今週のモバイルアプリ関連ニュースまとめ Vol.2(2/7週) | Weekly Mobile Update

今週の注目ニュース

モバイル計測ツール”Branch” $300M調達 ATT施行が追い風に

モバイル計測ツールを提供する”Branch”が$300Mを調達し評価額が$4Bとなった。
2018年9月時点で評価額が$1Bのユニコーン企業となっていた同社は、2020年前半はパンデミックの影響もあり人員の20%もを解雇するなど厳しい状況だったが、今回の調達により4倍の企業価値となった。

同社への投資の背景としては、2021年4月末のiOS14.5リリースに伴うApp Tracking Transparency(ATT)施行により、モバイルエコシステムにおける計測技術の重要性が上がった点が関係している。
同じくモバイル計測ツールを提供するKochavaは2021年の売上が前年比30%増加など、ATTが各モバイル計測にとって追い風になっているのが窺える
今後もしばらくは、モバイルアドテク領域への投資加熱・MAなどによる業界再編制は続くと考えられる。

マッチングアプリ”Bumble”が初の買収を敢行

2021年2月にIPOした”Bumble”が上場後初の買収を敢行した。
買収した”Fruitz”はフランスを中心に使われているマッチングアプリで、特にZ世代からの支持が厚いアプリとして知られている。
“Fruitz”も一般的なマッチングアプリと同じくスワイプによるマッチングを行うUXを提供しているが、事前に自身のアプリ利用目的を伝えた上でマッチングが始まる点が他のマッチングアプリとは一線を画す点と言える。

こちらの記事でも取り上げたが、特にアメリカではお互いの期待値が不一致な状態でのマッチング体験がユーザー課題、所謂「マッチングアプリ疲れ」として大きくなっているため、“Fruitz”は特にZ世代を中心として市場に受け入れられている。

同じくZ世代から支持を集めるTinderはMatchグループが運営しており、今回の“Fruitz”買収は対抗策の一つと考えられる。
Bumble創業者のWhitney Wolfe Herd氏は元々Tinder共同創業者だったがセクシュアル・ハラスメントを受けて会社から追われている歴史からも、これからのMatchグループ vs Bumbleグループの戦いは加熱していきそう。

iPhoneを決済端末化 Apple が”Tap to Pay”を発表

Appleは、店舗のiPhoneにクレジッドカード・デビットカードなどをかざすことで決済ができる新機能”Tap to Pay”を発表し、2022年後半から米国で展開を開始する。

”Tap to Pay”は特別なハードウェアなしに、店舗側のiPhoneにカードやデジタルウォレットをかざすだけでそのiPhoneを決済端末化する。
既に決済プラットフォームStripeは”Tap to Pay”のサポートを発表し、開発者向けにベータ版への申込みを募集開始している。

決済端末の導入コストの問題もあり、個人営業の飲食店・商店などではまだまだキャッシュレスに対応していないところも多いが、この機能があればP2P決済がiPhoneひとつで完結するため非常に有用。
日本での展開予定は未定だが、特に日本は世界と比較してもiOS比率が高いので、ガラパゴス化した決済エコシステムにうまくローカライズして入り込めれば普及は見込まれるだろう。

2022年1月のみでゲーム業界のM&A金額は2021年の総額を上回る

2022年1月に実施されたゲーム業界の買収金額は850億ドルになり、既に2021年中に実施された全ての買収金額を超えたことがNewzooの調査により分かった。

目立った買収案件としては、MicrosoftによるActivision Blizardの買収(48億ドル)・TakeTwoによるZyngaの買収(14億ドル)の2案件が挙げられる。

特に巨大なモバイルゲームインフラを保持するZyngaを、「グランドセフトオート」などのコンソールゲームを主軸とするTakeTwoが買収したのは、TakeTwoが収益源として成長性が高いモバイルゲーム領域への進出の布石とする狙いがあると考えられる。(既にゲーム業界の52%の収益をモバイルゲームが叩き出している)

特にiOS14.5のATT施行以降のモバイルゲーム業界では、アドテク企業によるゲームスタジオ買収や、巨大ゲームスタジオによる小規模ゲームスタジオ買収案件が頻発しており、今後もコンソールを主軸としたゲーム会社によるモバイルゲーム領域への進出やコンテンツの囲い込みは加速していくものと考えられる。

