【Apple WWDC2021】アプリマーケターが知っておくべき最新アップデート情報まとめ
■ はじめに
こんにちは!Reproの稲田宙人(@HirotoInada)です!
今年もAppleの開発者向け会議である"WWDC"が開幕しました。
今回は、Keynoteで発表されたアップデート内容の中でも、モバイルマーケティングに携わる方が知っておいてほうが良さそうな情報を早速まとめたのでnoteとして公開します!
まだKeynoteをご覧になっていない方はぜひ以下よりご覧ください。
A. iOS App Store
A-1. プロダクトページを出し分けして運用可能に「Custom product pages」
プロダクトページの各要素をユーザーセグメントごとに出し分けることが可能になる「Custom Product Pages」機能が実装されます。
この機能では通常の広告LPの運用のように流入元やユーザー属性ごとにプロダクトページの見た目をカスタマイズすることができるので、アプリのダウンロードされる可能性を高めることができます。
Source:Apple Get More from Your Product Pages
「Custom product pages」の詳細な仕様は以下の通りです。
■ Custom Product Pages 仕様
変更可能要素:
・スクリーンショット
・プレビュー動画
・プロモーションテキスト
計測仕様:
・Appアナリティクスでバリエーションごとの成果を測定可能
・最大35パターンのページを生成可能
レビュー提出必要の有無:
・掲載するメタデータは都度レビュー提出が必要
・ただし、アプリのバイナリアップデートは必要なし
個人的に「Custom Product Pages」で注目が必要だと感じた点は以下2点です。
①:各バリエーションページに直接遷移できるユニークURLを発行可能
②:インストールまでのKPIだけでなく、バリエーションごとのリテンションや平均収益も測定可能
まず、1つ目の「各バリエーションページに直接遷移できるユニークURLを発行可能」ですが、広告や流入キーワードごとに遷移させるプロダクトページを変更できることを意味します。
これを流入経路別にアプリ内の特定のページに遷移させる「ディファードディープリンク」と組み合わせて用いると、以下のように広告で閲覧した作品を元に、ストアページ〜作品閲覧までシームレスにユーザーを誘導することが可能になります。
特にコンテンツ系のアプリでは活用の幅が広がる大きなアップデートなのではないでしょうか?
次に2つ目の、「インストールまでのKPIだけでなく、バリエーションごとのリテンションや平均収益も測定可能」ですが、バリエーションの短期的な効果だけでなく、中長期的な効果をも測定することで、真にアプリ成長に繋がるバリエーションやオーディエンスは何なのかを特定できるようになります。
この機能はGooglePlayConsoleのABテストでは今ひとつの機能なので、Appleの測定機能には期待がかかります。
Apple公式のCustom Product Pagesに関する情報は以下を参照してください。
A-2 . プロダクトページのABテスト機能「Product Page Optimization」
AppStoreにも待望のプロダクトページのABテスト機能がやってきます!
