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#84 出直し選挙

政治家の出処進退は自分自身で決めるもの。
私は辞職、”出直し選挙”を決断しました。

誰もが嫌う真冬の選挙。

雪がちらつく、長い一週間。
市民の皆さんの思いを聞ける選挙。
怖い思いもありながら、結果を待ちました。

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有罪判決から1週間経った、2016年12月7日。
美濃加茂市議会の冒頭。

「私が不当な控訴審判決と戦い続けながら市長職を続けることを市民の皆様がお認めいただけるかどうか。この点をはっきりさせるため、市長を辞任し、選挙によって市民の皆様の審判を仰ぐことを決意いたしました」

私は辞意を表明しました。

判決直後に市議会から出た"今後も藤井市政を支えていく"との声明。
大変ありがたいものでした。
それにも関わらず、辞職を選択することは大変悩ましいものでしたが、市長としての市政運営を考えた結果、この決断は止むを得ないものだと判断しました。

議会は、全会一致で私の辞職を承認。

一方議会の外では、
「半年後に市長選挙があるのに、ここで選挙をやるのは税金の無駄遣いだ」
といった批判や、
「無実を主張するなら辞める必要はない」
という応援の声などもありました。

選挙には、人件費や事務経費など市としても余計な予算が必要になります。
結果としては、この選挙は知事選挙と同じ日程で行うことができたため、通常よりは大幅に安い(とはいえ高額ですが)、約700万円の支出で押さえることができました。
だからというわけではありませんが、数十万円程度、本来なら受け取ることのできる公費負担の対象となる経費を受け取らないことに決めました。

批判された「半年後にもう一度選挙がある」ということ。
しかしこれは、辞職した本人が当選した場合の話です。

正直、この選挙は今までになく厳しいものだと思っていました。
「裁判で有罪判決を受けた者が、市長で良いのか?」
私を否定することは、非常に簡単な状況でした。
選挙が近くなるにつれ、テレビや新聞も、そのような論調を強く押し出し、私を支持することが間違っているかのような空気が、メディアを通じて作り出されていました。

「出直し選挙なんて、市民は白けてしまっている。投票率はグンと下がるだろう」
「投票率が下がっても、市民不在ということで藤井さんの負けのようなものですね」
そんなことを言う記者もいました。

選挙事務所にも停滞感。
最初の選挙のような若さを前面に打ち出した勢いは薄れ、どこか世間の批判を恐れるような雰囲気が漂っていました。

それでも多くの人がボランティアとして、1月のとても寒い毎日に、朝早くから夜遅くまで作業をしてくれました。
選挙ボランティアには、何の見返りもありません。
何も悪いことをしてなくても、相手候補を応援している人からは敵視され、冷ややかな目で見られてしまいます。
その上、私は「有罪判決を受けた政治家」です。スタッフの人たちも警察にマークされてしまいます。

それでも、仕事があっても、学業があっても、家庭があっても、体調が優れなくても、何人もの仲間が事務所に駆けつけてくれました。一人ひとりの応援が、何ものにも代えがたい力となり、ブレない信念を支えてくれました。
2017年1月22日、雪がちらつく中で選挙が始まりました。

始まったものの、寒さのせいか、選挙カーで市内を回っても、出歩いている人をなかなか見つけられません。道端で握手をしたり、畑仕事をしている人とお話をする機会も少なくなっていました。
前回の選挙では、多くの人が家から出てきて手を振ってくれたり、街頭演説に足を止めてくれました。
そんなことを思い出し、不安な気持ちになりました。

不安を察してか、スタッフの仲間があるSNSの投稿を見せてくれました。
投稿によると、

「ショッピングモールにある期日前投票所に30分以上待ちの行列」
「みんな藤井市長の話をしていたよ。選挙で並んだことなんて初めてだった」

顔の見えない誰かの何気ない一言に後押しされ、最終日を迎えることができました。

私も、スタッフも、くたくたでした。
しかし、選挙の結果は最後まで分かりません。
選挙において大多数の人は、積極的な発言を行わず、ただじっとその様子を見ています。
果たしてどのような結果になるのか。全く予想もつきませんでした。

開票を待つ間、有罪判決以降の市民の皆さんとの会話が思い返されました。
「私は市長を応援しているよ。でも、他の人がどう考えているのかわからないから、なんて言ったら良いのか分からなくなる」
率直な気持ちだったのでしょう。

こんな霞んだ空気はどっちにせよ白黒つけなければならない。
市民の皆さんの答えを待ちました。

1月29日、夜10時を過ぎた頃、開票結果が出ました。
19,088票。
前回の11,394票を大きく上回る、美濃加茂市における史上最高の得票をいただきました。
そして、投票率は57.10%。これも前回の52.86%を上回る数字となりました。

市民の皆さんは決して白けてなんていない。
多くの人が関心を持って、この選挙に臨んでくれた。
数字で明らかとなりました。

この日、改めて
(裁判と闘いながら、美濃加茂市の挑戦を続けていこう)
強く心に誓いました。


現在、こちらの"note"を再編集した上で、
本として出版するためのクラウドファンディングを行っています。
残り3日。ネクストゴールに挑戦中です!
2014年の事件から7年が経過しました。
私にとっては思い出したくないような辛い経験でしたが、この事件を風化させてはいけないと考えています。このような事件を生み出してしまう社会を変え、同じような冤罪事件が2度と起こらないように、社会課題と向き合っていきたいと思います。
ご支援、また一人でも多くの方に拡散していただきますよう、よろしくお願いいたします。


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