モバイル広告媒体のROIパフォーマンスレポート”Singular ROI Index 2022”発表

Singularが今年もモバイル広告媒体のROIパフォーマンスをまとめた”Singular ROI Index”を発表。
今年は特に2021年4月末のiOS14.5リリースによるATT施行の影響を受けてアドテク業界が大きな影響を受けたのもあり、モバイルマーケターは必見の内容になっている。

注目するべき点はやはりATT施行によりどのような媒体が成長したかだろう。結果としては、TikTok・Twitterのメディア媒体が伸長したのに加えて、Apple本人のAppleSearchAdsも大きく成長をしており、ATTを受けてどの媒体に出稿が流れたのかがよく分かる。

また、OS別の広告出稿金額推移では、現在は復調気味だが一時は32%もiOSの比率が下がるなど、いかにATTによる影響が大きかったのかが窺える。iOS比率が特異的に大きい日本ではなかなか実感が湧かないデータではあるが、把握しておくべき事項と言える。

このようにATT施行により伸長する媒体があった一方で、全体のROIパフォーマンスランキングでは依然Google・Meta(旧Facebook)の2社が同率1位を維持している。2021年は多くのマーケターが新しい媒体に予算を薄くアロケーションしつつ、ユーザー規模・質が高いGoogle・Metaに依然大きく出稿していたことが窺える。

Tinder 年齢によるプレミアム機能利用料金差別を停止すると発表

Tinderは年齢によるプレミアム機能の利用料金の恣意的な変更を停止すると発表。

調査レポートによると、Tinderは30歳から49歳までのTinderユーザーに対して、若年層よりも平均65.3パーセントも高い金額でプレミアム機能を提供していた。
より具体的な数字としては、ニュージーランでは合計25もの価格帯が年齢によって提供されており、最低金額は4.95ドル・最高金額は24.5ドルと、最大で20ドルもの金額差があったという。

Tinderは若年層への安い値段でのプラン提供を、学校やキャリアの早い段階で手が出しやすい手頃な値段にするための検証と説明しており、今後は年齢差による価格差別を停止すると発表している。

ここまであからさまな金額差別としては、ホテル予約サービスのOrbitzではMacユーザーがWindowsユーザーよりも30%多くのお金を払うことから、Macユーザーには通常よりも高額なホテルを表示していたことで大きな話題になった

属性や状況を考慮したダイナミックプライシング自体はユーザーの購買意欲を増加させる点で効果的ではあるが、使い方を間違えるとユーザーからの信頼を失うことがあるので注意が必要だ。

参考記事・リソース

App Storeの審査リジェクトを避けるには

RevenueCatによるAppStoreの審査リジェクトを避けるためのティップス集。
クラッシュ・バグの削除や、メタデータを正確に設定するなどの基本的な事項はもちろん、あまりに審査落ちする場合は当該レビュー提出を取り下げて出し直すなど、審査プロセスを研究してきたRevenueCatならではのリジェクト回避ティップスが記載されています。
どこまでいっても審査基準はAppleの担当者個人に依存しているのが大きいですが、リリースプロセスの高速化の確度を高める上で一読の価値ありです。

“Mobile Growth Stack” 改定

ベルリン発のモバイルマーケティングエージェンシーであるPhitureが、モバイルアプリのグロースフレームワークである”Mobile Growth Stack”の改訂版を発表。
2014年に初版が発表されたから、モバイルエコシステムは大きく変わっており、今回の改定は特にビジネスモデルのサブスクリプション転換の加速・予測モデルの重要性向上の2つの背景を元にした変更になっている。
モバイルアプリのグロースの考え方が非常にシンプルに整理されたフレームワークであるため、まだ見たことがない方は一読をオススメする。

Branch "Award Winning Growth Campaigns for Mobile Innovators"発表

Branchが2021年に最も成功したモバイルアプリ施策のアワードを発表。

個人的に気に入ったのは”Best Mobile Innovation”アワードで、iOS14から登場したウィジェット機能をショッピングアプリで活用した事例。ウィジェット上でユーザーが見た商品の入荷状況をお知らせ・オーダー内容のステータスを表示することで、コンバージョンレートを非ウェジェット利用ユーザーと比較して4倍に向上させた良事例。

この他にも日本でも実践ができる参考になる事例が掲載されているのでオススメです。


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