〔余白の創造性〕言葉について

余白の創造性連載第二十五回目のテーマは

”言葉について”

皆さんはいつから言葉を使い始めたでしょうか?

人類の言葉の起源は様々な説があるそうです。

一つの事象の起源に関してどうして様々な起源が存在しているのか疑問ですよね。

しかし、僕らはすでに言語が存在している世界に生まれてしまっています。

それゆえ言語を使わないということが想像の範囲を出ませんし、

言語が現在の言語の形になる前身というものが仮に記録としてどこかに残っていたとしても、それはすでに変化し現在は使われていないものですから、実際にそれが言語の前身であるかどうかも仮説の域を抜けないわけです。

しかしながら、数ある仮説のなかでも特に有力だとされているものが、

鳴き声や歌などから派生した説です。

人間以外の多くの生物も鳴き声によってある程度のコミュニケーションを取っています。

その多くの鳴き声は”求愛”という単一の意味で使われていることがほとんどですが、その音が他に比べて種類が増えることが求愛の成功率を上げると言われています。

他の個体に比べてより多くの音を出すこと、つまりはより多くのエネルギーを消費できる個体ということで、より丈夫で生存能力が高いと判断されるようです。

人間も同じように、原始の頃、求愛のために鳴き声とも歌ともいえるものを使っていたようで、

二足歩行に進化したことで人間は他の生物に比べて発達した発声器官を手に入れ、そこから発せられる音が増え、求愛以外の場面でも音を用いたコミュニケーションを図るようになったようです。

例えば、狩りにに出るときに仲間を募ったり、それこそ自分の見つけたより効率の良い方法や、良い狩り場の情報を共有したりしていたかもしれません。

言葉の起源に関して歴史的な、生物学的な観点からの考察はこの辺で十分でしょう。

このコラムは余白の創造性を探すものなので、

ここからは実際に僕らが言葉というものを使うなかで広がっている余白を探していきます。


言葉とは、心あるいは頭のなかにぽつぽつと湧き上がってくる概念としてイメージできる要素をさまざまに組み合わせて、構成し自分や他者に伝達する道具です。

浮かんでくる要素の一つ一つが単語に相当し、それを共通して認識している一定の規則によって組み立て表現、伝達するわけです。

人間のコミュニケーションにおける言葉の進化の一番の大きな要因は、別々のものを一定の規則に従って組み合わせることだったのではないでしょうか。

それまでは各個人が自分のなかで完結していた情報が言葉によって他者に共有されるようになったことで、

さまざまな文化・情報が蓄積していき、人類のコミュニティは世界中に広がったのでしょう。

僕は言葉が人類最大の発明だと思います。

言葉は目に見えず、

その言葉の持つ効果も見えず、

どこにあるのかも分からない。

それでも言葉は僕らの頭に、心に残り、その後の行動に変化をもたらします。

言葉に支配されていると言っても過言ではないほどに、

僕らの心模様は言葉によって際限無く変化させられます。

もちろん僕らの心の全てが言葉で表現できるわけではありません。

有限である言葉の組み合わせによって、無限に広がる心というものを表現しきれるはずはないでしょう。

しかし、言葉の持つ力というのは、ただその言葉を用いて表現されている事柄だけを説明することではないのです。

その言葉はいわゆるきっかけのようなもので、

本当に意味を持つのは、僕らの心がそれを受け取ったときなのです。

言葉は心のなかに浮かんでくる要素を組み合わせて伝達する道具だと前述しましたが、

その実は、例えるなら相手の心に絵を描く絵の具のようなものだと思うのです。

僕らはその絵の具を使って相手の心のなかに伝えたい絵を描き、

その絵を感じて相手の心に伝わるのです。

心を一つの大きなキャンバスだとするならば、

どんな絵を描きたいでしょうか。

暗い色、淀んだ色を使うのは何を表現したいときでしょうか。

明るい色、綺麗な色は暗い色や淀んだ色で簡単に塗りつぶせます。

しかし、その逆の作業はなかなかに骨が折れます。


言葉も同じ。

綺麗な言葉は脆く、儚いものです。

それは、ふわふわと舞う花びらのようなもので、丁寧にすくいあげなければ見失ってしまいます。

反対に乱暴な言葉というのは強く、鋭いです。

それは、深く突き刺さりいつまでも抜けることなく心に残り続けます。


言葉を使って、相手の心のキャンバスに何を描きたいでしょうか。

澄んだ青空やオレンジ色に燃える夕焼けか、

その上に無数の鋭利な線を乱雑に描き殴るのか。

言葉でどんな絵を、どんな余白を表現したいですか?


表現することというのは、相手がいることです。

言葉に限らず、その評価は相手に委ねられるわけです。

せっかくならば相手が大事にしてくれるような絵を残したいものですね。


今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回のテーマはこうして毎週コラムを更新している僕自身も、言葉の持つ力を再確認する機会になりました。

来週のテーマは

“青春について”

それではまた来週の金曜日に。





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