旧来もAppleSearchAdsのクリエイティブセットを利用して擬似的にABテストを実施することはできましたが、あくまでもスクリーンショットのみが変更可能な要素であり、且つ順番を自由に入れ替えることはできないなど、柔軟性に欠けるものでした。
iOS15から新しく実装されるABテスト機能「Product Page Optimization」では、上記のような課題を払拭し、自由にプロダクトページ内の要素を変更し、ABテストが可能になります。
Source:Get ready to optimize your App Store product page
■ Product Page Optimization 仕様
テスト可能要素:
・アプリアイコン
・スクリーンショット
・プレビュー動画
→CRO関連の要素のみテストが可能
テスト仕様:
・最大90日間のテスト実施期間
・Appアナリティクスでバリエーションごとの成果を測定可能
・オリジナル + 3テストバリエーションを設定可能
※オリジナルの配信割合を設定すると残りのテスト群には均等に振り分けられる
・アプリアイコンをテスト項目にしている場合は、表示されたアイコンがダウンロード後のホーム画面にも表示される
レビュー提出必要の有無:
・テストするメタデータは都度レビュー提出が必要
・ただし、アプリのバイナリアップデートは必要なし
・アプリアイコンに関しては現行のバイナリに全てのバリエーションデータが含まれている必要がある
A-3. アプリ内のイベント情報をプロモーションできる「In-App Events」
旧来、アプリ内で期間限定のイベントなどを行っていても、その情報を伝えられる対象は既にアプリを利用している既存ユーザーが主でした。
iOS15から登場する「In-App Events」では、アプリ内で実施するイベントをAppStore上でプロモーションができるようになります。
Source:Apple In-App Events
「In-App Events」ではイベント情報がカード状になっており、以下のような箇所に掲載がされます。ユーザーはカードをタップしてイベントに関する通知を受け取る設定を有効にしたり、アプリをダウンロードして直接アプリ内のイベントページに遷移することが可能です。
・プロダクトページ
・検索結果一覧
・Apps/Gamesタブのレコメンドセクション
・Todayタブ
・AppStoreのウィジェット
Source:Apple In-App Events
In-App Eventsのカードは以下のメタデータで構成されています。
■ In-App Eventsカードのメタデータ
イベントバッジ:
・イベントの種類を以下より選択
・「チャレンジ」「競争」「ライブイベント」「メジャーアップデート」etc
イベント名:
・イベント名を最大30文字で記述
簡単な説明:
・イベント情報の要約を最大50文字で記述
詳細な説明:
・イベント参加による報酬などの詳細な情報を最大120文字で記述
イベントカードメディア:
・アプリ内イベントを表す画像か動画を添付する
・動画は最大30秒でループ再生され、ポスターフレーム(サムネイル)設定が必須
上記のメタデータに加えて、イベントの実施期間・イベントページへのディープリンク・イベント参加にかかる費用の有無・イベントの目的・イベントの優先度の設定が必要です。
尚、イベントカードのパフォーマンスは、Appアナリティクスで確認が可能になっており、インプレッション数やイベントページの閲覧数・インストール数などの指標が取得できます。
In-App Eventsの想定されるユースケースは主にゲームアプリのイベント告知になるかと思いますが、その他にもライブ配信アプリのライブ告知など様々な用途が考えられそうですね。
Apple公式のIn-App Eventsに関する情報は以下を参照してください。
A-4. SearchTabキャンペーン
厳密にはWWDCで発表された内容ではないのですが、AppleSerachAdsでも新しい広告面が提供開始されているので取り上げておきます。
旧来は検索連動広告のみだったAppleSearchAdsですが、新しく検索する前段階で広告を表示することができるようになりました。
Source:Apple Search Ads Advanced
課金形態はCPM課金になっており、AppleSearchAdsの管理画面にも表示されており、既にキャンペーンも作成可能です。
レポーティングでは「プレースメント」で検索結果・検索タブかが判別できるようになっています。
Source:Apple Search Ads Advanced
配信管理は、デバイスの種類・顧客タイプ・ターゲット層・場所での絞り込みに加えて、広告配信曜日・時間での指定が可能です。
メインのユースケースは、天候の変化や急な話題化・イベントやCM配信に合わせた露出枠確保など、マスマーケと連動した施策実施が主になるのかなとは思っています。
一点注意が必要な点として、AppStoreConnectのAppアナリティクスの計上先がインプレッション・ダウンロードで異なる点があります。オーガニックとASAの数値を切り分ける上でまた厄介な要素が登場したわけですが、認識は必要かと思われます。
■ SearchTabキャンペーンのAppアナリティクス計上先
インプレッション数→ 「AppStoreの検索」に計上される
インストール数→ 「AppStoreの探索」に計上される
尚、既に海外ではSearchTabキャンペーンのCPM・CTRのベンチマークが出てきていますが、通常の検索連動型と比較すると、効果はあまり芳しくないようです。
