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きっと成功を掴む未来【第9話】
【第9話】夏休み
入社以来休むことなく無我夢中で仕事に取り組んできた佐々木は、短い期間ではあるが1週間の夏休みを取ることができた。
営業1課 課長:
『明日から1週間夏休みに入るがくれぐれも事故の無いように過ごしてくれ・・・』
金子:
『佐々木君はどこかに出かけるの!?』
佐々木:
『学生時代の仲間と久しぶりに会うんだ』
金子:
『そうなんだ!楽しそうだね、私は山形へ里帰りする予定よ!』
佐々木:
『きっと山形のご両親は金子が帰って来るのを楽しみにしているんじゃない!』
金子:
『実家を出る時には少し心配をしていたんだけど』
佐々木:
『頑張っている事をご両親に報告すればきっと安心するよ』
金子:
『これからも一緒に頑張って行きましょうね。今度また相談に乗ってね』
佐々木:
『わかった、気をつけて山形に帰ってね』
辺りは日が落ち一人ひとりが会社を後にしていった。事実上会社は1週間の夏休みに入った。
~その日の夜~
同級生の石原から電話が入った。
石原:
『健司、明日の朝6時に横浜駅に集合だからな!』
佐々木:
『どこに行くんだよ!』
石原:
『決まってんだろ!伊豆の温泉に泊まりに行くんだよ!』
佐々木:
『急に何いってんだよ!』
石原:
『先週、予定を開けとけって言っただろ、宮崎と木内も来るから遅れるなよ!』
佐々木:
『ハァ~・・・』
石原:
『じゃあな!』
~翌朝~
横浜駅には石原、宮崎、木内が大きな荷物をもって佐々木が来るのを待っていた。
佐々木:
『はぁ~、間に合った!』
石原:
『お前、随分荷物が少ないんだな!』
佐々木:
『何泊するつもりなんだ!』
石原:
『2泊するって言っただろ!』
佐々木:
『聞いてないよ!2泊なんて』
石原:
『この場は聞いた事にしておけ!』
木内:
『佐々木君、久しぶり』
佐々木:
『やぁ~、みんな久しぶりだったね』
宮崎:
『佐々木君も元気そうだね!』
木内:
『さぁ~、伊豆の城ヶ崎海岸に向けて出発だぁ~』
4人は横浜駅から東海道線に乗込み城ヶ崎海岸駅へと向かった。
東海道線の車内では、学生の頃のように4人の会話が弾んでいた。
宮崎:
『やっぱり、みんなと会うと落ち着くな!』
石原:
『そういえば卒業旅行以来だもんね』
宮崎:
『ずっとこのままでいたいな!』
木内:
『気を使わない関係って落ち着くよね』
佐々木:
『中には、少し気を使った方が良い方もおられるけどぉ・・』
石原:
『俺のことを言っているのか!?』
佐々木:
『誰とは言わないけどね!』
石原:
『俺はお前の事を思って宮崎と木内を誘ったんだぞ』
木内:
『ひとみも佐々木君に会いたがっていたよ』
宮崎:
『早苗、何を言ってるのよ』
木内:
『楽しい旅行になると良いね!』
電車は間もなく城ヶ崎海岸駅に到着しようとしていた。
石原:
『城ヶ崎海岸駅に着いたぞ!まずは城ヶ崎海岸まで散歩しよう!』
城ヶ崎海岸駅に着いた4人は、今夜宿泊する宿のある城ケ崎海岸へと向かった。
木内:
『このつり橋は高くて足がすくむわね』
佐々木:
『天気が良くて水平線が見えるよ』
宮崎:
『とっても潮風が心地いいね!』
石原:
『美味しいものを食べて宿でゆっくり語り合いましょう』
しばらくの間4人は海岸線を無邪気にはしゃぎまわっていた。
すると突然、木内が石原を誘い出した。
木内:
『石原君、大きな岩の方に行ってみない!?』
石原:
『よし、行ってみよう!』
石原と木内は、二人を残して大きな岩へと行ってしまった。
残された佐々木と宮崎は砂浜に座り込み海を眺めているが、どこか互いに意識をしているためギクシャクしていた。
宮崎:
『佐々木君、仕事は慣れた!?』
佐々木:
『まだ怒られてばかりだけど何とか仕事にはついて行っているよ』
『宮崎の方はどうなんだ?』
宮崎:
『私は保険の知識を覚えるのに苦労しているんだけど、会社の先輩がいろいろと相談に乗ってくれるから助かっているわ』
佐々木:
『保険の仕事も大変だな!』
宮崎:
『その先輩から今度保険の事を教えるから自宅に来ないかって誘われているの』
佐々木:
『随分と入れ込んでいるね!どんな先輩なの!?』
宮崎:
『年は4っ上で最近奥さんと別れたらしいんだけどね』
佐々木:
『男性の先輩!?』
宮崎:
『なんだか断りづらくて』
佐々木:
『ダメだよ!その先輩の自宅に行っては行けないよ』
宮崎:
『どうしたらよいと思う?』
佐々木:
『俺も一緒について行くよ』
宮崎:
『仕事の勉強だよ、佐々木君が付いてくるのはおかしいでしょう』
佐々木:
『仕事の勉強なら会社でするのが普通でしょう、自宅で勉強するなんておかしいよ』
宮崎:
『わかったわ、先輩に話をしてみるわ』
佐々木:
『俺が宮崎の事を守ってやるから心配をしないでくれ!』
宮崎:
『頼りにしていいの!?』
佐々木:
『勿論、俺が宮崎の事を守ってみせるよ』
しばらくすると、遠くの方から声が聞こえてきた。
石原:
『おぉ~い、佐々木・宮崎こっちへ来いよ』
木内:
『灯台があるわよ!』
佐々木:
『今からそっちへ行くよ~』
宮崎は佐々木の言葉に内心嬉しさを感じていた。
佐々木は自然と宮崎の手を掴み足場の悪い海岸線をエスコートしながら石原・木内がいる大きな岩場へと向かった。
佐々木:
『大きな灯台だな!』
石原:
『ここで写真でも撮らないか!?』
木内:
『すいません、写真をとってくれませんか?』
木内が近くにいた釣り人に話しかけた。
釣り人:
『もう少し寄ってください』
『それでは写真を撮りますよ!ハイポーズ』
4人は灯台をバックに自然と笑顔が溢れていた。
釣り人:
『良く撮れたと思います。あとで確認をしてみて下さい』
木内:
『ありがとございました』
4人は釣り人に撮ってもらった記念写真を見返していると不自然にも佐々木と宮崎が手をつないで映っているのが撮れれていた。
石原と木内は思わず固唾をのみ込みしばし無言となってしまった。
石原:
『よし、今夜泊まる宿に向かおう!』
4人はしばらく城ケ崎海岸で楽しんだ後、今夜宿泊する温泉宿へと移動した。
~続く~