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#75 一審、無罪

公判の結審から判決日までは約3ヶ月。

裁判長の口から出る一言で決まる、私の未来。

天国か地獄か。

どう考えても、有罪にはならないだろうと思える裁判の審理内容。

しかし、立ちはだかる"99.9%有罪"の司法の常識。控室での待ち時間は、途方もなく長く感じられるものでした。

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判決日は、2015年3月5日。
開廷は午後2時。
午前中は市役所で公務をこなしました。

公務のさなか、市役所職員の数名が有休をとって、裁判を傍聴するために名古屋まで来てくれるという話も聞きました。

「良くない結果は、考えるな」
そう言ってくれる人もいましたが、私の頭の中では、どちらの結果になっても対応できるよう両方の展開を想定しなければなりません。

裁判所までは、いつものように家族の車で。
弁護士会館での簡単な打ち合わせを済ませ、弁護団と共に、名古屋地方裁判所の正面玄関から入りました。この日も多くの報道陣がカメラを構えて待っていました。どうやらこの日、過去最高の400人を超える人が傍聴席の抽選に並んだということでした。

開廷までの時間は、途方もなく長く感じられました。
判決は最初、冒頭に言い渡されるとのこと。
この時は、本当にドキドキしました。まさに、胸から心臓が飛び出るという感覚。
信じていた正義の味方の警察、検察に裏切られていた私は、裁判所を信じて良いのか疑心暗鬼になっていました。

開廷。
鵜飼祐充裁判長と二人の裁判官が入ってきました。
私は、裁判長の正面に立ち、深く一礼しました。

裁判長は手元の資料に目を落とし、口を開きました。

「主文、被告人は無罪」

ほっとしました。

立っていた私は、後ろに倒れてしまうのではないかと思うほど、力が抜けました。

後ろの傍聴席からは、慌ただしく何人もの人が、法廷から駆け出していきました。

「無罪、無罪、藤井市長は無罪!」

その声は、廊下に大きく響いていました。
その一報は各社テレビ局の速報テロップでも流されたとのことでした。

私は、その後の裁判長の判決内容をじっくりと聞きました。

判決文には、

"中森の虚偽供述の動機の可能性に関する当裁判所の判断"
という項目が設けられ
"捜査機関の関心を他の重大な事件に向けることにより融資詐欺に関するそれ以上の捜査の進展を止めたいと考えたり、中森自身の刑事事件の情状を良くするために、捜査機関、特に検察官に迎合し、少なくともその意向に沿う行動に出ようとすることは十分にあり得るところである"

判決では、中森氏の虚偽供述の動機と融資詐欺の関係にまで言及したのでした。

公判の最後、裁判長より

「市政に邁進することを期待します。頑張ってください」

そんな一言をかけていただきました。

弁護団の先生たちと固い握手。
「良かった。本当に良かった」

傍聴に来てくれた人と、裁判所の外で喜び合いました。
この日は多くのカメラマンに囲まれながら記者会見の会場へと移動し、記者会見を終えると、急いで美濃加茂市へ帰りました。

午後7時からの報告会には、多くの人が待っていてくれました。
何人もの涙を浮かべる顔。喜びと労いの声。感情たっぷりの強めの握手。

まずは期待に応えられたのか。
そもそも最初から何もなければよかったのに...
小説のような怒涛の約9ヶ月を振り返り、安堵しながら眠りにつきました。

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