Source:App Store Search Tab Ads are too expensive and underperforming, experts say
全カテゴリ平均CPMは31ドルで、ユーティリティが49$と最高・ヘルス&フィットネスが17$と最低で結構差がある状態です。
CTRは通常の検索結果連動が6.27%であるのに対してSearchTabキャンペーンは僅か0.91%と大きく水を開けられています。
この原因としては、広告カードの可変要素が少なく訴求力が低い点と、オーディエンスの絞り込みのできる属性が少ない点などが考えられます。
まだまだ活用されている事業者の方は多くないですが、検索連動は確実なCV転換・SearchTabキャンペーンは認知拡大という形で主目的をしっかり定義してあげると、運用もしやすくなるのではないかと思います。
A-5. 検索フィルター機能「Search Suggestions」の実装
こちらもWWDCで発表された内容ではありませんが、あまり話題になっていなかったので取り上げます。(日本では未実装なので当然と言えば当然ですが)
アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリアを対象に、「Search Suggestions」が実装されました。
この機能は、一部のキーワード検索に対して関連キーワードがタグ形式で表示され、関連キーワードをタップすることで検索したキーワードとの複合語で再検索をしてくれます。
例えば、「music」というキーワードであれば、関連キーワードとして「editor」「maker」などが表示され、「music editor」・「music maker」で再検索が実施されます。
また、複数キーワードの設定も可能になっており、上記の例だと「music editor maker」での再検索実施が可能です。
複合語はASO対策上、重要な要素なのでこの機能はスモール〜ミドルデベロッパーにとっては非常に有利に働くかと思われます。
日本語での実装は非常に難易度が高そうですが、日本での機能展開が待たれます。
B. 通知関連
B-1. ロック画面の通知UI変更
ロック画面に表示される通知のUIが変更されます。
メッセージ関連のアプリの場合はメッセージ送信者のアイコンが表示されるようになり、通常のアプリでは表示されるアプリアイコンが以前よりも大きくなっています。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
B-2. 通知をコンパクトにまとめる「Notification Summary」
ユーザーが指定した時間に通知内容をコンパクトにサマリー形式にして通知する「Notification Summary」が実装されます。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
アプリの使用状況や関連度をiOSが自動で解析して、Notification Summary内でも優先度順に通知内容が並んで表示されるようになっています。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
尚、メッセージ関連の通知はNotification Summaryには含まれず、別途個別に通知が届きます。
元来、通知を送信する時間を他社とズラすことで注目を浴び開封率を高める戦術を各社とってきましたが、このNotification Summaryでは時間帯ごとにプッシュ通知をまとめる形式になっており、この戦術も見直しが必要になりそうな所感です。
特に、通知の表示される順番はユーザーのアプリ使用状況や関連度から自動で判断されるとのことなので、いかにユーザーに継続的に使ってもらえるかの戦術が今後ますます重要になってくるかと思います。
ニュースやSNSなどの利用頻度が高いアプリであれば優先度が高くなると推測され、ECや店舗アプリなどの概して利用頻度が低いアプリは優先度が低いと判断される可能性もあります。継続的に利用してもらえるようなアプリ体験やコミュニケーション設計の見直しは必要そうです。
B-3. 通知可能なアプリを制限できる「Focus」モード
全ての通知の受信を設定期間中は拒否できる「Do Not Disturb」モードに加えて、通知可能なアプリを制限できる「Focus」モードが新たに追加されます。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
この機能では「Personal」や「Work」のようにユーザーが状況に応じてFocusモードを適用することが可能になっており、各モード適用時に通知を許可するアプリや人を選択することができるようになります。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
通知受信を拒否するだけでなく、ホーム画面に表示するアプリやウィジェットにも、モードで設定したアプリ制限は適用されます。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
加えて、位置情報や時間などに合わせて自動的にiOSがモードの適用を提案してくれる機能もついています。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
適用したモードと制限設定内容は、iOS以外のiPad・Macなど全デバイスにも適用がされます。
ユーザーにとっては非常にありがたい機能ですが、通知を送りたい事業者側からすると厳しい状況かと思います。
