
#16 いざ!名古屋地検!って、どこ?
逮捕された被疑者を、"起訴"する権限は検察にあります。
検察は、警察が逮捕しても、集めた証拠を検討したり、本人への取調べをすることで、起訴を見送る決定をすることもあります。
昨日から、私の話を一切聞こうとしない刑事に比べ、検察官なら、私と直接話すことで、事実を見抜いてくれるかもしれない。
そんな期待を抱きながら、名古屋地方検察庁に連れて行かれました。
■登場人物
私:藤井浩人
Y刑事:愛知県警刑事、任意同行から私を担当。逮捕前の取り調べから、積極的に恫喝。
A刑事:岐阜県警刑事、任意同行から私を担当。同じように恫喝。
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逮捕翌日、刑事による取調べが、お昼に差しかかった時でした。
「検察庁へ行くぞ」
Y刑事がそう言うと、護送のために署の裏出口まで連れて行きました。外には、この日も白色のセレナが待っていました。
乗車してすぐ、遠くから見えるフラッシュの光から、多くの報道陣が集まっていることを察しました。セレナの車内は、運転席と後部座席の間にカーテンがあったため、今日はカメラに撮られることはないと一安心しました。
その安心もつかの間、
「ゴンゴン!ゴンゴンゴンゴン、ゴンゴン!」
事故かと思ったその音は、何とか私の顔を撮影しようとするカメラマンたちが窓ガラスにカメラをぶつける音でした。
私たち一向は、名古屋市内にある名古屋地方検察庁に向かっているとのことでした。
はて、名古屋地方検察庁ってどこにあったっけ?そんなことを思いながら、セレナは昨晩来た道を走っていきました。
車内では、私の両脇に2人の警察官が座っていました。春日井署を出て、しばらくすると、
「私たちは取り調べの担当とは、役割が違います。情報交換もしません。移動中や留置場の中は気楽に考えてくださいね。事件と関係ない話なら何でもできますよ」
警察官の人たちは、とても気さくに私に話しかけてくれました。
そんな言葉をかけられ、驚いた私は、
(そんな優しい言葉で、私を揺さぶろうとしているのではないか、これが"飴と鞭作戦"なのか?)
そんなことを考え、初めは警戒しましたが、本当に親切な対応をしてくれる人ばかりで、この日からセレナでの移動時間は私の気持ちが安らぐ貴重な一時となっていきました。
この日の移動中には、事件とは全く関係のないサッカーW杯ブラジル大会の結果を聞かせてもらいました。日本がコロンビアに惨敗し、グループ敗退が決まったという内容でした。
「ハメス・ロドリゲス選手のシュートが凄かったですよ。早く観て欲しいですね」
そんなことを車内の皆さんが話していました。
私の護送を担当した警察官は何人もいました。
誰なのか特定されないと思いますので、あえて書きますが、
「この事件、おかしいですよね。それもこれも、あの幹部検事が来てから色々やばい話を聞きますよ。藤井さん、正直、気の毒です」
こんな話を何人もの人がしていました。
春日井署から約30分、名古屋地方検察庁に到着しました。
最初は、どこに来たのか分かりませんでしたが、周りをよく見ると、そこは、名古屋城のすぐ近く。何度も通ったことのある場所でした。
警察官に連れられ、裏口から建物に入ると、エレベーターに乗り、薄暗い廊下を進んでいきました。
ある部屋の前に着くと、私を連れた警察官の背筋が伸びました。ドアをノックし、開けた先には、検事と事務官の2人が机越しに座っていました。