ただ、本質的にはユーザーが嫌がることはしないのは前提にあるため、闇雲にプッシュ通知を送り続けている事業者を淘汰するという点では、アプリエコシステム全体で考えると健全だと思います。
ユーザーが必要なタイミングでコンシェルジュのように通知を送るのが、通知の本質である点が改めて強調される機能追加であり喜ばしいですね。
C. プライバシー関連
C-1. メール 「Mail Privacy Protection」
Apple純正のメールアプリで、IPアドレスの取得拒否などを設定できる 「Mail Privacy Protection」が実装されます。
この機能が有効にされた端末では、メール配信者側はIPアドレスが取得不可になり、IPアドレスを元にしたアクティビティ紐付けや位置情報特定も不可能になります。
加えて、メールの開封有無・開封日時などのトラッキングも不可能になります。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
C-2. Safari「Privacy Report」
Safariでもメールと同様にIPアドレスが取得不可になるのに加えて、どのサイトがトラッキングをしようとしているかをレポート形式で表示する「Privacy Report」が新たに提供されます。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
C-3. アプリ「App Privacy Report」
Safariの「Privacy Report」のアプリ版である「App Privacy Report」も提供が開始されます。
「App Privacy Report」では、直近7日間で各アプリがどのくらいの頻度で、カメラ・マイク・位置情報などのユーザーが許諾した機密情報にアクセスしているかの履歴をレポーティングします。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
また、各アプリが連携しているサードパーティドメインとの接続履歴も確認が可能になっており、取得した情報をどのような相手と共有しているかもユーザー側に分かるようになっています。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
C-4. iCloud +「Private Relay」・「Hide My Email」
既存のiCloudが機能強化を施され「iCloud +」としてアップデートされます。
その機能追加の1つ目が「Private Relay」です。
「Private Relay」では、訪問したサイト履歴などのトラフィック情報がiCloudを介して分割・暗号化され、Appleを含めた事業者が誰がどのサイトに来ているのかの計測ができなくなります。
より厳密にいうと、ユーザーのアクセス履歴とIPアドレスは一旦Appleの管理するサーバーに接続され、そこでIPアドレスを排除した上で、トラフィックを接続先に送信するリレー形式をとっており、これによりユーザーの同定が不可能になるようです。
尚、現状は公式ドキュメントはありませんが、Appleがロイターに語ったニュース曰く、本機能は中国・ベラルーシ・コロンビア・エジプト・カザフスタン・サウジアラビア・南アフリカ・トルクメニスタン・ウガンダ・フィリピンでは提供されないそうです。(日本は対象ぽい…!)
機能追加の2つ目が「Hide My Email」です。
元々Appleは「Sign in with Apple」機能を提供しておりフェイクアドレスの作成が可能でしたが、今回の「Hide My Email」ではどのようなサービス・アプリでもランダム文字列のメールアドレスが作成可能になっており、作成可能な個数は無制限・いつでも削除可能になっています。
これによりユーザーは事業者に真のメールアドレスを知られることなく、フェイクのメールアドレスでサービスに登録・削除も簡単になります。
Source:WWDC 2021 — June 7 | Apple
どちらの新機能もマーテク・アドテクと広範囲に影響を及ぼすと考えられ、仕様詳細の発表が待たれます。
特に、メールマーケティングは「Hide My Email」が大々的に普及するとユーザー同定ができなくなり大きな打撃を受ける可能性もあり注視が必要と言えるでしょう。
最後に
以上、モバイルマーケティングに携わる方であればマストで知っておくべき「WWDC2021」アップデート情報まとめでした!
A~Cそれぞれのセクションで個人的に最もインパクトがあると思ったのはそれぞれ以下です
A:iOS App Store
プロダクトページのABテスト機能「Custom product pages」
→ディファードディープリンクと組み合わせての施策実施により認知〜獲得〜利用開始のシームレスな体験提供が可能に
B:通知関連
通知可能なアプリを制限できる「Focus」モード
→闇雲な通知送信ではなく、ユーザーコンテキストにあったコンシェルジュ型通知コミュニケーションがますます重要に
C:プライバシー関連
iCloud +「Private Relay」・「Hide My Email」
→ウェブ・メールマーケティングの有効性の低下?
特に、「Private Relay」・「Hide My Email」は普及度と仕様の制約次第では、ウェブ・メールマーケティングのエコシステムに大打撃を与える可能性もあるため、引き続き注視をしていく必要がありそうです。
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